2022.04.21
進化を遂げた「カメラ付き冷蔵庫」利点と課題|日立40万円超モデルとアイリスオーヤマの「差」
外出先から冷蔵庫の中身をスマホで確認できる「カメラ付き冷蔵庫」の実力とは? 写真はアイリスオーヤマ「カメラ付き冷凍冷蔵庫296L STOCK EYE(ストックアイ) IRSN-IC30A-W」(写真:アイリスオーヤマ)
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今年に入ってから、日立グローバルソリューションズ(以下、日立)とアイリスオーヤマの2社から「カメラ付き冷蔵庫」が発売された。スマートフォンのアプリで画像の拡大表示もできるので、外出先からも冷蔵庫の中身を確認しやくなるという。
2013年頃に展示会などで中身を確認できるカメラ付きの冷蔵庫は展示されていたものの、コストが高く、実際に販売されることはなかった。当時はWi-Fiで接続できる家電が少なかったこともあるが、ここ数年は飛躍的に増え、スマートフォンからさまざまな操作ができるようになっている。各種運転状況や給水タンクの水切れなどの状態をスマートフォンで確認したり、AIが使用パターンを学習して最適な節電プランで運転をしたり、アプリで活用するユーザーも増えている。
日立は高級モデル中心で元々価格は高めだが、カメラが搭載されたことで特別に価格が上がっているわけではない。外出先から手軽に冷蔵庫の中身を確認できる時代が始まろうとしている。
冷蔵庫の外側にカメラユニットを設置
日立のカメラ付き冷蔵庫は、2月24日に発売された「まんなか冷凍 HXCCタイプ」で、定格内容積617Lの「R-HXCC62S」(実勢価格49万2800円)と540L「R-HXCC54S」(実勢価格43万7800円)の2機種。どちらも大容量タイプだ。
冷蔵庫の外側にカメラが搭載されている、めずらしい冷蔵庫。日立の「まんなか冷凍 HXCCタイプ」(写真:日立グローバルソリューションズ)
本体上部にカメラが設置されている。冷蔵室のドアを開けた際に、冷蔵室の棚と左右のドアポケットを自動で撮影する。海外のカメラ付き冷蔵庫は、扉の内側にあるものが多いが、日立は外側にカメラが搭載されている。広角レンズで、ドアが約90度以上開いたら起動。ドアを開けて撮影を始める時間は、1秒、3秒、5秒で設定可能。ドアを開けているときにシャッターを切る間隔は、5秒、10秒、20秒で設定できる。
冷蔵室の棚と、左右ドアのポケットまで撮影できる(画像:日立グローバルソリューションズ)
左右のどちらかを開けても撮影が行われ、アプリにはドアを開けた側の最新の写真と、開けていないほうの写真を合成する。いつも最新の冷蔵庫の中身を確認できる仕組みだ。
撮影した写真は「日立冷蔵庫コンシェルジュアプリ」に転送され、スマートフォンで確認可能だ。アプリでは画像の拡大のほか、過去履歴の表示ができる。
なお、タイミングによっては食品を出し入れするユーザーの頭や手などが写り込むことも。撮影時は庫内のランプが消灯するので、そのタイミングは少し気をつけたほうがいいかもしれない。冷蔵室の最下部にある、ボックス形状の「特鮮氷温ルーム」内は、撮影範囲に含まれない。
広角カメラ搭載で中身がはっきり写る冷蔵庫
アイリスオーヤマは「カメラ付き冷凍冷蔵庫296L STOCK EYE(ストックアイ) IRSN-IC30A-W」を2月22日に発売した。全定格内容積296Lと1~2人世帯にちょうどいいコンパクトなサイズだ。実勢価格は11万9800円。
この冷蔵庫は日立とは異なり、庫内にカメラを搭載している。冷蔵室の扉を開閉後、約8分後から庫内を撮影し、静止画像をクラウドに保存。この画像は対応するアプリを通じて、外出先からスマートフォンで確認できる。
扉の扉上段付近にカメラが搭載されているので、扉の一番上のポケットは撮影されないが、広角カメラを採用しているので下のポケットは写る。また、アプリを通じて、庫内の食材の名称・個数・賞味期限を手動登録することにより食材管理でき、賞味期限前日の食材を事前に通知する機能もある。
(写真左)アイリスオーヤマ「カメラ付き冷凍冷蔵庫296L STOCK EYE(ストックアイ) IRSN-IC30A-W」(写真:アイリスオーヤマ)/(右)スマホで冷蔵庫の中身を見たところ。広角カメラで画像がグニャッとしているが、食材はよく見える(画像:アイリスオーヤマ)
カメラ付き冷蔵庫ではないが、ユニークな冷蔵庫を紹介しよう。シャープのクラウドサービス「COCORO HOME」対応のSJ-GK50J(実勢価格は37万2370円)やSJ-MW46J(実勢価格は26万9470円)などの全10モデルだ。
冷蔵庫に献立の相談ができるシャープのクラウドサービス「COCORO HOME」対応の冷蔵庫は全10モデルだ(写真:シャープ)
買い物メモで購入済みにしておくと、購入履歴などから、おすすめメニューを教えてくれる。さらに使えば使うほど賢くなり、献立相談履歴からわが家好みのメニューも提案してくれるようになる。冷蔵庫に直接「鶏肉を使ったメニュー教えて」と言えば、好みに合わせて提案してくれるので便利だ。材料とレシピについては、スマートフォンで確認できる。
食材の保存方法なども相談でき、「おつかれさま」といったねぎらいの言葉も言ってくれるので、次第に愛着がわいてくる冷蔵庫だ。冷蔵庫と日常会話を楽しんだり、冷蔵庫だけでなく、あらゆる家電の操作ができたり、SF映画などでよく見かけるような日常がやってくるのかもしれない。
家族間のコミュニケーションができるシャープの無料アプリ『COCORO HOME』の伝言機能を使えば、伝言したい内容を録音して伝言を頼むと、冷蔵庫がしゃべって伝えてくれる。スマートフォンを持っていない子どもに知らせたいときも、冷蔵庫が知らせてくれるから安心だ。自宅近くのスーパーの特売情報も教えてくれるなど、これまでの冷蔵庫ではなかったユニークな機能が搭載されている。
「カメラ付き冷蔵庫」は便利だが、課題も
これまでのスマート冷蔵庫は、冷蔵庫についてはアプリで操作できることが限られていたので、いまひとつ特別な利便性を感じなかった。しかし、今回紹介したような「外出先から冷蔵庫の中身を確認できる」という機能は、実用的ではないだろうか。スーパーで「あの食材、あったかな……」というシーンはよくあるので、この機能はぜひ使ってみたいと感じた。
ただ、カメラ付き冷蔵庫については、冷蔵室の棚は手前しか写らないため、すべての食材を確認するのは難しい。手前にある食品は切らすと困る食材、または背が低いものを置き、奥側には高いものを置くといった工夫をユーザー側が行う必要がある。将来的にはカメラの配置や冷蔵室の構造を見直し、奥側も簡単に確認できるようにしてほしい。
シャープの冷蔵庫のように、忙しい時間帯に「声」で相談できるのも、スムーズにできるようになれば便利かもしれない。現状ではハッキリとした言葉で語りかけなければならず、会話というには少し「間」が気になるが、AIは年々精度もあがっているので、改善していくだろう。スマート家電はどんどん進化しているので、今後も期待したい。
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提供元:進化を遂げた「カメラ付き冷蔵庫」利点と課題|東洋経済オンライン