2022.06.20
中高年社員の部署異動・転職「あり・なし」の分岐点|「今いる部署がツライ…」に人事の専門家は?
今の部署がつらい……。中高年社員でも部署異動を望むのは現実的にありか。その相談に西尾氏が答えます(写真:Fast&Slow/PIXTA)
人事コンサルタントとして、1万人以上のビジネスパーソンの昇格面接や管理職研修を行い、300社以上の企業の評価・給与・育成などの人事全般に携わってきた西尾太氏による連載。エンターテインメントコンテンツのポータルサイト「アルファポリス」とのコラボにより一部をお届けする。
「今の部署がつらい……。中高年社員でも部署異動を望むのは現実的にありなのでしょうか?」
このようなご相談をいただきました。今回はこの質問にお答えしたいと思います。
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まずは、何がつらいのでしょうか? 人間関係か、仕事への適性がないと思っているのか、仕事が面白くないのか、仕事がキツいのか、逆にラクチンすぎるのか。考えられる理由は、ほぼそんな感じでしょうか。
つらいのであれば異動を望めばいい
いずれにしても、「あり」か「なし」かでいえば、「あり」です。中高年社員であっても、本当につらいんだったら、異動を望んだらいいのではないでしょうか。
会社だって「つらい」「つらい」と思って働いてもらうよりは、機嫌よく働いてもらったほうがいいので、それは正直に伝えていいと思います。
上司との折り合いが悪い場合もあるので、折り合いの悪い上司に「このままここにいたくないです」と言うのは厳しいかもしれませんが、本当につらいのなら、部署異動を望むべきです。その希望が叶うか、叶わないかは別として。
ただ、中高年といえば、もういい大人です。「つらいのでラクなところに行かせてください」だったら、覚悟したほうがいいでしょう。給料が下がるかもしれませんし、もっとしんどい部署に行かされるかもしれません。
そこは状況をよく見て、「異動したら本当に活躍できるんだっけ?」ということを、よく考えてみてください。異動先でも同じことが起きると、もう次はなくなるかもしれません。「今がつらい」だけじゃなく、「何をしたいのか」「何で組織に貢献できるのか」ということをしっかりと考えて、部署異動を申し出てみてください。
部署異動を希望するなら、その理由が重要になります。
「自分はこういう仕事をやっていて、こういう経験があるから、それを活かして、こういう仕事をしたいです」と言って異動願いを出すのは、全然「あり」です。
会社も社員にそういう行動を望んでいますが、言ったことには責任を持たなくてはいけません。異動して次のところでダメだったら、降格対象になります。中高年の場合は、黒字リストラの対象になることも覚悟しておかなければいけません。
それでも本当につらいのなら、ガマンしなくていいのではないでしょうか?
会社を辞めるのも1つの方法かもしれない
部署異動ではなく、会社を辞めるのも1つの方法です。あなたは何かしらの経験を持っているのですから、年収が下がることさえいとわなければ、転職先はあります。転職して活躍すれば、年収だって上がるかもしれません。
仕事がつらくて自殺してしまったという報道も少なくありません。こうした事件が起こるたびに、「だったら辞めればよかったのに……」と胸が痛みます。ガマンして悩みすぎて自殺してしまう。そんなことになってしまうのなら、他の場所を探すべきです。
今は昔とは違います、会社を移ってキャリアアップするのは当たり前の世の中です。中高年であっても、転職先はあります。日本では平均年齢が50歳になろうとしているのです。「50歳だから異動はできません」とか、「50代だから転職先はありません」なんてことはないのです。
人口減少が始まり、どの企業も人手不足で苦しんでいます。地方は特に人手不足が深刻ですから、Iターン、Uターンという選択肢だってあります。
本当につらいのなら、異動や転職を現実的に考えてみてください。部署や会社に縛られる必要なんてないのです。今までやってきたことを棚卸しして、自分は何ができるのか、何がしたいのか、しっかり整理して、異動希望をしたり、転職活動をしてみてください。
ただし、転職サイトの求人広告でよく見かける「転職で年収アップ」といったフレーズに惹かれて、安易に転職するのは勧められません。
これまで多くの転職者を見てきた経験で言わせていただくと、転職したからといって、必ずしも年収が上がるとは限りません。もっとはっきりいえば、年収アップを転職の目的にすると、失敗する可能性が高いです。これは中高年に限った話ではありません。
なぜなら、企業側のニーズと、転職者のニーズが100%マッチすることはまずないからです。年収アップを目的にすると、会社側が求めるニーズと、自分自身が求める方向性が大きくズレてしまい、長く続かないという事例が本当に多くあります
転職するなら、年収ではなく、「自分が本当にやりたいこと」を優先してください。年収を下げてでもやりたい仕事をすることが、転職を成功させる秘訣です。
私は転職希望者に「これ以下だったら厳しいという年収はいくらですか?」とよく質問しています。マンションのローンや子供の学費など、どうしても必要な年収は、人によって異なりますよね。
ですから、「今は800万円もらっているけど、600万円だったらやっていける」など、最低限必要な年収を自分で認識しておくのです。そして「600万円になってもいいから移りたい」と思える会社や仕事が見つかったら転職するのです。そのほうがモチベーションが上がり、成果も上がりやすくなるため、給料が上がるチャンスもあります。結果的に現在の年収よりも高くなることもあります。年収アップは目的ではなく、結果であるべきです。
今の年収を維持しようとか、名の通った会社じゃないとダメだとか、この仕事以外はしたくないとか、そういうこだわりを捨てれば、転職先はあるのです。部署異動を望むのも「あり」ですし、社内で希望が叶わないのなら、外を見てみましょう。
そして、自分を客観的に見つめ直し、「人間関係がよくない原因は何か? 自分じゃないのか」「成果が上がらない原因は何か? 世の中が変わっているのに昔の自分のやり方を押し通しているからじゃないか」など、つらいことの棚卸しをしておくことも必要です。そうでないと、同じことを繰り返してしまうでしょう。
転職活動は在職中にすべき理由
また、転職をするなら、転職活動は在職中にしてください。次が決まっていないのに辞めてはいけません。自信があるなら別ですが、「いざとなったら今の会社で何とかなる」と思って転職活動をするのと、辞めてしまってから「見つからない」「見つからない」と焦って転職活動をするのでは、マインド的に全然違います。
今の部署がつらいのなら、まずは自己分析して、自分の状況を客観的に見て、異動したらつらいのは治るのか、変わるのか、自分が活きる場所はあるのかを考え、それが社内にないのなら、外に目を向けてみる。ただし、転職活動は在職中に行う。年収や会社の知名度、職種にこだわらず、自分がやりたいことの本質を考えてみる。
「やりたいこと」が、実は一番大切かもしれません。それが仕事になるのか、なるとしたらどのくらいの年収になるのか、在職中に具体的に調べてみてもいいでしょう。その関係の人に直接聞いてみるのも参考になります。人生100年時代です。50代であっても、人生まだまだこれからです。本当につらいのなら、自分が生き生きと働ける、次の場所を真剣に考えてみてください。
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提供元:中高年社員の部署異動・転職「あり・なし」の分岐|東洋経済オンライン