2022.08.12
家事を忘れる夫に妻が考え出した納得の仕組み|これで妻のイライラは解消、夫婦仲は良好に
お願いした家事を忘れてしまう夫に、妻が考えたある仕掛けとは……(写真:saki/PIXTA)
「パートナーが家事を手伝ってくれない」「働き方やキャリアに口出しされる」「仕事と育児の両立がつらい」。こんな経験から「パートナーができたら、仕事と家庭、どちらかをあきらめなくてはいけない」と、考えてしまう人は少なくありません。
ですが、パートナーがいても、仕事と家庭を両立し、自分らしい人生を送ることはできます。そう語るのは、パートナーシップに関する社会課題を解決し、2人らしい生き方を支援する活動を行う、起業家のあつたゆかさんです。
あつたさんは「パートナーと家庭の共同経営者になり、フラットな関係で家庭の運営方針について相談する。そんな対話によって、2人は協力しあえる最高のチームになれます」と言います。あつたさん初の著書『仕事も家庭もうまくいく! 共働きのすごい対話術』から、そのヒントを紹介します(全3回、今回は3回目、1回目はこちら、2回目はこちらです)。
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ユイさんとケントさんは、筆者のところに相談に来た共働きの夫婦です。妻のユイさんは、夫のケントさんにお願いしたい家事のタスクを毎朝口頭で伝えていたそうです。でもケントさんが忘れてしまうことが多く、「何度言ったらわかるの?」と、ユイさんはケントさんにいつも怒っていました。
夫の「家事忘れ」に悩んでいた妻
「お互い共働きで、家事に充てられる時間は変わらないのに、最近パートナーにいくら家事をお願いしても“忘れてた”と言ってやってくれないことが多いです。こっちも仕事で忙しいのに、なんで協力してくれないんだろうと、悲しくなります……」
これは、私のもとに多く寄せられるパートナーシップの悩みの1つです。お互いに働いているのに、自分が担当の家事をやってもらえなかったり、頼んでいた家事を忘れられたりすると、家庭運営に支障が出てきてしまいますよね。「なんでこっちが、やり忘れまでチェックしてタスク管理しなければいけないんだろう?」とモヤモヤする気持ちもよくわかります。
「不満を伝えても変わらない相手が悪いんです」
「この状況を招いてしまった自分が悪いと思います」
このようなケースでは、自分と相手、どちらかに責任の所在があると考えた対立構造になってしまっているケースが非常に多くあります。しかし、対話の目的は課題の解決であって、責任の所在を明らかにすることではありません。では、どう考えれば解決策を導けるのでしょうか。
ビジネスの会議でも、責任の追及と問題解決を混同してしまう人はいます。でも、責任を追及したところで、問題の解決にはつながりませんよね。問題と向き合い、要因を洗い出し、解決策を考える。本来、会議とはそういう場であるはずです。
そのためパートナーとの問題に向き合う際には、まず、自責でも他責でもなく、「誰も悪くない」という前提で臨むことをおすすめします。相手に非があると決めつけず、「最近家事をやらないのは、何か理由がある?」と、まずは背景を聞いてみるのです。
「責任」を追及することに、意味はない
心理学者のリール・ローゼンツァイクが提唱した、問題を自分のせいにも他人のせいにもしない「無責的思考」という考え方があります。「誰が悪いか正しいか」を追求することには意味がありません。追求すべきは「問題を解決するにはどうすればいいのか」です。
「無責的思考」を、ビジネスを例にして見てみましょう。たとえば、新入社員の電話対応のミスがきっかけで、顧客からクレームを受けたとします。その際によくあるのが、次のような議論です。
・問題 新入社員のスキルや学習が不足していること
・視点 ミスをした新人が悪い
・解決策 2度と同じミスをしないように注意する
新入社員のスキル不足が原因だから、「次は注意してね」と指摘する。たしかにこれで、ミスをした新人のスキルは改善されるかもしれません。ただ、別の年次の人が同じようなミスをしないとはかぎりません。それに翌年も新入社員が入ってくることを考えると、ミス再発の可能性が残ってしまうように感じます。
一方で、「無責的思考」で問題を捉えてみると、こんなふうに考えられます。
・問題 ミスを防げる仕組みがないこと
・視点 新人が悪いわけではなく、誰にでもミスは起こり得る
・解決策 部署共通の電話対応マニュアルを作ったり、電話対応の研修を来年度から導入したり、組織全体でミスを予防できる仕組みを作ろう
特定の誰かが悪いのではなく、ミスが起こりやすい仕組みが悪かったのだと考える。そしてミスを予防する仕組みを作る。これなら、他の人のミスや、再発も防止できそうです。個人の責任だと非難するよりも、「失敗は誰にでもあるから、失敗しない仕組みを考えよう」という前提で問題を捉えたほうが、根本的な解決につながるのです。
では「無責的思考」をパートナーとの対話に取り入れると、どうなるのでしょう。お互いに忙しく、家事の分担でモメているケースで考えてみましょう。
・問題 パートナーが家事に非協力的。もしくは仕事への理解がないこと
・視点 自分の状況を理解してくれない相手が悪い
・解決策 どちらかが折れて家事を多くやる
個人の責任で考えてしまうと、「家事をもっとやってよ!」「こっちだって忙しいんだよ!」と、議論が平行線になってしまうことでしょう。パートナーとは1対1の関係なので、つい自分か相手のどちらかに責任の所在を求めてしまいがちです。
ですが、どちらか一方に負担がかかりすぎたり、我慢したりしなければならなくなったりしてしまうと、持続可能な解決とはいえません。そこで「無責」の視点で考え、「家庭全体の問題」と捉えてみましょう。
・問題 お互いに仕事が忙しく、家事に割けるリソースが不足していること
・視点 忙しくて家事ができない時期は誰にでもある
・解決策 家事の量を見直したり、お掃除ロボットを導入したりと、忙しくても無理なく家庭運営できる仕組みを作ろう
「自分がやるか」「相手がやるか」の二択で役割を押し付け合うのではなく、家庭内のリソース不足が問題だと捉える。そうすることで、家事の量を減らせないか見直したり、惣菜や冷凍食品を使って負担を減らせないか検討したり、家事代行などの外注を検討したりと、新たな視点や解決策が生まれるはずです。
実は冒頭で紹介したユイさん、ケントさん夫婦も、無責的思考で解決策を導きました。
「夫が家事を忘れてしまうのは、何か事情があるかも」と思って背景を聞いてみたところ、ケントさんはタスクを口頭で依頼されると忘れやすい性格であることが判明。それ以降はLINEやSlackなどを活用して、家事を文章で依頼するようにしたところ、忘れることが減り、ケンカも減ったそうです。
ほかにも、出産により家事や育児タスクが増えたことからホワイトボードを導入してタスク管理をしている家庭や、Slackにチャンネルを作成し、買い物などのリマインドが自動で来るようにしている家庭もあります。
うまく家庭運営をしている共働き夫婦は、「無責」で問題を捉えて「仕組み」で解決する方法を見つけるのが上手です。
特性や苦手を受け入れ、仕組みで解決する
ほかにも、これまで相談を受けた方の中に、無責的思考を取り入れて課題を解決した夫婦がいました。いくつか例を見ていきましょう。
タケシさんは、妻のミサさんがいつもドアを開けっぱなしにしてしまうことにイライラしていました。ADHD(注意欠如・多動症)の特性を持つミサさんには悪気がなく、意識していてもつい開けっぱなしにしてしまいます。
そこでタケシさんは、仕組みで解決できないかと考え、部屋のドアを自動で閉めてくれる「ミニ・ドアクローザー」を購入。部屋のドアが自動で閉まるようになり、言い争いが激減したそうです。「相手も悪気があってやっているわけではない」と考え、グッズでうまく解決しました。
リョウタさんは、妻のマキさんがモヤモヤをその場ですぐ言えず溜め込んでしまいがちで、話し合いがあまりうまくいっていないことに悩んでいました。マキさんに「どう思う?」と聞いても、黙ってしまうことが多かったそうです。
そこで毎週、定例形式で話し合いの場を設けることを提案。話し合いの場があることで、マキさんはモヤモヤを溜めづらくなったほか、事前にスプレッドシートに議題を記載する形式をとり、対面で話すのが苦手なマキさんもモヤモヤを共有しやすくなったそう。
「黙っているなんて話し合いをする気がないんだ」と決めつけず、話し合いの形式をうまく変えることで解消しました。
他人のせいにしても解決しない
家庭でも仕事でも、トラブルが起きたときは大抵わざとではなく、お互いに事情がある場合が多いでしょう。自分のせいにしてもつらくなってしまうし、他人のせいにしても解決しません。
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一度「どっちも悪くないとしたら?」と考えてみると、視点が変わってきます。
2人の相性やコミュニケーションの問題にせず、「根本的な課題は何か?」「どうやったらそれを取り除けるのか?」というマインドで、一緒に解決方法を探っていきましょう。うまくタスクをこなせている家庭は、お互いが円滑にタスクを遂行できる「仕組み」を整えています。
大切なのは、2人にとって負担のない方法を模索していくことです。2人にとってベストな分担比率は仕事の状況やライフイベントによって変わっていきますし、タスク管理の方法も試行錯誤が必要です。無理なく分担するために、違和感をもったときは話し合いをしていきましょう。
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提供元:家事を忘れる夫に妻が考え出した納得の仕組み|東洋経済オンライン