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2022.08.06

日本人は「口呼吸」がなぜマズいかをわかってない|ストレスを招き、不安を増長させてしまう理由


健康のためにしていたマスクが、今やストレス源になっている(写真:kumikomini/Getty Images Plus)

健康のためにしていたマスクが、今やストレス源になっている(写真:kumikomini/Getty Images Plus)

コロナ禍でマスク生活も長引いています。それによって呼吸が浅くなり、メンタルヘルスの不調が増加していると、医師・根来秀行氏は指摘します。

深刻なメンタルヘルス不調に陥る前に、呼吸法や行動を変えることで日常生活のコンディションを整える術とは? 『ハーバード&ソルボンヌ大学 Dr.根来が教える ストレス リセット呼吸術』から、一部抜粋・再構築してお届けします。

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不調の多くはミトコンドリアの「酸欠」が原因

「なんだか疲れた」「だるい」「肩がこる」といった体の不調や、「やる気が出ない」「集中力が続かない」「落ち込みやすい」という心の不調も、もとをただせばミトコンドリアの酸欠が原因かもしれません。ミトコンドリアとは細胞内の小器官のひとつで、栄養素と酵素を利用してATP(エネルギー通貨)をつくり出す産生工場です。このプロセスを「細胞呼吸」といいます。

私たちが体内に酸素を取り込むには、「肺呼吸(通常の息を吸って吐くという呼吸)」を行うしかありません。そのため肺呼吸で酸素を吸えば吸うほど、その分、細胞に酸素が行き届く気がしますが、実際は違います。やみくもに酸素をたくさん吸おうとして呼吸を増やしても、細胞呼吸の効率は上がらず、むしろ呼吸が多すぎて酸欠を起こすことがあります。呼吸数が増えれば、取り込む酸素も多くなるはずなのに不思議ですよね。

細胞呼吸の酸欠は、血中の酸素が足りないから起こるのではなく、血中の二酸化炭素が少ないのが原因なのです。呼吸によって肺に取り込まれた酸素は、血液に溶け込み、血中にて赤血球のヘモグロビンに結合して毛細血管を経由し、全身の細胞に届けられます。酸素を抱えたヘモグロビンは細胞に到達すると、酸素を切り離して細胞内のミトコンドリアへ酸素を引き渡します。この切り離しの際に、一定量の二酸化炭素が必要になるのです。

そのため血中の二酸化炭素が少ないと、ヘモグロビンは酸素を引き渡せず、酸素を抱えたまま再び血管内をぐるぐると漂うことに。そして酸素をもらえないミトコンドリアは、「酸欠」を起こしてしまうのです。

不安やストレス過多の人は総じて呼吸が浅い

呼吸数が多くて、血液中の二酸化炭素が少なくなるメカニズムはこうです。大気中の二酸化炭素濃度は約0.04%ですが、呼気中では約5%で吐き出されます。つまり、1回呼吸をすると、吸気の125倍の二酸化炭素が吐き出されてしまうのです。

ということは、呼吸回数が増えるごとに吐き出す二酸化炭素は増え、血液中の二酸化炭素濃度はどんどん減少。こうなると細胞呼吸で使われない酸素がダブつきます。しかもミトコンドリアに受け渡せず余ってしまった酸素の一部は、血液中を再び漂う間に「活性酸素」へと変化し、細胞を傷つける側へと回ってしまいます。負の連鎖のスタートです。

呼吸をするごとに血液中の二酸化炭素が出ていくのであれば、血中二酸化炭素を増やすには、呼吸の数を減らすしかありません。しかし私たちの呼吸数は、意識的に行う「深呼吸」や「呼吸法」を行うとき以外、自律神経が無意識にコントロールしています。

無意識下での呼吸が速くなる筆頭は、ストレスを抱えたときです。ストレスを受けると、それが精神的なストレスであれ、肉体的なストレスであれ、自律神経の交感神経が高まり、末梢の毛細血管は収縮。筋肉もこわばります。呼吸を司る呼吸筋も当然収縮し、呼吸はどんどん浅く、速くなっていきます。

日常的に呼吸が浅くなっているかどうかは、息を止めていられる時間によって、ある程度、セルフチェックができます。まず静かに鼻から息を吐き、その後息を止めて、時間を計ります。あくまでも目安なので、決して無理をしないように行ってみてください。

1)普段どおりの呼吸をして静かに鼻から息を吐いたあと、鼻をつまむ。

2)そのまま息をしたくなるまでの時間を計る。

◎:30秒以上止められる人:理想的な深い呼吸
○:30秒止められる人:標準的な呼吸
×:30秒未満の人:浅い呼吸

マスク生活により口呼吸が増えている

呼吸が浅くなる理由の2つ目は、「口呼吸」です。特に最近は、マスク生活が長引くことで、無自覚のまま口呼吸になっている人が増えています。口呼吸がクセになると、呼吸が速くなるため、結果、ストレスを感じやすく、不安も増長します。

本来、呼吸は鼻ですべきものです。鼻の入り口にある鼻毛は天然のフィルターともいわれ、外から侵入しようとする花粉やホコリなどをブロックしてくれるほか、鼻腔粘膜は、細菌やウイルスなどのさらに小さな異物が体内に侵入するのを防いでくれます。逆に口呼吸だと、フィルターがなく無防備な状態なので、病原菌に感染しやすく、よいことは何ひとつありません。口呼吸は緊急時など、大量に息を吸う必要があるときだけのもの。それ以外は鼻呼吸に努めましょう。

下記項目で3つ以上に当てはまる場合は、鼻呼吸のつもりが実は口呼吸になっている「隠れ口呼吸」の可能性が大です。

□朝起きたときによく口の中がカラカラになっている
□口臭が気になる
□いびきや歯ぎしりをしている
□唇が乾いて荒れやすい
□くちゃくちゃと音を立てて食べるクセがある
□風邪をひきやすい
□気がつくと口が開いていることが多い
□舌の両側が波打っている
□歯周病や虫歯がある
□しょっちゅうため息をつく
□朝、起きるなり疲れている
□カラオケなどで、よく歌う
□のどが渇きやすい
□タバコを吸う

口呼吸がクセづいている人は、鼻呼吸へとシフトさせる根来式呼吸法の「片鼻呼吸」で、鼻呼吸トレーニングを行いましょう。行う回数やタイミングに制限はありません。必要なときに何度でも行えます。

(1)鼻をつまむ

目と口を閉じて、右手の親指とひとさし指で小鼻をつまむ

(2)息を吐ききる

ひとさし指をはなして親指で右の鼻を閉じ、左の鼻の穴から5秒かけてゆっくり息を吐ききる。

(3)息を止める

そのまま5秒息を止める。

(4)息を吸う

ひとさし指を小鼻のわきに戻し、親指を離して、右の鼻の穴から5秒かけてゆっくり息を吸っていく。

(5)左右交代

(2)〜(4)を5回繰り返したら、吸う側と吐く側の鼻の穴を交代して、同様に行う。

週1ペースのHSP入浴法で抗ストレス体質に

口呼吸がクセになってしまうと、この鼻呼吸トレーニングだけでは、ストレス体質から脱却することが難しい場合もあります。そんな人に、すぐにできる行動としておすすめなのが、「HSP入浴法」です。

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HSPとは、私たちの体を構成する60兆個もの細胞を元気に再生するためのタンパク質のことで、「ヒートショックプロテイン」と呼ばれています。体内にHSPが多いほど、ストレスに耐える強いパワーをもてるということがわかっているのです。

HSPを増やすには名称どおり温熱ストレス(ヒートショック)が有効です。

HSP入浴法とは、体温38°Cを目指して、肩までしっかりお湯に浸かることで効率的にHSPを増やしていくもので、42°Cの湯船なら10分間。41°Cならば15分程度でHSPの増量が可能になります。ただし42°C以上で長湯をするとデメリットも出てくることがありますから、欲ばりすぎないよう注意しましょう。

また交感神経が刺激されすぎて眠れなくなるのを防ぐために、必ず、就寝の2時間前までに行ってください。HSPの効果は1週間ほど継続するので、週に一度のぺースで十分に効果的です。

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提供元:日本人は「口呼吸」がなぜマズいかをわかってない|東洋経済オンライン

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