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2022.08.16

老親と自分の「認知症対策」、最適解がわかった|主張の異なる良書を精査してわかった「真実」


「健康書」プロ編集者の会メンバーが読み込んだ「健康書」の一部(写真:主婦と生活社)

「健康書」プロ編集者の会メンバーが読み込んだ「健康書」の一部(写真:主婦と生活社)

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医療や介護に詳しい編集者やライター、医療ジャーナリストたちの「よりよい健康情報を提供する場を増やしたい」という志のもと、所属する組織の壁を超えて結成されたユニット、「健康書」プロ編集者の会。メンバーのひとりは指摘する。「忙しい日々を過ごす中高年の皆さんが、あふれる健康情報のなかで“本当に自分に役立つ情報”を選び出すのは、かなり難しい」。そこで、会が著した新刊『「ベストセラー健康書」100冊を読んでわかった 健康法の真実』から、1回目は「食事術」、2回目は「体の整え方、鍛え方」について紹介したが、3回目の今回は「認知症対策」の最適解について、一部引用・再編集してお届けする。

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1回目 ※外部サイトに遷移します

2回目 ※外部サイトに遷移します

認知症予防で注目すべきは、じつは「耳」?

人の名前がすぐに出てこなくなったとか、必要なものを買い忘れてしまったとか、何をしようとしていたか忘れてしまった……なんてことが続くと、「認知症」という言葉が頭の片隅をよぎり、心配になってしまう人もいるのではないでしょうか。

科学ライターの緑慎也さんは、43歳のときに「MCI」(軽度認知障害。認知症一歩手前の状態のこと)のスクリーニング検査を受けてみたと、著書『認知症の新しい常識』で述べています。検査はA~Dの4段階で判定され、A判定ならMCIのリスクはほぼなし、最もリスクが高いのがD判定。はたして緑さんの結果はというと、比較的Bに近いC判定だったとのこと。「高血圧の指摘よりもショックは大きかった」と書かれる気持ちはとても共感できます。

この検査は筑波大学発のベンチャー企業MCBIが提供しているもので、全国2000以上の医療機関で受けられるそう。ほんのちょっとのもの忘れ程度で検査を受けるメリットはないような気がしますが、興味のある方はネットで検索するなどして詳しく調べてもらえればと思います。

また、もしMCIと診断されても、過度に恐れることはないようです。日本認知症予防学会理事長の浦上克哉さんは、著書『科学的に正しい認知症予防講義』で、認知症はいったん発症したら元の状態に戻ることはできないが、認知症になる手前の状態のMCIなら元の状態に戻ることも可能だと書いています。

なお、浦上さんが認知症のリスク因子として紹介しているのが、『Lancet』という一流の医学学術誌で発表されたもの。中年期(45~65歳)のリスク因子としてあげられているのは「難聴、頭部外傷、高血圧、過剰飲酒、肥満」の5つ。このうち最もリスクが高いとされているのが「難聴」です。高血圧や肥満より、難聴のリスクが高いというのは意外な気がしますよね。

浦上さんによれば、難聴があると、コミュニケーションがとりにくくなるうえ、耳から脳への刺激が減ってしまうからだそう。コミュニケーションがとりづらくなれば、仕事も地域の集まりなども参加しづらくなり、社会的孤立を招くことに。社会的孤立は高齢期(66歳以上)の認知症リスクにあげられていますから、耳が大事だというのもうなずけます。浦上さんは耳にやさしい生活を心がけるとともに、定期的に聴力検査を受けて、聞こえづらくなったら早めに補聴器を使うようにアドバイスしています。

「歯周病」にも要注意

ほかにも注目されているリスク因子があります。それが「歯周病」です。アルツハイマー病の専門医である新井平伊さんは、著書『脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法』で、マウスにジンジバリス菌(歯周病菌の一種)を与えたところ、認知機能が著しく低下し、アルツハイマー病の病態も悪化したという実験を紹介。さらに歯周病は糖尿病と深く関連していることから「歯周病‐糖尿病‐アルツハイマー病」といった三つ巴の負のスパイラルが形成される可能性があるとも述べています。

生活習慣病のリスクが高まる中高年は、糖尿病管理のためにも認知症予防のためにも、歯科医での定期的なチェックは欠かさずに受けたほうがよさそうです。

さて、より切実な問題が老親の認知症です。久しぶりに実家に帰省して、老親と接したときに「あれ? もの忘れがずいぶん進んでいるなあ。もしかしたら、認知症になり始めているのかも……」などと感じたことがある人も多いのではないでしょうか。

(画像:主婦と生活社)

(画像:主婦と生活社)

今後、老親が認知症になってしまったら、介護はどうすればいいのか。お金はどのくらいかかるのか。施設はどう選ぶのか。不安の種は尽きませんよね。

実際に困るのは「もの忘れ」ではない

認知症の介護で実際に困るのは、じつは「もの忘れが強まること」ではないと伝えているのが、在宅医療に関わる長谷川嘉哉医師です。著書『ボケ日和 わが家に認知症がやって来た! どうする? どうなる?』によれば、困るのは、患者さんの「怒りっぽさ(易怒性)」「幻覚・妄想」などの周辺症状で、やたらと攻撃的になったり、「お金を盗まれた」「浮気しているに違いない」とののしったり、暴力をふるったりすることだそうです。たしかに、これが毎日のように続けば、誰だって疲弊してしまいますね。

しかし、長谷川さんによると、これらの周辺症状は患者さんの体力の低下とともに1~2年で落ち着くもので、さらに7~8割は薬でコントロールすることができるそうです。それを知っておくだけでも、気持ちの負担が少し減りそうです。

デザインの力で社会課題解決に取り組んでいる筧裕介さんは、著書『認知症世界の歩き方』で、「本人」の視点に注目。認知症の人が感じていること、困っていることをストーリー仕立てでまとめています。

たとえば、認知症の人では、扉や棚、冷蔵庫などを閉じた途端に、中にあるものが存在しなくなってしまうそう。筧さんはこれを「ホワイトアウト渓谷」と名づけました。深い霧と吹雪が、視界とともに記憶まで真っ白に消し去ってしまう幻の渓谷です。そこに入り込んでしまうがゆえに、同じものを何度も買ってきてしまうのだと説明されると、認知症の人に何が起こっているのかがよくわかる気がします。

認知症について書かれた本はいろいろあり、専門家によってさまざまな主張が展開されています。早期の予防の重要性について語られている本もあれば、予防に力を入れるくらいなら認知症になっても安心して暮らせる社会づくりのほうが大事であると語られている本もあります。

それぞれの本を熟読すると相容れない部分も多々あるのですが、どの本でも必ず述べられているのは、超高齢社会で避けることのできない認知症を「知る」ことの大切さです。

予防できなくても、対策はある

認知症研究の第一人者である長谷川和夫さんは、2007年に自身が認知症であることを公表しました。その長谷川さんもまた、いちばんの望みは認知症についての正しい知識を皆さんにもっていただくことだと、著書『ボクはやっと認知症のことがわかった 自らも認知症になった専門医が、日本人に伝えたい遺言』で述べています。何もわからないと決めつけて置き去りにせず、本人抜きに物事を決めないで、暮らしの支えになってほしいという切実な訴えは胸に響きます。

認知症専門医で日本認知症ケア学会理事長の繁田雅弘さんは、監修書『安心な認知症 マンガとQ&Aで、本人も家族も幸せになれる!』で、認知症が進行するスピードは人によってさまざまだが、薬をのみ、デイサービスなどでリハビリを行い、適切なケア(介護)を受けている人のほうが、何の対策もしなかった人に比べて、認知症が「軽度」である期間が倍以上延びているという研究があると紹介しています。

(画像:主婦と生活社)

(画像:主婦と生活社)

今後どうすればいいかという不安があるなら、早いうちから介護のプロを味方につけておくのが安心だそう。介護経験のある友人・知人に相談するほか、地域の認知症カフェや家族会なども頼りになると述べています。

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認知症の世界も介護の世界も、前人未踏の荒野ではありません。先達は大勢いますし、仲間もいます。知恵も経験も豊富に蓄積されています。先達や仲間の声を積極的に聞いて皆で語り合っていくことが、いちばんの対策になるのだと思います。

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提供元:老親と自分の「認知症対策」、最適解がわかった|東洋経済オンライン

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