2022.05.10
平気で「サラダ」を買う人が知らない超残念な真実|「なぜ茶色くならない?栄養は…?」裏側を解説
ヘルシーなイメージがあるコンビニサラダですが……(写真:hanack/PIXTA)
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食品添加物の現状や食生活の危機を訴え、テレビ等にも取り上げられるなど大きな反響を呼んだ『食品の裏側』を2005年に上梓した安部司氏。70万部を突破する大ベストセラーとなり、中国、台湾、韓国でも翻訳出版され、いまもなおロングセラーになっている。
その安部氏が、『食品の裏側』を発売後、全国の読者から受けた「何を食べればいいのか?」という質問に対する答えとして、このたび『世界一美味しい「プロの手抜き和食」安部ごはん ベスト102レシピ』を上梓した。15年の間に書きためた膨大なレシピノートの中から、たった5つの「魔法の調味料」さえ作れば、簡単に時短で作れるレシピを厳選した1冊だ。
発売後、たちまち8刷6万5000部を突破し、各メディアで取り上げられるなど、大きな話題を呼んでいる安部氏が「平気で『サラダ』を買う人が知らない超残念な真実」について語る。
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コンビニのサラダが爆発的に売れている理由
コンビニやスーパーで買える「市販のサラダ」、パックされた「カット野菜」が売れているそうです。もともとヘルシーブームでサラダ需要が高まっているところに、コロナ禍の「ステイホーム」が輪をかけたのでしょう。
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いまやコンビニでは、「緑黄色野菜のサラダ」「コールスロー」「シーザーサラダ」「ポテトサラダ」「わかめサラダ」など、あらゆる種類のサラダが並びます。
蒸し鶏や豚しゃぶ、卵、ツナ、ハム、ベーコンなどのたんぱく質がトッピングされているものも多く、栄養バランスも考えられています。
またコンビニでは近年は「ドレッシング」が別売りとなっていることが多くなっています。これも「ごまドレッシング」「和風ドレッシング」「ノンオイルドレッシング」「玉ねぎドレッシング」と、好みに合わせて選ぶことができます。
かつてコンビニ食は「不健康の代名詞」のように言われたものですが、このサラダをはじめとした野菜のお惣菜が充実したおかげで、いっきにヘルシーなイメージになってきています。
またカット野菜の販売量も伸びていて、あるJAの人から「カット野菜の伸びで野菜の売り上げが上がっている」と聞きました。
今回は、そういう「市販のサラダ」を買う人が知らない残念な真実について考えてみたいと思います。
なぜ自宅で作ったサラダは、しばらくすると「茶色く変色したり」「しなびたりする」のに、市販のサラダは一定の時間がたってもしなびたり変色したりせずに、美しさを保っているのか、不思議に思ったことはありませんか?
コンビニのサラダが変色しない理由
【残念な真実(1)】「殺菌剤(次亜塩素酸ナトリウム)」の洗浄過程で、「ビタミンC」が壊れ、流出する
『食品の裏側』でも取り上げ、詳しく解説しましたが、市販のサラダ用の野菜は、カットされて、まず「次亜塩素酸ナトリウム」の溶液で洗われます。
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「次亜塩素酸ナトリウム」を溶かしたプールで「洗っては移し」を繰り返し、最初は「200倍」、次に「500倍」「1000倍」「2000倍」などと徐々に濃度を低くして、何回かに分けて野菜を洗浄します。それは「次亜塩素酸ナトリウム」の残留を減らすことに加えて、「臭い」を残さないためです。
「次亜塩素酸ナトリウム」は水道水にも添加される「殺菌剤」で、国の定めた基準値以下の低濃度であれば、体内に入っても別に問題はありません。
しかし問題は、洗浄の過程で、「次亜塩素酸ナトリウム」が塩素と反応して「ビタミンC」が破壊され、流出しがちだということです。
「ビタミンC」は水溶性ですから、家庭においても、野菜をカットして水道水で洗えば一定量は流出してしまいます。しかし「次亜塩素酸ナトリウム」を使って何度も洗浄されている市販のサラダは、より多くの「ビタミンC」が失われてしまっている可能性が十分あるのです。
【残念な真実(2)】「見えない添加物」が使われている
一般的には生野菜には添加物を使ってはいけないのですが、市販のサラダには「添加物」が使われている場合があります。
「いったいサラダに、どんな添加物が使われるのか?」というと、主に次の4種類になります。
【1】「野菜の洗浄剤」(主に「シュガーエステル」)
「界面活性剤(乳化剤)」の一種で、汚れを落とすために使われるものです。
【2】「野菜の殺菌剤」(主に「次亜塩素酸ナトリウム」)
これは先ほど述べたものです。
【3】「シャキシャキ剤」(主に「フマル酸」「乳酸カルシウム」、酸性の「ポリリン酸ナトリウム」など)
野菜を「シャキシャキさせる」ために使われる添加物です。「浅漬けの素」などにも使われています。ただ、私も現役当時はよく使っていましたが、正直あまり効果があるようには思えませんでした。
【4】「切り口の変色防止剤」
「カットした野菜の切り口の変色用」に用いられます。「バナナの黒ずみ防止」にも使われるものです。
余談ですが、昔は変色防止には「コウジ酸」がよく使われたものです。コウジ(麹)は酒やみそ、しょうゆを造るときに使われる、あの「麹」です。誰もが「安全なものだ」と思うでしょう? しかし「コウジ酸」は「発がん性がある」とされて、使用禁止となりました。
添加物が難しいのはこういうところです。「天然由来だから安全だ」として使われていた添加物が、ある日突然「使用中止」になったりするのです。
「加工助剤」という名目のため、表示しなくてもいい
これらの添加物は「加工助剤」という名目で使われるため、表示をしなくてもいいのです。だから、それらの添加物が使われていても、消費者は知る由もありません。
必ずしも4種類の添加物すべてが使われるわけではなく、野菜によって使い分けられます。添加物メーカーが「うちには、こういう『シャキシャキ剤』がありますよ。使ってみませんか?」と、カット野菜メーカーなどに売り込んだりするわけです。
またサラダやカット野菜のみならず、里芋やごぼう、れんこんなどの根菜類の水煮にも、これら4種類の添加物(加工助剤)は使われます。根菜類の水煮の場合には、それらに加えて、「漂白剤」として「亜硫酸塩」なども使われることもあります。
3つめの残念な真実、これは市販のサラダだけの問題ではありませんが、生野菜は思ったほど「量」も「栄養」もとれないということです。
【残念な真実(3)】思ったほど「量」も「栄養」もとれない
コンビニで売られている、レタスがいっぱい入った大きなサラダなど、「たくさん野菜がとれる!」と思うかもしれませんが、栄養価で考えると、そうでもないのです。
そもそもレタスは100グラム(一玉の4分の1程度)とっても、「食物繊維」は1グラムちょっと、「ビタミンC」は5ミリグラム程度です。ビタミンCは水に溶けやすいので、それも洗浄の過程で失われてしまっているかもしれません。
それより、「かぼちゃの煮物」や「ほうれん草の煮びたし」などの緑黄色野菜のほうが、はるかに栄養価が高いのです。
野菜は「1日350グラム」を摂取しようと言われます。350グラムをサラダ(生野菜)でとるのはかなり大変です。しかし、煮て「かさ」を小さくすれば、350グラム分などラクラクとることができます。
緑黄色野菜は、もともとの「カロテン(ビタミンA)」や、その他のビタミン類の含有量が多いので、ゆでたり煮たりすることでビタミンが多少流出しても、レタスなどに比べて、問題は少ないともいえます。
「野菜自体も風味がなくなってきている」という事実
そうでなくても、野菜自体の栄養価は一昔前に比べて、減少しているといわれています。1960年代に比べると、「ほうれん草のビタミンC」は4分の1、「キャベツのビタミンC」も半分程度になっているという指摘もあり、大きく様変わりしています。
「測定方法が昔と今は違う」とか「いまはビニールハウス栽培で栄養価の高い旬の時期以外にもとれるようになったからだ」とか、いろいろ意見があり、もちろん栽培方法によっても異なるので、現代の野菜そのものの栄養価については、ここでは断定しません。
しかし、野菜の品質改良が進んで、どんどん「柔らかく」「クセがなく」、そして野菜によっては「甘く」という方向に向かっているのは、紛れもない事実です。
それが「世間のニーズ」なのですが、その代わりに失われてきたのが「風味」です。
みなさん、市販のサラダ、カット野菜を食べるとき、「野菜のおいしさ」がわかりますか?
【残念な真実(4)】野菜の「味」と「風味」が減り、「ドレッシング」で食べている
キャベツの千切りなど、やたらシャキシャキして食感はいいけれど、キャベツ本来の甘さや香りは飛んでしまっているように、私には思えてなりません。非常によく売れているという「カットネギ」など、ネギの風味や香りがしません。
私の子どもの頃は、子どもの嫌いな野菜の定番といえば、にんじんでした。ところがいまの子どもは、昔ほど「にんじん嫌い」がいなくなってきています。いまどきのにんじんは昔のものとは大違い、「クセがなく」「やわらかく」なってきているからです。
でもクセ=「風味」なのです。私のような昭和の農家の生まれの人間にとっては、風味がしっかりした、昔ながらのにんじんのほうがはるかにおいしい。
ドレッシングで「素材の味」をごまかす
この品質改良において、「クセがなく、やわらかく」そして一部の野菜では「甘い」が優先され、「栄養価」は後回しにされてきているように、私には思えてなりません。その結果、野菜本来の「風味」と「味」が減ってしまったのです。
昨今では、「ドレッシングをかけないと食べられない野菜、食べられない人」も増えているようです。「野菜を食べている」というより「ドレッシングを食べている」かのようにドレッシングをかけまくっている人をよく見かけます。「ドレッシングの濃い味」で食べれば、「素材の味」はごまかされてしまうからです。
これは「焼き肉」と同じ構図だと私は思います。激安焼き肉店の焼き肉のタレは、やたら濃い味ですよね。これで食べれば味がごまかされて、安い肉もそれなりにおいしく食べられてしまう。「肉本来の味」ではなく「タレの味」で食べている感じです。
市販のサラダの多くも、これと同じだと思えてなりません。「野菜の味と風味」が減っている結果、「ドレッシングの味」で食べざるをえないという状況が生まれているのではないでしょうか。
サラダは本来、「野菜のおいしさ」を味わうものです。もちろん忙しいとき、外で食べるときに市販のものを買うのはいいのですが、やはり日常的に食べるサラダは家で作ったほうが、おいしいものです。
「安部ごはん」でも、「魔法の調味料」さえ用意しておけば簡単に作れる「彩りサイコロフルーツサラダ」「余り野菜なんでもコールスロー風」「冷凍野菜の超時短サラダ」などサラダレシピをたくさん掲載しています。「野菜のおいしさ」にビックリするはずです。
安部氏が開発した「魔法の調味料」の1つ「たまねぎ酢」さえ用意すれば、5分で簡単に作れる「彩りサイコロフルーツサラダ」(撮影:佳川奈央)
ドレッシングも、本当は「作りたて」が一番おいしい
また「そうはいっても、ドレッシングがないと食べにくい」「ドレッシングの味が好きなので、使いたい」という人もいると思います。もちろん、ドレッシングを使うこと自体は否定しません。ただ、そういう人ほど「ドレッシング=買うもの」と思いがちですが、じつは自宅でも「絶品ドレッシング」は簡単に作ることができます。
本来ドレッシングは「作りたて」が一番おいしいのです。作って時間が経つと、擦ったごまや酢の香りが飛んでしまうからです。
「安部ごはん」でも、「どハマりおろしドレッシング」「大人の上品ゆずドレッシング」など、絶品ドレッシングを紹介しています。
安部氏が開発した「魔法の調味料」の1つ「たまねぎ酢」さえ用意すれば、5分で簡単に作れるドレッシングの一例(上から「お手軽イタリアンドレッシング」「コクのごまドレ」「マイルド豆乳ドレッシング」/撮影:佳川奈央)
手作りドレッシングはおいしいですよ。「安部ごはん」を見て手作りドレッシングを作った人からは「市販のものはもう買えません」という感想をいただいています。とくに「コクのごまドレ」は、ごまの香りに、みなさん感動します。擦りたてを使えばなおさらです。
また、サラダ、ドレッシングを手作りすれば食費の節約にもなります。
私の持論でもあり、「平気で『おにぎり』を買う人が知らない残念な真実」で書いたことですが、惣菜は「手間賃産業」です。原材料に対して、作る手間が大きく乗って、最終価格となるわけです。
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サラダは、「加工度が低いから、自分で作ろうと思えば、作れる食品」です。わざわざ「手間賃」に高いお金を払わなくても、自分で作れば安上がりで、しかもおいしいサラダを作ることは十分可能です。
そして、もし経済的に許すならば、昔ながらの「在来種」にこだわる有機農法の野菜や自然栽培の野菜は、やはり風味がよく、栄養価も高く、おいしいものです。
「在来種」とはタネを自分で採種し、土地に合うように変化した作物のタネのこと。在来種の有機栽培に取り組んでいる農家の野菜は、昔ながらの野菜本来のおいしさ、風味を感じて懐かしく思います。
5月10日(火)14時から、安部司さんが「食品の裏側」について語るトークライブを実施します。詳細はこちら(写真:佳川奈央)
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「有機野菜は高くて買えない」という人もいるかもしれませんが、じつは「コンビニのサラダ」や「カット野菜」を買い、市販の「ドレッシング」をいつも使うほうが、結果的に高くつくことは意外に多いものです。
作ってみればおわかりと思いますが、時間も手間もビックリするほどかかりません。それに、サラダをよく買って食べる人の中には「自分や家族の健康」を意識している人も多いはず。
ぜひ、家庭で「少しの手間」でできる手作りサラダで「野菜本来のおいしさ」を味わいつつ、「本当に自分や家族の健康につながるサラダ」を楽しんでいただきたいと思います。
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提供元:平気で「サラダ」を買う人が知らない超残念な真実|東洋経済オンライン