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2022.06.10

会社から「辞めてほしい」と言われたらどうする?|「解雇」とは違う退職勧奨とはどういう制度か


会社から任意で雇用契約を解消する「退職勧奨」制度について解説します(写真:polkadot/PIXTA)

会社から任意で雇用契約を解消する「退職勧奨」制度について解説します(写真:polkadot/PIXTA)

「退職勧奨」という制度があるのをご存じでしょうか?

「解雇」が会社からの一方的な雇用契約の解消であるのに対し、「退職勧奨」は会社が任意で雇用契約の解消を従業員へ申し出て、従業員がそれに応じた場合にはじめて退職の効力が生じます。

日本では解雇のハードルが高い

従業員のなかには、勤務態度や素行が不良な人、周囲との協調性がなく職場の雰囲気を悪くする人、能力的に業務の遂行が著しく問題がある人など、会社として雇い続けること難しい従業員がいる場合もあります。

しかし、日本では解雇のハードルが高いため、裁判をしたとしても「よほどの事情」がなければ無効と判断されます。

それに対して、退職勧奨は合意に基づく雇用契約の解消ですので、会社は解雇無効や解雇権乱用で従業員から訴えられるリスクを回避できます。従業員としても、退職金の増額や退職期間の調整など、解雇と比べて労働者に有利な条件が多くなるため、次の生活に向けて気持ちを切り替えやすいという側面もあります。

では、退職勧奨はどのように行われるのでしょうか。事例を紹介します。

<事例1 退職勧奨がうまくいったケース>

「もうこれ以上、Aさんを指導するのは難しいです!」

従業員Aの上司が、会社にこう訴えました。話題にのぼったAは、2年ほど前に専門職として中途採用された従業員です。Aは採用面接で「前職でこの業務を3年間経験し、自分1人でもできます」「前職では後輩の指導も行っていました」などとアピールし、即戦力を期待されて入社しました。

ところが入社後、実際にAに仕事をさせてみると、採用面接でしていた話とは違い、「できる」と言っていた業務のほとんどをまともにこなすことができません。

会社は、選考書類や面接時の情報から、Aの実務能力を見極められなかったことは採用側の責任と受け止め、Aの今後に期待して、未経験者と同じように扱う方針を取りました。しかし、1年近く経過しても、Aの業務を遂行する能力はまったく向上しません。仕事のミスやクレームが多かったため、会社はAに都度、問題点を指摘し、具体的な目標を示しながら教育を続けてきました。

入社から2年ほど経ったある日、Aの不注意により、お客さまから大きなクレームを受けてしまう事態が発生しました。これまでAの度重なるミスをフォローしてきた上司も、「これ以上の指導は難しい」と会社に訴えたことで、ついに会社はAに退職勧奨を行うことを決断しました。

役員と上司はAと面談し、「再三にわたり指導を続けてきたが、会社が期待する業務水準に至っていない」「ミスを繰り返すことで取引先の信頼を損ね、契約を解除されるなど会社に損害を与えた」といった理由から、「会社としてAの退職を勧める」と告げました。

退職日まで勤務せず就職活動を

Aも自分の置かれた状況をうすうすと感じていた様子で、「今までずっと迷惑をかけてきたと思っています。退職をしたいと思います」と、素直に退職勧奨に応じました。退職条件は、「解決金の支払いはなし」「1カ月半後の退職日まで労働の義務を免除し、就職活動に充てる」という内容で、Aも同意しました。

この事例では、会社はAの教育指導を継続して行っていたこと、A本人も自分の職務能力が不足している自覚があったなどの前提があったため、会社とAの退職勧奨の交渉も円滑に進めることができました。

今度は、従業員がいったんは退職勧奨を拒んだ事例です。

<事例2 退職勧奨を従業員が拒んだケース>

コンサルタント会社でマネジャーとして自身の業務に加えて、部下のマネジメントも行っていた従業員Bは、中途採用で入社して以来、10年以上勤めてきました。

しかし、社内でのBの評判はあまりよくありません。部下や同僚からは、「高圧的な態度で仕事がやりにくい」「自分の意見ばかり押し付ける」といった声が挙がっていました。こうした言動を注意した上司に対しても、Bは「あなたの考え方は古い。自分は自分の考え方でやっているので口を出さないでほしい」などと言って聞く耳を持ちません。

加えて問題になったのは、Bの仕事の能力の低さです。「納期を守れない」「作成した資料がわかりづらく、会議資料として提出できない」など、仕事のパフォーマンスでも会社に貢献ができてはいません。

このままではマイナスの影響が大きいと会社は判断するに至り、そして、Bへの一度目の退職勧奨が行われたのです。

人事責任者と直属の上司に会議室に呼ばれたBは当初、自分がなぜ人事に呼ばれているのかを理解できていない様子でした。

「日常的な言動が職場の人間関係を悪化させていること」「自身の仕事のパフォーマンスも会社が求めている水準に至っていないこと」。人事責任者はこれらの理由を告げて、Bに退職勧奨をしたうえで、解決金として「賃金の6カ月分」を提示しました。

これに対し、Bは「退職はしない。会社で仕事を続けたい」と強い口調で断りました。会社は退職勧奨を取り下げざるをえず、Bは継続して勤務をすることになったのです。

しかし、その後もBによる納期遅れがたびたび発生し、上司から指摘をされても一向に改善されない状況が半年ほど続きました。会社がBの配置転換を検討していた矢先、Bのほうから「退職をしたい」という申し出があり、退職に至りました。

退職勧奨を行うにあたり、解決金の支払いは必ずしも必要ではありませんが、従業員が退職勧奨に応じやすくするために、金銭的なメリットを示すことは少なくありません。解決金として退職時にまとまった一時金を支払う方法だけではなく、退職する日を数カ月先にし、その間は仕事を免除する一方、給与を支払うという方法もあります。従業員は次の就職先を探す期間にあてることができます。

一度、入社した従業員に退職を勧めるという状況は、決してよいことではありません。しかし、問題行動を起こしたり、業務の責任を果たせなかったりした従業員を雇用し続けることは、ほかの従業員へのモチベーションを下げたり、会社の業績を悪化させたりするなどの理由で難しい場合もあります。

いずれにしても、従業員の生活環境や意向を尊重して、メリットを感じられる条件を提示することで、円満なかたちでの解決が望めるといえるでしょう。

退職勧奨を受けた場合どうしたらいいか

では、この退職勧奨を従業員の立場からみた場合はどうでしょう。

自分が会社から退職勧奨を受けた場合、会社を辞めてもいいのか、辞めたくないのかによって対応は異なります。

会社を辞めてもいいと思っているなら、会社側に退職の条件を確認しましょう。特に重要なのは金銭面です。会社からの退職勧奨に応じて退職するのであれば、通常より多くの退職金支給を要求すべきです。

また、一般的に退職勧奨に応じた退職は「会社都合」になります。ただし、転職先に知られたくないといった理由で、「自己都合として対処してほしい」と希望することも可能です。その場合は、失業手当の受給要件の緩和が受けられないなどのデメリットもあるので、会社側とよく話し合って決めることが重要です。

なお、勝手に自己都合にされてしまっているケースもなかには見受けられるので、そこはしっかり確認をしておくことが必要です。

会社を辞めたくないのであれば、退職勧奨に応じる必要はありません。退職勧奨は解雇とは異なり強制力はありませんから、ただ「断る」だけでいいのです。

感情的になって言い争いをすると、自分に不利な材料を会社に与えることにもなりかねません。あくまでも冷静に話し合うように心がけましょう。自分で判断がつかないときは、弁護士などの専門家に相談することも一つの手です。

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提供元:会社から「辞めてほしい」と言われたらどうする?|東洋経済オンライン

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