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2022.03.29

「長すぎる老後」に私たちはいかに稼げばいいのか|「高齢者」でなく「戦力」として評価されるか


高齢化が急速に進む日本社会。私たちは何をどのように備えればよいのでしょうか(写真:freeangle/PIXTA)

高齢化が急速に進む日本社会。私たちは何をどのように備えればよいのでしょうか(写真:freeangle/PIXTA)

河合雅司さん(ベストセラー『未来の年表』著者)と、牧野知弘さん(不動産協会賞受賞『空き家問題』著者)による「2030年の東京」対談の最終回は、「老後は、こうなる」です。

高齢化が急速に進む日本社会において、今後の高齢者は現在と異なる老後生活が待っています。私たちは何をどのように備えればよいのでしょうか。対談は、年金問題から始まりました。

1回目:日本人がしがみつく「東京モデル」の悲しい結末 ※外部サイトに遷移します

2回目:数十年後、タワマン住民を待ちうける驚きの未来 ※外部サイトに遷移します

年金問題と格差社会

牧野知弘(以下、牧野):年金の受給開始年齢は段階的に上がっていますが、仮に現行通りとすると、2030年に60歳を迎える1970年生まれの人は、厚生年金・国民年金共に65歳からの受給となります。繰上げ受給をすれば60歳から受け取れますが、受給額は減ります。所属する組織の定年が60歳のままだと「定年後、年金前」をどうやりくりするかが問題になります。 

河合雅司(以下、河合):社会保障は私の専門分野です。厚生労働省の「高年齢者の雇用状況」(2020年)によれば、99.9%の企業が65歳までの雇用確保措置をしていますが、65歳を定年とする企業は18.4%にとどまります。60歳で定年退職後は、嘱託社員として契約を切り替えて雇用を継続するケースが大半です。年収を半分近くにまで減らし、さらに毎年、契約内容を見直す企業も少なくありません。

しかも、こうした雇用延長の対象は、一定期間勤めてきた正規社員が中心です。2030年に年金受給世代になる人は、「失われた30年」で勤務先が倒産したり、リストラに遭ったりした人も少なくありません。退職金を十分にもらえなかった人もいますし、うまく転職できていなければ、厚生年金の保険料納付が途切れています。未納期間が長ければ、低年金となります。ですから、2030年頃には、老後資金を十分に貯めきれないまま60代を迎える人もたくさん出てくるでしょう。

牧野:年金は納めた保険料に応じて還元されますから、現役時代に高収入だった人は受給金額が高く、低収入だった人は低くなります。つまり、現役時代の格差がそのまま反映する仕組みです。低収入で預貯金が十分にできなかった人ほど年金が〝命綱〟になるのに、それが少ない。しかも平均寿命の伸長から、ますます老後は長くなります。この矛盾をどう埋めるか。

現在の政策は「年金が足りない分、長く働いてください」です。2021年4月、高年齢者雇用安定法が改正され、政府は事業主に70歳までの雇用を努力目標として提示しました。いわゆる「定年延長」です。しかし、企業としては無い袖は振れません。70歳まで全社員を雇うなら、返す刀で若年層の給料を下げざるを得ず、研究開発も新規投資もできなくなります。

定年延長のリアル

牧野:私が調べた限り、現時点でまったくハードルを設けずに定年を延長している企業は見当たりませんでした。たとえば損保ジャパンは70歳定年を打ち出しましたが、望んだ社員100人のうち、社が提示した条件をクリアできたのは30人程度で、他はあっさりとはねられてしまいました。企業にすれば、労働生産性を上げるために40代でも篩(ふるい)にかけたいのに、60歳以上の社員を無条件で雇う余裕などない、というのが本音でしょう。

河合:前述の「高年齢者の雇用状況」によれば、定年制度を廃止した企業は2.7%ですので、「年齢にこだわらない」ところはきわめて少数派なんですね。66歳以降も働ける制度のある企業は33.4%ですが、66歳以上の定年制度のある企業は2.4%にすぎません。66歳以降も働ける制度があるといっても、週に数日などアルバイトのような条件で採用しているところが多いのが実情です。

60代にもなると健康状態の個人差が拡大します。60代後半の人は万が一、勤務中に倒れられたら困るので、企業側としては健康面でのチェックを厳格に行ないます。さらに、各企業ともデジタル化を推進している転換期にあり、若い世代に対してもリスキリングや職種転換を求めているところです。こうした大きな変化に対応できるだけのスキルを持っているのか、シビアに能力が査定されるということです。企業はボランティア活動ではないので、年齢にかかわらず「誰でもいい」とはならないのは当然です。 

高年齢者雇用安定法改正の効果がこれからじわじわ効いてくるでしょうから、2030年に向けて70歳まで働く人は増えていくでしょう。ただ、誰もが満足する仕事に就き続けられるとは限りません。2030年まではわずか8年しかないわけで、65歳定年制の会社すらまだ少数派であることを考えれば、「70歳定年」の企業が急増しているとは考えづらいですね。

高齢者の働き方

河合:定年退職後も働くことについて考えてみましょう。自分がもらえる年金受給額が思ったより少ないことに驚き、老後の生活が不安になって「働けるうちは働き続けたい」と言う人が多くなっています。しかしながら、個々人の思いと企業の都合との溝はなかなか埋まりません。

働く側は、できれば同じ会社でこれまでやってきた仕事を続けたいし、なるべく給与水準が下がらないようにしてほしいと考えるでしょう。いっぽう、企業側は、総額が決まっている人件費はなるべく若い優秀な人材の確保やリスキリングに投じたい。ましてや、AIを使って事務処理など定型業務をなくそうとしているわけですから、こうした業務に高齢者を回すことは矛盾となります。

牧野:私の学生時代の同期生たちも、そのような待遇に陥っている人が多いのですが、みんな口を揃えて文句を言っています。「今までと同じような仕事をしているのに給与水準が大幅に下がるのは納得できない」と。これって、会社に所属することでしか稼ぐことができなかった人の典型例ですよね。スキルがある人なら、転職して収入を維持し続けることができるはずですから。ところが、そうした可能性はないし、本人たちもどうしてよいかわからないでいるため、文句だけを言っているわけです。

河合:もし今後の高齢者が、これまでの高齢者と同じくサポート的な業務や軽作業に就くとするならば、AIによる代替だとかえってコストが高くつくという業務が中心になるでしょう。しかし、こうした業務はそれほど多くは残らないと思います。

ですから、同じ会社で働き続けたいなら、生涯現役を目指すことです。現役時代に突出したスキルを身につけている人や、特殊な人脈を持つ人は、「高齢者」ではなく「戦力」として評価されやすいでしょう。そうした特別の存在になれなければ、週2、3日の勤務や大幅な収入ダウンを受け入れる選択にならざるを得ません。でも、ものは考えようです。週2、3日の勤務ならば、副業の許可を得て複数社で働くということも可能ですから。

他方、勤務してきた企業ではなく、老後は別の企業で第2の人生を目指すことも選択肢です。勤めてきた企業の要求には応えられなくても、他社では戦力となるケースは少なくありません。とはいえ、定年退職後の転職は難しいですから、他社に再就職するなら、50代になった頃から準備を始める必要があります。たとえば、外国語を学び直す、現役中に畑違いと思える分野の国家資格を取得しておくなど、次を見越してリカレント教育への自己投資をすることです。

牧野:やはり準備が大切です。私は45歳で会社を辞めたのですが、辞めてみて、自分の実力がいかに低いかを実感しました(笑)。会社での実力と、社会で評価される実力はまったく違います。大企業を離れた社員によく見られることですが、会社の格を表す名刺と、課長や部長など会社での肩書という表示を失った瞬間、孤独な自分を発見すると言われます。リカレント教育がいかに大切であるかがわかります。

ライフプランと老後資金

河合:50代半ばとなって、「定年退職まであと〇年」と指折り数えられるようになると、老後資金への不安が具体化してくるものです。「公的年金だけでは老後資金が2000万円足りない」「いや、本当は5000万円不足する」など、メディアがあれこれ報じたこともあって、他人の年金受給額や貯蓄額が気になっている人も多いのではないでしょうか。しかし、定年退職後にも学費のかかる子供がいるのか、自宅を保有しているのか、家賃を払い続けなければならないのか、など個々人が抱える事情は大きく異なるわけですから、「いくら貯蓄があれば大丈夫」とは一概に言い切ることはできません。

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牧野:同感です。ファイナンシャルプランナーの方ともよく話をするのですが、各人の置かれている状況によって千差万別だそうです。金融庁の「2000万円問題」は「もっと資金を運用していきましょう」といった趣旨での例示であったと聞きます。それが「老後には2000万円が必要」と曲解されてしまったのです。

河合:老後の資金を考えるうえで大きく影響を受ける要素に、親の介護問題があります。これまでの高齢者は、自分の老後のことだけを考えて老後の資金繰りをしていればよかったわけですが、2030年代の高齢者はそうはいきません。自分が70歳になっても、親が存命中という人は珍しくなくなります。他方、公的介護保険サービスは削られるいっぽうです。

牧野:老後資金が足りない場合の対処など、まだまだ話し足りないのですが、文字数の制約があり、記事はここで終了とさせていただきます。厳しい未来に対する処方箋はあります。

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提供元:「長すぎる老後」に私たちはいかに稼げばいいのか|東洋経済オンライン

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