2022.04.15
「電車でスマホを見る人」即実践できる6大読書術|「移動中✕スマホ」に最適な本の読み方は?
移動中の限られた時間を最大限に活用する「スマホ読書」のノウハウをご紹介します(写真:takeuchi masato/PIXTA)
テクノロジー、政治、経済、社会、ライフスタイルなど幅広い分野の情報を発信し、日本のインターネット論壇で注目を集める佐々木俊尚氏。
「ノマドワーキング」「キュレーション」などの言葉を広めたことでも知られ、2006年には国内の著名なブロガーを選出する「アルファブロガー・アワード」も受賞している。
その佐々木氏が、このたび、『現代病「集中できない」を知力に変える 読む力 最新スキル大全』を上梓した。
「ネット記事」「SNS」「書籍」などから、「読むべき」記事をいかに収集し、情報を整理し、発信していくか、自身が日々実践している「新しい時代の読み方」の全ノウハウを初めて公開した1冊で、発売後たちまち4万部を超えるベストセラーになっている。
その佐々木氏が「『電車でスマホを見る人』が即実践できる6大読書術」について解説する。
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今日からできる移動時間の読書術
「電車でスマホばかり見るようになった」「以前は移動時間を読書にあてていたのに……」。そんなふうに嘆く声をよく耳にする。
たしかに、スマホは私たちから多くの時間を奪っている。スマホをムダに使っている時間を全人類でトータルすれば、ピラミッドの2つや3つくらいは瞬時に建てられそうだ。
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なんとなく流れてくるニュースやSNSなどに移動中の貴重な時間を奪われてしまうのは、じつにもったいないことである。
しかし、だからといって、スマホを手放すわけにもいかない。もはやスマホは私たちの優秀な「第二の脳」ぐらいになっており、「欠かせない人生のパートナー」になっているともいえる。
それならば、「スマホを活用した読書術」を身につけて、移動時間を「知的生産のための時間」に変えてしまえばいい。
優れた書籍は、1冊で「アウトライン→視点→全体像」という流れがわかる「知的生産」には欠かせないアイテムだ。ネットの記事ばかり見ていても、「アウトライン→視点→全体像」という流れは十分に得られない。
ただ、「スマホを使った読書術」として電子書籍をすすめるだけでは、「なんだ、当たり前じゃないか」と言われてしまうだろう。
ここで紹介するのは、5分、10分といった移動中の限られた時間を最大限に活用する「スマホ読書」のノウハウである。電子書籍をすでに愛用している人、初めて使う人、いまひとつ活用できていない人、あらゆる人のヒントになる方法を伝えたい。
私が愛用しているのは、アマゾンの電子書籍サービス「キンドル(Kindle)」で、気がつけば購入した本は1300冊以上になっている。よって、キンドルを中心に、その読み方のコツを紹介したい。
【1】無料サンプルで「本との相性」を確認する
まず、キンドルの電子書籍には「無料サンプルを送信」など試し読みできる機能がついている。どこまで試し読みできるかは、それぞれの出版社の意向によるが、購入する前に本の冒頭から数十ページぐらいを読めるようにしている本は多い。
この試し読み機能を使えば、その本が自分の求めているものかどうかを「雰囲気」で感じ取ることができる。
結末まで読めるわけではないが、この「無料サンプル」を読むことで、作者の個性と自分の好みがマッチしているかどうか、また翻訳本の場合だと、訳文がこなれているかどうかを確認することができる。
どんなに名著であっても、相性が悪ければ内容は頭に入ってこないので、本との相性をあらかじめ確認することは非常に重要だ。試し読みは短い時間でできるので、電車の移動時間にあてるのはうってつけである。
あるテーマの視点を広げたいときに
【2】定額読み放題で「テーマの全体像」をすばやく得る
とくに自分が詳しくないテーマについて調べるときには、さっと手軽に買える電子書籍を何冊か購入するとあっという間に全体像をつかめることが多い。
ウェブメディアなどの記事は専門的すぎたり、逆に初心者向けだったり、断片的な話である場合も多く、テーマの全体像を得るには書籍のほうが向いている場合が多い。
ネット記事と違って無料ではないが、キンドルの月額980円の定額無料読み放題サービス「キンドル アンリミテッド」を併用すれば、ある程度コストを抑えられる(ただし、すべての本が対象ではない)。
調べたいキーワードでキンドルストアを検索し、ヒットした本の中から自分に役立ちそうな本を選んでいく。テーマにもよるが、私は評価の高い本や最近出版された本の中から購入を決めることも多い。
こういった、「手軽に視点を広げるための読書」にも「移動時間✕電子書籍」を活用したい。
無料サンプルや定額読み放題などを活用して、「これはいける!面白く読めそうだ」と思ったら、いよいよ本腰を入れて読み始めていく。
「集中力が続かない」を逆活用するワザ
【3】5分読んだら、メモアプリに保存する
読書から得たものを自分の「知肉」として蓄積していくためには、本を読みっぱなしにしてはいけない。
気になる文章などには、付箋やハイライトでチェックしておく。電子書籍の場合は、画面を指でなぞるだけでハイライトできるので、電車の中で立っているときでも、簡単にできて非常に便利だ。
ここでおすすめなのは、ハイライトしただけで満足して終わらせず、チェックした文章をコピーして「メモアプリ」に保存することだ。
この作業は、「5分」「15分」と本を読み進めて、ちょっと飽きたり疲れてきたりしたタイミングでおこなうのがちょうどよい。
「すぐにLINEなどの通知がきて、読書に集中できない」というのを、読書をしない言い訳に使う人もいるが、集中力なんかなくても、読書はいくらでもできる。
5分しか集中力が続かなかったとしても、その「5分の集中」を有効活用し、読んでは休み、休んでは読み、と気楽にくり返せばいいのだ。
「5分の集中」をうまく積み重ねれば、いくらだって書籍を読み進めることはできるのだ。
【4】メモを保存するキンドルの「裏ワザ」
キンドルの場合、ハイライトした文章をコピペしてメモ帳などに貼りつけることはできないが、ここでちょっとした「裏ワザ」がある。
「キンドル メモとハイライト」というサイトがあり、そこを開くと自分が過去にハイライトした文章が書籍別にずらりと並んでいる。このサイトからだと、普通にコピペできてしまうので、この「裏ワザ」を使って「メモアプリ」にコピペするのである。
ハイライトとメモはすぐにおこなうのが大事なので、一連の作業を電車内でササっと済ませておけば、ただ読むだけよりも、格段に記憶に残りやすくなる。
【5】漫画も知的生産のために活用する
私のキンドルの本棚には、執筆のための資料となる本や話題の本に加えて、漫画も並んでいる。高尚な文学や哲学書に限らず、ミステリーでも漫画でも、それが「いい本」であれば、自分のための蓄積になってくれる。
たとえば私は、「『名著、難しい本』をぐいぐい読みこなす簡単5秘訣」の中で、ドストエフスキーの『罪と罰』を読みこなすコツのひとつとして、漫画版を活用することを提案した。
漫画好きな人なら、漫画のほうがストーリーがすっと頭に入ってきやすいし、登場人物が見分けやすく頭を整理しやすいので、移動中に短時間でおこなうインプットにはもってこいである。
「『名著、難しい本』をぐいぐい読みこなす簡単5秘訣」 ※外部サイトに遷移します
【6】「こま切れ読書」のツールに活用する
最後に私が伝えたいのは、本はもっと自由に読めばいいということだ。
本を読む目的もスタイルも、「こうでなければ」という呪縛から自分を解き放つことができれば、読書はぐんと楽しくなる。
キンドルのような電子書籍は、どこまで本を読んだかをクラウドで管理し、パソコンやスマホ、タブレット、専用端末など、さまざまな機器で同期してくれる。
それゆえ、仕事場でパソコンのキンドルアプリを起動させて画面で読み、打ち合わせに出かける電車のホームでスマホを取り出して続きを読み、電車に乗ってもそのまま読み続けるといったことが可能だ。
私自身は、新幹線や飛行機などで長時間移動するときはiPadなどのタブレットで読むが、それらをバッグから取り出すのは面倒なときもあり、とくに混んでいる電車の中ではスマホのほうが向いている。
そういう「マルチデバイス読書」にも「電車の移動時間✕電子書籍」は最適である。
「スマホ読書」は、現代人のひとつのスタイル
もちろん私は、紙の本も読む。仕事場には「2000冊を上限」に紙の本を所有し、月に1回の割合で入れ替えている。
私の場合、紙の本は仕事場やカフェなど、じっくり落ち着いて読める場所で読むことが多い。だから、電車でも座って通勤できるなど、じっくり本を読める環境がある人は、紙の本を読むのも、もちろんいいだろう。
ただ、われわれ21世紀の人間は、総じて「まとまった読書時間」をつくるのが苦手になった。昔の人のように、机の前に正座して本に没頭するなどという美しい読書スタイルは、なかなかかなわない。
しかしだからこそ、スキマ時間に、あらゆるときに、あらゆる場所で、あらゆる姿勢で1冊の本を読み進められるかどうかが「知的生産の肝」であり、それこそが「多くの現代人の読書スタイル」になっているともいえる。
せっかくのマルチデバイス時代、「スマホ読書」もひとつの読書スタイルとして取り入れることで、移動時間を「有意義な知的生産の時間」に変えると同時に、自分のなかに確実に「読む力」と「知力」が積み重なっていくことを実感していただきたい。
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提供元:「電車でスマホを見る人」即実践できる6大読書術|東洋経済オンライン