2022.05.16
「スマホ読書」で頭が良くなる!5つの納得理由|「気が散る」「集中できない」スマホを逆活用する
「スマホ時代」の読書において必要なこととは(写真:Ran&Ran/PIXTA)
テクノロジー、政治、経済、社会、ライフスタイルなど幅広い分野の情報を発信し、日本のインターネット論壇で注目を集める佐々木俊尚氏。
「ノマドワーキング」「キュレーション」などの言葉を広めたことでも知られ、2006年には国内の著名なブロガーを選出する「アルファブロガー・アワード」も受賞している。
その佐々木氏が、このたび、『現代病「集中できない」を知力に変える 読む力 最新スキル大全』を上梓した。
「ネット記事」「SNS」「書籍」などから、「読むべき」記事をいかに収集し、情報を整理し、発信していくか、自身が日々実践している「新しい時代の読み方」の全ノウハウを初めて公開した1冊で、発売後たちまち4万部を超えるベストセラーになっている。
そんな佐々木氏が「『スマホ読書』で頭が良くなる5つの納得理由」について解説する。
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スマホ時代に必要なのは「新しい読み方」
みなさんは1日にどのくらいの時間、スマホに向き合っているだろうか?
移動中や仕事中の息抜きに、気がつけばスマホに手が伸びている、家族や恋人、友人など大切な人といるときでさえも、ついスマホを見てしまう、そんな人も多いのではないだろうか?
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じっさい私は、「最近、本を読んでいても、どうも集中できない」「用もないのに、スマホを触りたくなってしまう」という悩み相談を、多くの人から非常によく受けてきた。
そういう質問を受けるたびに「集中力なんて別に必要ないですよ」「そんなものがなくても、大量のインプットとアウトプットは可能ですよ」と答えているのだが、それにも驚かれることがほとんどだ。
スマホという手軽な武器を手にしてから、私たちはますます飽きっぽく、注意散漫になり、集中力が続かなくなった。しかし、だからといってスマホを手放すことは、ほとんどの人にとってもはや不可能である。
だったら、「気が散る」「集中できない」のがスマホ時代の宿痾(しゅくあ)、現代病だと受け入れ、それを逆活用し、「集中力が続かない」という前提に立った、スマホ時代の「新しい読み方」を実践すればいいだけである。
「スマホがいつも目に入るために本が読めなくなった」と思うのなら、発想を変えて、「スマホを使って読書する方法」を実践すればいいのである。「スマホ読書」は知的生産性を上げるために、じつは非常に効果的だ。その5つの理由について解説していく。
「スマホ読書」に欠かせないのは、電子書籍である。私が愛用しているのはアマゾンの電子書籍サービス「キンドル(Kindle)」なので、キンドルを中心に説明していく。
【理由1】書籍ならではの「多様な視点」が得られる
スマホを使った知的生産術として、ウェブメディアの記事を読むという方法もある。それに加えて「書籍」がなぜ必要かというと、書籍にはウェブメディアの記事にはない利点があるからだ。
ひとことで言うと、「そのテーマについての全体像をつかみやすい」という点だ。
優れた書籍は、1冊の本の中だけで「アウトライン→視点→全体像」という流れを全部用意してくれる。それによって私たちは、「多様な視点」からテーマをさまざまに照射することで、全体像のイメージを持ち、「知肉」を育てていくことができる。
このように書籍から得られる「多様な視点」をウェブの記事だけで十分に得ることは難しいので、情報の2つの軸として「ウェブ記事」と「書籍」を必ずもっておきたい。
もちろん私は紙の本も読む。「2000冊を上限」に所有し、月に1度の割合で入れ替えながら管理する。
その一方で電子書籍を愛用し、キンドルで購入した本は気がつけば1300冊以上になった。とくに移動中に読むのは電子書籍と決めている。キンドルのアプリをダウンロードすれば、さまざまな端末で電子書籍を読むことができるが、もっとも身近で手軽な「スマホ」をぜひ活用したい。
「集中力が続かない」を逆活用できる
【理由2】5分の短い集中でも断続的に読める
キンドルはどこまで本を読んだかをクラウドで管理し、パソコンやスマホ、タブレット、専用端末など、さまざまな機器で同期してくれる。それゆえ、仕事場でパソコンのキンドルアプリを起動させて画面で読み、打ち合わせに出かける電車のホームでスマホを取り出して続きを読み、電車に乗ってもそのまま読み続けるといったことが可能だ。
とくに混んでいる電車の中では、取り出しやすく場所を取らないスマホが向いている。
そもそも、集中力なんてなくても、「5分の集中」をうまく積み重ねれば、いくらだって書籍を読み進められるし、それを「知肉」に変えることができる。
たった5分でも時間が空いたら、すかさずスマホを手にすれば読書時間を生み出せる。
こうやって小刻みに、効率よくどんどん読んでいくことは非常に大切なポイントで、スキマ時間の積み重ねで、私の場合はトータルすれば1日に2時間くらいは読書にあてており、「3日で1冊」「月に10冊」。十分な読書量ではないだろうか?
「スマホ読書」で何をどう読むか。スマホに合った方法を選べば、読書の効率をさらに上げられる。
【理由3】読書の幅を効率よく広げられる
キンドルの電子書籍には試し読みできる機能がついており、それぞれの出版社の意向によるが、購入する前に本の冒頭から数十ページぐらいを読めるようにしている本は多い。
どんなに名著であっても、相性が悪ければ内容は頭に入ってこないので、あらかじめ、無料サンプルで「本との相性」を確認しておくことは、自分の「知肉」となる読書をするうえで非常に重要である。
また、「スマホ読書」には「漫画」もおすすめしたい。たとえば、ドストエフスキーの『罪と罰』など多くの人に読み継がれている名著は、漫画版も出版されていることが多い。
漫画好きな人なら、漫画のほうがストーリーがすっと頭に入ってきやすいし、登場人物が見分けやすく頭を整理しやすい。移動時間や短い時間を活用する「スマホ読書」にはぴったりなので、名著や自分の学びたいテーマの手がかりとなる漫画を電子書籍で探してみるのもよい方法である。
■読んだ内容を自分の中に蓄積するコツ
【理由4】「深く読む」ための「保存」が手軽にできる
これは紙の本でも電子書籍でも同じだが、読書から得たものを自分の「知肉」として蓄積していくためには、本を読みっぱなしにしてはいけない。
つねに「この本はどのように自分の知肉になるだろうか」ということを意識しながら読んでいき、気になる文章は忘れないうちにその場でチェックする。電子書籍の場合は、画面を指でなぞるだけでハイライトできるので非常に便利だ。
大事なのは、ハイライトしただけで終わらせず、チェックした文章をメモアプリに保存することだ。
キンドルの場合、ハイライトした文章をコピペしてメモ帳などに貼りつけることはできないが、「キンドル メモとハイライト」というサイトを開くと、自分が過去にハイライトした文章を書籍別に閲覧でき、普通にコピペできてしまうので、この「裏ワザ」を使って「メモアプリ」にコピペするのである。
その際に、自分がその文章の何に感銘を受け、なぜ「保存の必要がある」と感じたのか、短い覚え書きを添えておくことも大切である。
わたしは、「5分」「15分」と本を読み進めて、ちょっと飽きたり疲れてきたりしたタイミングで「保存」の作業をおこなう。
スマホなら、電車の中で立っているときでも、一連の作業を完結できるので、読んだ本の内容がより深く自分の中に蓄積されていくはずだ。
【理由5】いつでもどこでも「知的生産」できる体質になる
「自宅の椅子じゃないと本がじっくり読めない」「午後の休憩のお茶のときにカフェで本を開くのが私の読書時間」などという人もいるかもしれない。
もちろん、いつどこで本を読むのかは個人の自由だが、ただでさえ、さまざまな情報が流れ込んできて集中力が続かず、注意散漫になりやすい現代人が、自分で読書する時間と場所を決めつけてしまうと、読書に使える時間はどんどん減っていってしまう。
だからこそ、現代においては、「どんな場所でも読書できるように自分を適合させていくこと」が重要である。
ここでヒントにしたいのは、所有物をできるだけ減らし、身軽でシンプルなライフスタイルを送る「ミニマリスト」の姿勢である。
自宅のモノを減らす代わりに、近所のカフェをリビングに、スーパーをキッチンに見立てるなどして、街全体をくつろげる場所にしようとする考え方があり、「慣れればどこに行ってもくつろげるようになる」という精神的なメリットがある。
ミニマリストにならって、「この場所じゃないと、この時間じゃないと、本が読めない」という呪縛から自分を解き放ち、いつでもどこでも本を読めるように自分を改造していく。そのために有効なのが、スマホをはじめとしたマルチデバイスを駆使することだ。
「ミニマリスト読書」を体得し、いつでもどこでもスマホに手を伸ばせば読書できるようになれば、これまでよりも多くの読書時間が確保できるようになるだろう。
スマホを「最強の知的ツール」にする
「机がどう」「椅子がどう」という問題ではなく、読書の本質は「文字と文章に自分が向き合うこと」である。
紙の本に比べて、「電子書籍」や「スマホの画面」は読みにくいと感じる人がいるかもしれないが、これも「慣れ」の問題だ。
どんな場所でも、どんな時間でも、どんな姿勢であっても、どんな環境でも、本を読めるようにする。忙しい現代人が限られた時間を駆使して「知力」を身につけるためには、この「新しい読み方」が必要なのだ。
この複雑な世界を生き抜いていくために、ぜひ多くの書籍にふれて「多様な視点」を身につけ「知力」を磨いていく、そのためのひとつの手段として「スマホ読書」を実践してみてほしい。
そうすれば、私たちの「生産性」を落としていたのはスマホそれ自体ではなく、スマホを手にすることで「目に入ってしまう余計な情報」だったということに気がつき、スマホを「最強の知的ツール」として使いこなす「新しい読み方」への道が開けるはずである。
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提供元:「スマホ読書」で頭が良くなる!5つの納得理由|東洋経済オンライン