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2022.04.22

NY在住の禅僧が説く「心がスッと軽くなる方法」|「悩みが尽きない」のは人として当たり前の事だ


不安で重苦しい気持ちが「スッと消える」方法を紹介します(写真:マハロ/PIXTA)

不安で重苦しい気持ちが「スッと消える」方法を紹介します(写真:マハロ/PIXTA)

お金や健康、人間関係の悩み、それに加えて感染症、不景気、戦争……。自分では変えることができない状況に置かれ、不安で落ち着かない気分を抱えたまま毎日を過ごしている人が増えています。NY在住の禅僧、松原正樹氏の著書『心配ごとや不安が消える「心の整理術」を1冊にまとめてみた』から、重苦しい気持ちが「うそのようにスッと消える」方法をご紹介します。

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「悩みが尽きない」の当たり前のこと

いつ終わるともしれないコロナ禍。本当に起きてしまったウクライナ紛争。ニュースを見るたびに不安がかきたてられる──いま、私たちは平穏とはいえない生活を強いられています。

でも、いろいろなことに悩んでしまうのは至極当たり前です。

仮に感染症の恐怖がなくても、紛争が起きていなくても、人は生きているかぎり、今、起きている問題やこれから起きるかもしれない問題を不安に思い、悩んでしまう生き物だからです。たとえば、あなた自身やあなたの家族の健康状態、お金のこと、職場やご近所との人間関係……。人はいつも何かに悩んでいます。

不安になること、心配すること、悩むこと。これは人が生きのびるために身につけた「自己防衛能力」「危機管理能力」がなせる性質だと、私は考えています。

ただ、やはり、あまりにこの性質が強く働くと、あれやこれやと心配しすぎて、生きることがとても苦しくなってしまいます。

たとえば「老後のお金が心配だ」と悩んでいるとします。今できることは何かを考えてみてください。将来的に必要な金額を計算してみる、月々いくら積み立てるなど、ささやかでも対処できることはあります。何かしらの方策が打てる心配ごとは、具体的解決のための行動をとることで心がラクになります。

けれども、実際のところ、心配ごとや不安の大半は、

「いろいろ備えているけど、やっぱり心配」

「ぼんやりした不安に、いつもとらわれている」

といったものが多いのでは。

あなたを悩ませている心配ごとは、すぐに解決できるものでしょうか?

あなたの不安は、なくすことができるのでしょうか?

現実的に解決できることから具体的な解決策を見いだせないことまで、あれこれ想像し、悶々として抜け出せないループに入り込んでしまう。これこそが心配ごとの本質です。

心配や不安とは、自分ではコントロールしようのないこと、しかもそれが将来本当に問題になるかもわからないことに対して、あなたの心が勝手に不安になってしまっている状態です。心配することや悩むことに時間を費やしたところで、現実は何も変わりません。ただただ苦しい時間が増えていくばかりです。

でも、心配したって大丈夫。不安に思うのは当然だからです。

仏教では、すべての物事には「原因」があって「結果」があるとしています。「原因」がさまざまな「縁」によって姿を変えて、「結果」につながります。あなたの抱えている心配ごとにも、必ず「原因」があります。そう、現実的に対処できる問題ではなく、「あなたの心模様しだい」なのです。

心配を生み出す環境を変えることは難しくても、心配という感情を手放すことは、ちょっとした思考のクセや生活の習慣を変えるだけで簡単にできます。

祖父の言葉「心を痛めず、心を配る」

私は禅僧でありながら、拠点はアメリカで、大学生を相手に宗教学者として日本仏教について教えています。「ブッダは架空の人物ですよね?」という外国人を相手に、いかにわかりやすい言葉で禅を伝えるかが日々のテーマです。また、グーグルが社員研修に取り入れたことでも話題となったマインドフルネスの活動にもたずさわり、それが縁でグーグルをはじめとする企業へ出向き、禅についての講義もしています。

若い学生の方々や、働く人びとが何に悩み、何を求めているのか。そんなことをつねに考えています。

そして、私の祖父は松原泰道という禅僧です。101歳で亡くなるまで100冊を超える著書を残し、禅をわかりやすい言葉で伝える伝道師でした。私は27歳でアメリカに渡るまで、東京の龍源寺で祖父と生活をともにして、たくさんの話を聞きました。

祖父がいつも話していた言葉です。

「みんなが心配といっているのは、心を痛める心痛である。本来、心配とは他者を気にかけて心を配ること。心痛ではなく、たくさん心配をするといい」

ここに私流の解釈を付け加えるとすれば、

「もっと、自分にも心を配っていい」

「もっと、自分を大切にしていい」

心配という負の感情を手放すにはさまざまなアプローチの仕方があります。たとえ話を1つ、ご紹介しましょう。

心配、不安、焦り、悲しみ、嫉妬、怒り。湧き上がってきた感情に振り回されたり飲み込まれたりしそうなときは、これからお伝えするコップの話を思い出してください。

透明なコップに水と土を入れ、箸でグルグルとかき混ぜた様子をイメージしてみましょう。かき混ぜた途端にコップの中の透明度は失われ、コップを目の高さまで持ち上げ、どの角度からのぞき込んでみても、中に何が入っていたか判別が難しくなります。

ここで一度、平らな場所にコップを静かに置いてみましょう。

かき混ぜられて渦を巻いていた泥水は、待っている間に少しずつ波が静まっていき、落ち着きを取り戻します。そして、時間が経つとともに、重たいものは下へと沈んでいき、コップの中身がはっきりとわかるようになります。

このかき混ぜられた泥水こそが、私たちの心の状態です。

私たちの日常はいつなんどきも感情とともにあり、手放すにしろ執着するにしろ、湧き上がってくる感情に対処することを繰り返しています。つまり、私たちの心は、かき混ぜられたコップの中の泥水のように混沌としているのです。

見えなかったものが見えてくる

いつも泥水のままで視界がクリアになる瞬間がなければ、自分の本心がどこにあるのか、何を大切にしたいと考えているのか、湧き上がった感情の何に反応して心が乱されているのか、わからなくて当然です。だから、いったんコップを置き、心を鎮めることが必要なのです。

実は、このコップを置くという動作こそが、坐禅です。坐禅のやり方はいくつかありますが、基本となるのは、坐禅という字のとおり安定した土(大地)の上に座ることです。

まずは座ってください。そして、コップを置くのと同じように、心を落ち着けます。心の波が穏やかになってくると、コップの中身が水と土だったのだとわかるように、今いちばん何が気がかりなのか、自分が何を思っているのか、何を心配しているのか、といったことがわかってきます。

さらに、コップの中身をのぞき込んでみましょう。すると、泥の中に混じっている枯葉や小さな虫の存在にも気がつきます。日常では見落としていた、自分の本当の気持ちに出会うようなイメージです。心が混沌として泥水のときには見えなかったものを見ようとすること、これが、坐禅です。

私は授業や講演の際、坐禅を身近に感じていただきたくて、このコップのたとえ話を引き合いに出すことがよくあります。

かつてこの話を聞いた女性から、最近になって「あのときコップの話を聞いてから、とても気持ちがラクになったんです」と打ち明けられました。

ふと不安がよぎったとき、イライラしたとき、悲しいとき、強い感情が押し寄せてきたときに「大丈夫。私は今、泥水の中にいるだけ」と思うことで気持ちが落ち着き、感情の暴走を防げるようになったといいます。感情のコントロールはできる。それが真実だと教えてくれるエピソードです。

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今は情報の流れるスピードも速く、すぐに答えを求めようとしてしまいがちですが、まずは静かにコップを置いてみましょう。そして、答えが出るまでそのままのんびり待つのです。

坐禅がすべてを教えてくれるわけではありません。坐禅でできることは、自己と会話すること。それによって心が整理され、他者とのつながりを感じ、自分自身や自分の人生を大切にできるようになります。それまで少し時間がかかるかもしれません。ちょっとずつでよいので、続けることが大切です。

答えになかなかな出会えないときは、泥水の土の分量が多いのかもしれない、そんなふうに考えて、コップの中身がクリアになるのを気長に待ちましょう。今ほしい答えが、あとになってわかることもありますよ。

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提供元:NY在住の禅僧が説く「心がスッと軽くなる方法」|東洋経済オンライン

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