2022.08.02
健康書100冊読んでわかった「食事術」の最適解|プロ編集者チームが語る「糖質制限+αの真実」
「健康書」プロ編集者の会メンバーが読み込んだ「健康書」の一部(写真:主婦と生活社)
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医療に詳しい編集者やライター、医療ジャーナリストたちの「よりよい健康情報を提供する場を増やしたい」という志のもと、所属する組織の壁を超えて結成されたユニット、「健康書」プロ編集者の会。メンバーのひとりは指摘する。「忙しい日々を過ごす中高年の皆さんが、あふれる健康情報のなかで“本当に自分に役立つ情報”を選び出すのは、かなり難しい」。そこで、会が著した新刊『「ベストセラー健康書」100冊を読んでわかった 健康法の真実』から「食事術」の最適解について一部引用・再編集してお届けする。
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安易に信じ込んでしまうのは危険!
いつまでも健康でいたい――多くの人たちはそう願い、時には“こうすれば健康になれる”と啓蒙する健康書を買って、そこに書いてあることを実践することもあるでしょう。
でも悩ましいのは、ある専門家の健康書では「糖質は摂らないほうがよい」と書いてあったかと思うと、別の専門家の健康書では「糖質を減らすと不健康になる」と書いてあったりすること。両方の本を目にした読者からしたら、何をするのが本当によいのかよくわからなくなってきます。
たしかに、専門家の間でも見解・主張の異なることは数多くあります。でも、職業柄、数多くの健康書の制作に関わり、その表も裏も知る私たち「健康書」の編集者だからこそ、気づいていることがじつはあります。それは、主張が異なる健康書でも“共通して注意喚起している重要なこと”があったり、アプローチ(実践ハウツー)が違う健康書でも“狙っている健康上の効果・目的は同じなので、その違いはそれほど重要ではない”という場合があったりすることです。
まっとうな専門家の意見はもちろん価値のあるものですが、ひとりの専門家の意見だけを盲信するのは危険です。1500冊以上の健康書づくりに関わってきた編集者チームのメンバーの1人として、最近とくに感じている重要なことは、1冊の健康書を安易に信じ込んではいけない、多くの意見に耳を傾けたほうがよい、ということです。
「糖質」は、本当に健康の“敵”?
最近の健康情報では、「糖質」は悪者にされがちです。健康書100冊を精査してわかったことは、たしかに糖質過多の食生活をおくっている人にとっては、さまざまな病気リスクが上がるため、糖質を摂りすぎないようにすることは大事だということ。
ただ、だからといって、お米好きで「ご飯」を食べるのが人生の楽しみだという人が、糖質制限にこだわってご飯を減らす食生活をすることが最適解かというと、そうとはいえないでしょう。ご飯好きな人の暮らしに役立つ食生活の工夫もさまざまあります。糖質を摂ることの重要性を語る専門家も数多くいます。
糖質の摂取については、今のところ万人に共通する唯一の正しい食事法があるわけではなく、「糖質は“敵”にも“味方”にもなる」と考えておくほうが現実的です。
「糖質制限」について、ベストセラー健康書100冊を精査してわかったこと
(1)糖質は、人間にとって大事な栄養素のひとつ。炭水化物の「ご飯」を、ガマンしてまで無理に減らす必要はない。
(2)「ご飯」は、麦や玄米、胚芽米など食物繊維の多い穀物を選んで食べるのもおすすめ。
(3)どんな食べ物から食物繊維を摂るかで健康効果が異なる場合があり、穀物からも野菜からも海藻からも、さまざまな食べ物から食物繊維を摂ることが望ましい。
(4)ただし、糖質を明らかに摂りすぎの人は控えること。とくに、砂糖がたくさん入っているスイーツや、異性化糖の入っている甘い清涼飲料水の摂りすぎには十分に注意する。
「太りたくないからアブラは摂らない!」というのは、ダイエットに励む若い女性やメタボが気になる中高年の共通認識ですが、最近では、オリーブオイルから亜麻仁油、えごま油、MCT油まで、「健康によいアブラがある」という健康情報も増えてきました。はたして、本当のところはどうなのでしょうか。
アブラは健康の“敵”? それとも“味方”?
健康書100冊を精査してわかったことは、積極的に摂るとよいアブラ、摂ることを控えたほうがよいアブラがあるのは確かなので、まずはその種類を把握したうえで、アブラを選んだほうがよいということ。ただし、それ以上に大事なことは、ふだん自分が知らずに摂っているアブラを“見える化”して自覚することです。
(画像:主婦と生活社)
アブラの摂取については、多くの専門家が結局はトータルバランスが重要であるといっているので、健康を守るために自分がすべき優先課題を、自分の食生活に照らし合わせて考えることが重要です。
「アブラの摂り方」について、ベストセラー健康書100冊を精査してわかったこと
(1)アブラは、太りたくない人の味方にもなる。
(2)アブラは、動物性か植物性かというような大ざっぱなくくりではなく、どんな脂肪酸を自分が摂っているかを知ることが大切。
(3)過剰摂取が懸念されるn-6系脂肪酸を減らして、健康によいとされるn-3系脂肪酸を増やすのがおすすめ。
(4)健康によいアブラを摂ることも大事だが、自分の食生活で摂っているアブラの「質」や「量」の自覚から、改善点を発見することが有効。
善玉菌を摂取して、腸内環境を整えようということがよく言われますが、最近の研究からすると、ことはそう単純な話ではありません。実態としては、“スタープレーヤー”の善玉菌が単独で活躍して腸内環境をよくしているのではなく、さまざまな細菌同士が連携して、チームワークで腸内環境をよくしているようなのです。
ヨーグルトだけでは「腸活」にならず!?
健康書100冊を精査してわかったことは、ヨーグルトなどで善玉菌を摂取しさえすれば腸内環境がよくなるという話ではないということ。腸内細菌のエサとなる食物繊維をたっぷり含む食品や発酵食品なども併せて摂ることで、「多様性のある腸内フローラ」を目指すことが重要なようです。
(画像:主婦と生活社)
ちなみに、代表的な腸内細菌の研究者3人の著書を読み比べると、3人ともがヨーグルトに善玉菌のエサとなるオリゴ糖をプラスした食事を毎日、摂っていました。マネしてみるのもありかもしれません。
なお、SIBO(小腸内細菌増殖症)という病気の場合は、食物繊維や発酵食品をたくさん摂ることでその病気を悪化させてしまう場合もあるそうなので、「腸活」の食事術が万能なわけではありません。
「腸活」について、ベストセラー健康書100冊を精査してわかったこと
(1)乳酸菌やビフィズス菌などの「善玉菌を摂りさえすればいい」という考えだけでは不十分。
(2)食物繊維や発酵食品などを併せて摂ることで、「多様性のある腸内フローラ」を目指すことが重要。
(3)まずは、ヨーグルトにオリゴ糖をプラスした食事がおすすめ。
(4)「腸活」の食事術が、すべての人におすすめなわけではない。
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100冊の健康書から「食事術」の部分を精査してわかることは、どんなタイプの人の健康にも役立つ、唯一絶対の食事法があるわけではないということ。また、食事法の研究は、実施も解釈も難しいといわれ、エビデンスの判断も専門家によって異なることもままあり、何が本当に正しいかは微妙なことも多いようです。
正しさが曖昧なのだとしたら、どれかひとつの方法を盲目的に信じてやりすぎるのではなく、自分が気に入ったいくつかの食事法を「いいとこ取り」して、飽きないように変化をつけながら継続していくことが、現時点でのあなたの「最適解」になるでしょう。
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提供元:健康書100冊読んでわかった「食事術」の最適解|東洋経済オンライン