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2022.07.13

価格下落にコンビニも注目、「コメ」が家計を救う|前年比5.8%ダウン、「5キロ1100円台」も登場


ローソンはおにぎりの販売量拡大に向けキャンペーンを展開(写真:ローソン提供)

ローソンはおにぎりの販売量拡大に向けキャンペーンを展開(写真:ローソン提供)

参院選の大きな争点となった物価高騰。原油高、円安、ウクライナ情勢長期化、異常気象で値上げラッシュは今後も確実に続く。帝国データバンクによると年末までに1万品目超が平均13%上がる見通しだというが、今後の情勢次第ではさらに拡大しかねない。

そうした中、例外なのがコメである。コロナ禍における外食需要の低調もあってコメ余りが進み、ここ数年米価は大幅に下落した。令和4年5月の相対取引価格のデータを見ると、令和3年産の全銘柄平均価格(60㎏)は1万2702円で、前月の1万2797円よりも95円安い。年産平均価格(令和3年産は出回りから5月まで)は1万2860円で、2年産(出回りから3年10月まで)の1万4529円と比べ89%の水準にまで落ち込んでいる。

総務省の小売物価統計では、5月の小売価格(コシヒカリ5キロ)は、対前年同月比5.8%安の2253円となっている。これではコメ農家はたまらない。今回の選挙でも新潟や青森など各地の米どころでは「米価下落対策」を候補者に問う場面が見られた。

5キロ1600円台から1100円台へ

農家の方には本当に申し訳ないが、消費者にとっては主食のコメが安い状況はありがたい。実際、近所のスーパーでは、栃木県産のコメ(令和3年産)が5キロ1100円台で販売されていた。栃木県産や千葉県産などは以前なら1600円台以上はしていたから、破格的な値段である。

“内憂外患”を背景とした食料品値上がりラッシュは、パンや麺類の食事を減らしてコメの消費を増やす転機となるかもしれない。実際、そんな動きも出てきた。

北海道産「ふっくりんこ」を使ったおにぎり(写真:ローソン提供)

北海道産「ふっくりんこ」を使ったおにぎり(写真:ローソン提供)

コンビニ大手のローソンが、7月から展開する「食べよう!日本各地のブランド米」キャンペーンだ。2025年の創業50周年に向けたハッピー・ローソン・プロジェクトの一環として、コメにこだわったおにぎりを開発。第1弾として7月5日から北海道産の「ふっくりんこ」を使った2品を発売する。

その後、山形産「雪若丸」、石川産「ひゃくまん穀」、富山産「ふふふ」、福井産「いちほまれ」、北海道産「ゆめぴりか」を使用した商品を送り出す予定だ。ローソンのコメの年間調達量は約6万トン。今回のキャンペーンでどれだけ上積みされるか注目だ。

記者説明会に登場した竹増貞信社長は「2022年7月から23年6月のおにぎり全体の販売量を前年比30%増、コロナ前の2019年比で15%増という目標を設定している」と表明。そのうえで、今回の狙いについて「地域のブランド米のおにぎりをローソンが全国販売して認知向上し、お米の消費を拡大することで食料自給率への貢献をしていきたい」と語っていた。

まさに、機を見るに敏の好手である。まだ知られていないブランドも含めて各地のブランド米を全国で販売することで、認知度アップと消費拡大、そして食料自給率向上の一石三鳥が狙えるというわけだ。他のコンビニや外食各社がコメに着目した同様の企画を打ち出せば、コメの需要が高まって価格持ち直しの可能性がある。そうなれば生産者も潤うことになる。

国も吉本興業と連携してアピール

では、国はどうか。実は農水省も米の消費拡大サイト「やっぱりごはんでしょ!」を開設し、コメ消費拡大キャンペーンを展開中だ。最近はZ世代をターゲットに、食と農の魅力や重要性、生産現場の努力や創意工夫を発信することで若者の理解を深め、農業・農村の次世代への継承につなげていくことを目的とした「ニッポンフードシフト」を実施。その一環として、吉本興業と連携したコメの消費拡大に関する動画を作成したりしている。

動画の内容は「おいしいコメの炊き方」「ご飯のお供選手権」など。ご飯のお供選手権は、新たなご飯のお供を発掘するということで、4種類のお供が登場。ラード醤油、冷凍チャーハン、黒糖とゴマ塩といった意外な品を押さえて1位になったのはイナゴの佃煮だった。笑いを取りつつ新たな食の可能性を示そうという企画そのものは、面白いかもしれない。

食糧自給率37%(カロリーベース)で、6割以上を輸入に頼らざるを得ない日本は、今こそコメの活用法を真剣に考えるときだ。SNSなどを活用して、コメの種類、食べ方、コメ食のメリットなどをどんどん発信していくべきだろう。

コメの消費量(国民1人当たり)は昭和37年(1962年)の118キロをピークに減少し続け、令和2年(2020年)には50.7キロと半分以下にまで落ち込んでいる。消費者のコメ離れの背景に何があるのか。

令和2年に発表された「米の消費動向に関する調査の結果の概要」(農水省)によると、5年前と比べた米の消費量は「変わらない」が59%でもっとも多く、「増加」は14%、「減少」は28%だった。「減少」派に聞いた質問では、家庭内食での減少(朝食61%、昼食40%、夕食69%)がもっとも多く、消費量が減った理由は「主食を食べる量を減らした」が29%、「主食も副菜も量を減らした」が28%となっている。

ひところブームとなった低糖質ダイエットの影響もあり、食事量そのものを減らしたいという意向が働いているようだ。男性の20代、男女の30代では「炊飯する時間がなくなった」「準備に手間がかかる」という理由も多い。

若い女性にコメ回帰の兆候

一方で、光明も差し始めている。5年前に比べ米の消費量が増えたとする回答の世代別状況をみると、18-29歳女性は23%、30-39歳女性は22%、18-29歳男性が18%と、全体の14%を大きく上回っているのだ。若い女性のコメ回帰が始まっているということか。

ちなみに消費量が増えた理由で多いのは「お米が好きになった、味が良くなった」が38%で最多。次に多いのが「お米は食べ応えがある、腹もちが良い」が29%。コメの味と食べ応えへの満足感がうかがわれる。コメ離れが叫ばれて久しいが、詳しく見てみると若い世代を中心に、回帰現象も見られ始めているということだ。

ここまでコメ消費の現象面と背景を見てきたが、喫緊のテーマはコメの消費拡大を図ることで需給バランスを改善し、農業経営を安定化させていくことだろう。

今後も消費が伸びず、コメ価格下落が続けば、ただでさえ高齢化が進み、後継者が見つからないコメ農家の離農に拍車がかかる。農業専門紙によると、コメ作りの現場では49歳以下の後継者は5.5%しかいないという。そんな状況に加え、最近は肥料代や燃料代の上昇も深刻だ。

「作れば作るほど赤字になってしまう」という生産者の声も聞かれる。コメ作りの魅力が増さなければ新規就農も増えず、耕作放棄地が増えるばかりとなる。その結果、地方の衰退が加速してしまう。それを食い止めるには消費拡大、適正価格化が最優先課題だ。

国全体の食料事情を考えるうえでも、コメ作りが戦略的な基幹産業であることに変わりない。37%の食料自給率を考えたとき、安定的に供給を確保できるコメは国民にとって心強い。十分な備蓄があるので、災害時でも供給面に大きな不安はない。

食品価格高騰の中で大助かり

消費者にとってもコメの消費量を増やすことはメリットがある。パンや麺類など値上げが続く品目の使用頻度を減らし、価格が安定しているコメに主食をスイッチしていくことにより、急速に上昇しているエンゲル係数を抑えることが可能になる。物価急騰の折、コメのありがたさを痛感している消費者は多いはずだ。また、非常時においても、保存が利くパック詰めご飯は貴重な存在だ。

最後に、見落としてはならない事実がある。日本のうまいコメは今後、世界の市場を相手に勝負できる数少ない農産物の代表格であるということだ。コメの輸出量は平成26年(2014年)の4515トンが令和3年(2021年)には2万2833トンと5倍に増えている。香港、シンガポール、台湾、アメリカが上位輸出国となっている。

和食ブームが続く中、香港やシンガポールでは中食、外食を中心に需要開拓が進んでいるという。この先の人口減少で国内市場が縮小する状況で、輸出増強は欠かせないテーマだ。

日本のコメにさらなるブランド価値を付け、上位国だけでなく他の国の市場開拓も積極的に行っていく必要がある。とりわけまだ輸出量が少ない巨大マーケットの中国向けをどう増やすかがカギになる。植物検疫条件をクリアするなどの課題はあるだろうが、そこは国が主導して環境整備を図っていけばいいのではないか。

コメは日本人にとってなくてはならない存在であり、無限の可能性を秘めている作物である。その価値をあらためて認識し直し、生産基盤を維持、強化していくことが政治に求められている。

今回の参院選。都会の駅前演説会などでは、コメづくりの重要性や米価対策に言及する候補者はほとんどいなかった。コメ問題は地方の問題としてとらえられがちだが、よく考えれば国全体、国民生活に深く関わる問題である。一粒一粒のコメのパワーと可能性を侮ってはならない。

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提供元:価格下落にコンビニも注目、「コメ」が家計を救う|東洋経済オンライン

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