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2022.07.26

【健康とスポーツを科学する】メタボリックシンドロームの予防


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20歳からトレーニングを開始し、50代でも10㎞50分を切って走っていた長尾光城先生。スポーツ医学の専門家が、この世の中を元気あふれる中高齢者でいっぱいにするため、これまでの講演を精選して、運動の健康のかかわりをお届けします。

メタボリックシンドロームはなぜ問題か

肥満になると、脂肪が全身に増えてきます。それも脂肪のつき方によって、皮下脂肪型か内臓脂肪型に分かれます。

この内臓脂肪こそが、生活習慣病の出現率を如実に変化させます(図1・2参照)。内臓脂肪からアディポサイトカインが作られ、血糖、血圧、中性脂肪などが高くなってくるのが、メタボリックシンドロームです。

したがって、体重(特に内臓脂肪)を減らさないと、糖尿病、高血圧、脂質異常症が悪化して、心血管系の異常である心筋梗塞、脳梗塞、さらにはがんになりやすくなります。皮下脂肪が増えてくると、お尻や太ももに脂肪がつき、著しく体重が増えて、変形性膝関節症や、睡眠時無呼吸症候群などが起こりやすくなります。

最近では、熱中症になりやすい人に、肥満が背景にあることが挙げられています。

メタボリックシンドロームについて

診断基準を表で表すと、表1のようになります。

表1 メタボリックシンドローム診断基準

表1 メタボリックシンドローム診断基準

以上の診断基準は、内臓脂肪があることが必須項目とされています。厳密には、へその高さでCT写真をとり、内臓脂肪面積が100cm2以上であれば、内臓肥満があると判定します。しかし、現場では立位で軽く息を吐いた状態で、へその高さで腹囲(ウエスト周囲径)を測定し、男性では85cm以上、女性では90cm以上を「内臓脂肪あり」と判定します。そのうえで、脂質異常症、血圧高値、空腹時高血糖の3つの以上のうち2つ以上を合併すると、「メタボリックシンドローム」と診断されることになります。

日本のメタボリックシンドロームの現状

2019年の国民健康・栄養調査によると、20歳以上の人でメタボリックシンドロームが強く疑われる人の比率は、「男性28.2%、女性10.3%」、予備軍と考えられる人の比率は、「男性23.8%、女性7.2%」でした。40~74歳で見てみると、男性の2人に1人、女性の5人に1人が強く疑われる、もしくは予備軍と考えられます。

注意事項

九州大学の久山町研究によれば、日本の腹部肥満の基準値、男性85cm以上、女性90cm以上で判定した腹部肥満は、全く将来の心血管病の発症と有意な関連が出なかったと報告しています。そこで、腹囲男性90cm以上、女性80cm以上とした「アジア・パシフィック基準」が将来の心血管病を予測するうえで有用であると報じています。

メタボリックシンドロームの予防の方法

日本生活習慣病予防協会の池田義雄理事長の提唱した6つの健康習慣(表2)をもとに、私が主宰する健康教室で指導させてもらったところ、図1・2のような効果が出ました。

表2 6つの健康習慣

表2 6つの健康習慣

これに加えて、食事のときは早く食べない。満腹中枢が満腹を感じる前に食べ過ぎてしまわないように、時々箸をおいて、食事を味わうことなどを話します。

結果:図1 皮下脂肪型肥満の女性

結果:図1 皮下脂肪型肥満の女性

図2 内蔵脂肪型肥満の女性

図2 内蔵脂肪型肥満の女性

週1回90分の運動教室で、早ければ3か月、遅くとも6か月も続けていれば効果は出ます。みなさんも今日からトライしてください。

私のとっておきの方法

腹筋は内側から、腹横筋、内腹斜筋、外腹斜筋の3層構造になっています。そこで、これを意識することにより姿勢がよくなってきます。

(1)立位
おへそをへこまして、背筋を伸ばし、いい姿勢をとり、普通に呼吸する訓練をしてください。息を止めないことが肝要です。

(2)座位
同じく、車を運転している時、座位で座っている時もおへそをへこまして、背筋を伸ばしてください。ずっと続けることができなくても意識することです。

(3)仰臥位
この姿勢で横になったとき、できるだけおへそをへこまして、お腹と背中がくっつくような感じで行うようにしてください。

著者:長尾 光城 博士(医学) 日本スポーツ協会認定スポーツドクター

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略歴
1975年、東京学芸大学教育学部A類数学科卒業。大学時代に学習塾を開設。全身で体当たりする指導法は、生徒はおろか、父兄にも大きな影響を与えたという。その後、一念発起して、1984年、山梨医科大学医学部に再入学。
1994年、山梨医科大学大学院医学研究科博士課程修了。
2007年、川崎医療福祉大学医療技術学部健康体育学科教授・学科長・医療技術学部長。
2017年~現在 兵庫大学看護学部教授・学部長・地域医療福祉研修センター長。

岡山陸上競技協会医事科学委員長(1999年~)
岡山県体育協会理事(2009年~)スポーツ医科学員会委員長(2012年~)
倉敷市体育協会副会長(2009年~)

記事提供:介護・福祉の応援サイト「けあサポ」

「けあサポ」は、福祉の出版社である中央法規出版が運営する、介護・福祉でがんばっているみんなのための、応援サイトです。福祉の資格を取りたい方、福祉の現場で活躍する方に役立つ情報を毎日お届けしています。

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提供元:【健康とスポーツを科学する】減量と運動|けあサポ

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