2022.06.14
人には相性がある「嫌われる」ことも受け入れよう|ストレス対策から見ると「我慢」はよくない
気持ちを暗くする2代要因の1つ「ストレス」の対処法、人との付き合い方のコツをご紹介します(写真:PanKR PIXTA/ピクスタ)
コロナ禍のマスク生活が始まって、すでに2年以上が経過しています。不自由な毎日が長く続いていますから、自分のことを「明るい」と考えている人でも、「最近、ちょっと暗くなっているかも」と感じているのではないでしょうか。
「暗い気持ちでいると、どうしてもネガティブな方向に考えが向いてしまいます」と言うのは、精神科医の和田秀樹氏です。「ネガティブな考え方をしていても、何もいいことはありませんが、明るい気持ちで前を向いていれば、不思議と物ごとがいい方向に動き出します」。
では、しんどいとき、落ち込んでいるとき、気分を上げるにはどうすればいいのか。和田氏の新刊『なぜか人生がうまくいく「明るい人」の科学』をもとに3回にわたり解説します。今回は2回目です(1回目はこちら、2回目はこちら)。
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気持ちが暗くなる要因には個人差がありますが、多くの人に共通しているのが、「ストレス」によるものです。ストレスを溜め込まないためには、自分に合ったストレス解消法を見つけておく必要があります。
手っ取り早いのは誰かに愚痴ること
バッティングセンターに行ってバットを振り回せばスカッとする人がいれば、友達とおいしいケーキを食べに出かければ気分が晴れる人もいます。何もストレス解消法がないならば、一番手っ取り早いのは誰かに愚痴をこぼして、ストレスだと思っていることをすべて吐き出してしまうことです。
自分1人では抱えきれない不満を人に話せば、気持ちが軽くなります。同じような環境の人が相手なら、共感してもらえることもあります。相手を選ぶ必要はありますが、同じ職場で働いている感覚が合う人なら、1つぐらいは共感してもらえるポイントがあるはずです。
居酒屋などで職場の同僚に愚痴をこぼしている光景に出会うと、「やれやれ、愚痴っても仕方ないだろうに……」と見下す気持ちになることもあるでしょうが、愚痴っている当人にとっては、決して悪いことばかりではありません。
自分が「どんなこと」を「どのように」悩んでいて、本当は「どうすべきなのか」など、気持ちの整理ができることもあります。愚痴を聞いてくれた相手から、何らかの解決策がもたらされたり、新しい考え方のヒントをもらえることだってあります。ストレスを溜めるくらいなら、親しい人に愚痴ってしまえばいいのです。
日本人は「人と仲よくするのは当たり前」という考え方が大前提としてありますが、それを疑ってみることもストレスの軽減に役立ちます。多くの人が「対人関係が悪いのは自分の性格が悪いからだ」とか、「努力が足りないからだ」と思いがちです。
日本人は、子どもの頃から「いじめはいけません。みんなで仲よくしましょう」と教え込まれ、「おもてなしの心」を学んで育ちます。社会に出れば「人間関係を維持する」ことを求められ、「上司との良好な主従関係」を強いられて、何がなんでも「良好な関係」を維持することに努めます。
最近では、逆に「部下と良好な関係を築けない上司は失格」という風潮が高まっていますから、誰もが「周りの人と仲よくしなければならない」という強迫観念にとらわれているのです。
残念ながら、人と人には「相性」がありますから、どんなに努力をしても、合わないものは合いません。日本人は「できれば仲よくしたい」とか、「何となく、仲よくできそうな気がする」と思いがちですが、それほど簡単なことではありません。
合わないものは合わないと認める「勇気」が必要です。無理なものは無理と「割り切る」ことも大切です。
SNSの「いいね」仲間のような、表面的な仲良しばかりが増えているのは、無理して人に合わせている証拠です。「人に嫌われることもある」と覚悟を決めれば、あなたの気持ちは軽くなるのです。
「人と合わない」は職場関係だけでない
「合わないものは合わない」というのは、上司と部下の関係だけではなく、夫婦であっても同じことがいえます。例え話として、知り合いの精神科医のエピソードを紹介します。
その医師は、研究のためにアメリカに渡ったのですが、何年かすると、長く連れ添った奥さんと離婚してしまいました。彼はこんな弁明をしています。
「日本にいるときは、家に帰りたくなければ、研究室に引きこもるなり、仲間と酒を飲むなり、何とでもできたんだよ。でも、アメリカみたいに夕方5時半にはキッチリと家に帰らなければいけない文化だと、どうしても妻と顔を合わせる時間が長くなる。これまでは無理して合わせてきたけど、やっぱり無理なものは無理と気がついたんだ」
これは、決して他人事の笑い話ではありません。コロナ禍の日本でも同じ現象が起こっています。リモートワークによって、夫が会社に行かなくなり、一日中ずっと家にいることで、ストレスを感じている奥さんが増えているといいます。夫もストレスが溜まっていますから、DV(家庭内暴力)が増えたという話もあります。
職場や学校に行くことが嫌になり、ストレスが蓄積して「適応障害」と診断される人がいます。適応障害というのは、職場や学校の環境が自分に合わないとか、仕事や勉強がプレッシャーになるなどの原因によって、次のような症状が現れるストレス性の障害です。
ストレス性の障害の症状
憂鬱な気持ちになる/不安感が強くなる/涙もろくなる/過剰に心配する/眠れなくなる
会社や学校に行くと心や体の調子が悪くなりますが、家に帰ればケロッとしているので、一時期は「新型うつ病」などと呼ばれました。
こうした症状が出た場合、精神科医は「物の見方を変えましょう」とか、「自分に合ったストレス解消法を考えましょう」とアドバイスをしますが、どうしても無理ならば、その場から「逃げる」という選択肢があることを知っておく必要があります。
今の環境が無理なら別の環境を探す
会社に行くことがどうしてもツライならば、「会社を辞める」とか、「別の部署に異動させてほしい」と上司に直談判するということです。「いじめ」が怖くて学校に行けないならば、別の学校に「転校」するということも視野に入れる必要があります。
今の環境が無理ならば、無理して我慢せずに、他の環境を探す……ということですが、多くの日本人は、この「逃げる」という選択肢を非常に嫌がって敬遠します。欧米の人は収入や環境面で不満があれば、すぐに転職を決意しますが、日本人は「逃げる」という選択を「汚いこと」とか「卑怯な手段」と考えているのです。
「逃げる」という選択を「卑怯な手段」と考えているから、転職の道を選ぶことはせず、上司に異動願いを出すこともありません。これだけ転職が一般的になった時代でも、多くの人が「じっと我慢」する道を選択して、結果的に心身に支障をきたしたりしているのです。
夫婦関係や人間関係でも、まったく同じ傾向が見られます。欧米人は愛情が冷めたら素早く離婚してしまいますが、日本では我慢することが普通ですから、離婚というのは「よほどのこと」として選択肢から外されます。
人間関係に悩んでいる人の8割くらいは、その人間関係から逃げられないと考えていますから、職場や学校、友人やママ友まで、多くの人が「我慢」の道を選択しているのです。
「我慢する」という考え方は、ある意味では日本人の「美徳」と見ることもできますが、ストレス対策という面で考えると、必ずしも最良の選択とはいえません。日本人が「逃げる」と考えるのは最後に自殺するときだけ……というのでは、最悪の逃げ方しかできないことになります。
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「逃げる」といっても、必ずしも、すぐに会社を辞める必要はありません。「最後には逃げればいいんだ」「逃げられるんだ」と思えれば、すぐに会社を辞めないで、「もう少しだけ様子を見てから決めよう」という気持ちの余裕が生まれます。
「辞めるという手もある」と覚悟ができれば、上司に掛け合って異動をお願いするとか、面と向かって文句を言うことだってできるはずです。少なくとも、現在の環境を変えて、ストレスを吹き飛ばすための最初の一歩を踏み出す決心ができます。
生活面や収入面、家族のことや転職先のことが心配で「逃げる」という選択ができない人もたくさんいます。「逃げる」というのは、あくまでストレス軽減のための「最終手段」とか、「最後の切り札」として、知っておけばいいのです。
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提供元:人には相性がある「嫌われる」ことも受け入れよう|東洋経済オンライン