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2022.03.20

大人になって「アレルギー発症」する人の傾向|成人食物アレルギーで多い原因は「果物・野菜」


患者数が急増している成人の食物アレルギー、そのメカニズムについて解説します(写真:metamorworks/PIXTA)

患者数が急増している成人の食物アレルギー、そのメカニズムについて解説します(写真:metamorworks/PIXTA)

成人の10人に1人に症状があり、近年、患者数が急増している成人食物アレルギー。花粉症の人や幼少期にアレルギーがあった人、食生活や就労環境に偏りのある人……誰もが発症リスクを抱え、重症化すると命を脅かすにもかかわらず、その実情はあまり知られていません。本稿は、そのメカニズムから治療・対処法にいたるまで、成人食物アレルギー研究・治療の第一人者である福冨友馬氏が解説した最新著書『大人の食物アレルギー』より一部抜粋・再構成してお届けします。

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なぜ成人になって突然発症するのか

子どもの時には起こらなかった食物アレルギーが、なぜ成人になってから発症するのでしょうか。それには、発症のメカニズムが関係しています。

そのメカニズムの1つとして、ある食物を毎日のように食べていると、次第にその食物に対するアレルギーになることがあります。今まで問題なく食べられていたものでも、食べ続けているうちにアレルギーを発症することがあるのです。

もしかすると、食べているものに新しくアレルギーになりやすくなる原因が生じたり、体質が変化したりといったことがあるのかもしれませんが、それが何であるか、現在の医学では十分にわかっていません。

もう1つのメカニズムは、鼻や目、気管支の粘膜、皮膚などのアレルギーとの関係です。成人になってからでも、アレルギー性鼻炎、喘息、アレルギーの関係した皮膚炎などを発症する例は多数あります。

仕事などで特定の食物を頻繁に扱っていると、鼻・目・気管支・皮膚などを介して、その食物に対してアレルギーになることがあり、それがさらに悪化していくと、その食物を口にすることによって食物アレルギーを起こすケースもあります。

食物ではなくても、花粉やダニのような環境中に普通に存在するアレルゲンが食物アレルギーに関与することがあります。花粉やダニなどの環境アレルゲンと食物アレルゲンの形が似ている場合、環境アレルゲンに対してアレルギーがある人が食物アレルゲンに対してもアレルギー反応を起こしてしまうわけです。

これを「交差反応」といいます。交差反応とは、免疫細胞が、構造が似ているアレルゲンを間違って異物とみなして過剰な免疫反応を起こすことをいいます。

もちろん個人差はありますが、食物アレルギーになりやすい人に共通する傾向がいくつかあることがわかってきています。

(1)アレルギー反応を起こしやすい体質である

食物アレルギーに限らず、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、喘息など、すべてのアレルギー疾患の人に共通して見られるのは、アレルギー反応を起こしやすい体質(アレルギー体質、アトピー体質)である点です。

体質とは、文字どおり体の性質、生まれ持っての遺伝的素因と、生まれ育った環境的要因との相互作用によって形成される、人それぞれの総合的な性質という意味です。

親、兄弟、姉妹など肉親にアレルギー疾患を持つ人がいると、新たに生まれてくる子どももアレルギー疾患を発症しやすい傾向があります。こうしたアレルギー疾患の家族歴は、子どものアレルギー疾患発症のリスク因子であることが、多くの研究結果からわかっています。

しかし、アレルギー疾患は遺伝的な素因だけで発症するわけではなく、環境的要因を含めてさまざまな要因が関与しています。アレルギー体質であっても発症しない人もいますし、子どもの頃に発症したアレルギー疾患は、成長するに伴って、自然にあるいは治療によって症状が軽快することが多いのです。

一方、成人になって新たに発症した食物アレルギーは、長期的には軽快する場合もありますが、軽快しにくいものもあります。

成人の食物アレルギーで圧倒的に多い原因

(2)花粉アレルギー(花粉症)がある

0〜3歳の乳幼児の食物アレルギーでは、鶏卵、牛乳、小麦が三大原因食物といわれていますが、成人食物アレルギーの場合、圧倒的に多い原因食物は、果物・野菜です。

その理由として、成人に花粉アレルギー(花粉症)が多いことが考えられますが、花粉と果物・野菜とがなぜ結びつくのか、不思議だと思いませんか。

原因は、そこで起こっている交差反応にあります。

花粉アレルゲンにより花粉アレルギーを発症した成人は、構造がよく似ている果物・野菜に存在するアレルゲンに対する交差反応によっても、花粉-食物アレルギー症候群を発症してしまうというわけです。

(3)生活習慣が乱れている

働き盛りといわれる20代後半〜50代は特に、過労、慢性的なストレス、睡眠不足や運動不足、偏った食事といった生活習慣の乱れなどが原因で病気にかかりやすくなり、明らかに成人食物アレルギーが出やすくなります。

中でも気をつけなければいけないのは、偏った食事です。特に、砂糖の取りすぎが、アレルギーの発症・増悪(病状がさらに悪化すること)に関係していることは、私の長年の診療経験からして紛れもない事実です。実際に、甘い菓子を食べる習慣をやめたところ、長年悩まされていた鼻炎や咳などのアレルギー症状がほぼ完治した患者さんをたくさん診てきました。

ではなぜ、砂糖を取りすぎるとアレルギー症状が悪化しやすいのか。そのメカニズムについてはあまりよくわかっていない面もありますが、その1つとして、ブドウ糖を代謝する時に、ビタミンやミネラルを消費してしまうことが考えられます。つまり、砂糖の摂取によって大切なビタミンやミネラルが奪われて欠乏を招き、健康な体を維持するのに栄養の面で圧倒的に不利になってしまうのです。

また、砂糖を取りすぎると、それを好む微生物(カンジダ菌など)が腸内で増えすぎて細菌バランスが崩れ、アレルギー反応を引き起こす可能性が考えられるだけでなく、全身のさまざまな疾患の炎症反応を悪化させてしまうこともわかっています。

砂糖が多く使われる菓子などを間食としてたくさん食べてしまうと、それだけでおなかがいっぱいになります。その結果、本来体にとって必要なたんぱく質、ビタミン、ミネラルといった栄養素を摂取する食事がおろそかになり、日々のバランスのとれた栄養摂取という点からも大きな問題です。

最近では、ブドウ糖よりも果糖のほうが体にとって害になっているのではないかという報告も増えています。果糖が体の中で代謝され、アレルギーの炎症を悪化させる物質ができることを多くの論文が挙げていますが、これらの関係を直接的に示したものはまだありません。

フルーツジュースをたくさん飲む人に…

トウモロコシのでんぷんを加水分解して得られたブドウ糖液を、さらに甘い果糖液に変化(異性化)させた「異性化液糖(別名高フルクトース・コーンシロップ)」という液体甘味料があります。果糖の含有率が50%以上90%未満のものを「果糖ブドウ糖液糖」、50%未満のものを「ブドウ糖果糖液糖」と呼びます。

甘味がさわやかで砂糖よりも口の中に残りにくく、低温でも甘味度が増し、低コストでつくれるため、ソフトドリンクや冷菓のほか、パン、調味料、缶詰などにも広く使われています。パッケージにも、原材料名として表示されています。欧米でも、異性化液糖を含んだフルーツジュースなどをたくさん飲む人にアレルギー疾患が多いという報告がいくつか見受けられます。

世界保健機関(WHO)は、2015年に「成人及び児童の糖類摂取量」を発表しました。このガイドラインでは、成人および児童の1日あたりの遊離糖類摂取量を、エネルギー総摂取量の10%未満(1日50g未満)に減らすようにすすめています。さらに5%まで減らして1日25g(ティースプーン6杯分)程度に抑えれば、健康効果はより増大するとしています。遊離糖類(free sugars)とは、単糖類(ブドウ糖・果糖等)および二糖類(砂糖、ショ糖)のことです。

また、遊離糖類の摂取量をエネルギー総摂取量の10%未満に抑えれば、肥満や過体重、虫歯のリスクを減らせる明確な証拠があるとされています(食品安全委員会ウェブサイト、『Guideline : Sugars intake for adults and children』World Health Organization 2015)。

アレルギーの発症・増悪予防という点から、砂糖をどの程度厳密に避けるべきなのか、その具体的な数字はまだ明らかになっていません。砂糖は、さまざまな加工品に使われていて、摂取を完全にゼロにするのはむずかしいかもしれませんが、なるべく控えたほうがいいことは間違いないでしょう。

(4)過度のきれい好きである

世の中がきれいになりすぎたために食物や花粉などのアレルギーが増えたという声がよく聞かれますが、はたしてどうなのでしょう。

私たちの体に異物が侵入した時、白血球が連携して防御してくれるシステムには、細菌やウイルスなど万人にとって有害な異物に対して作用する「免疫反応」と、食物の成分など無害であるはずの異物(アレルゲン)に対して作用する「アレルギー(反応)」があります。

異物侵入を察知した抗原提示細胞は、白血球の1つであるT細胞にそれを知らせます。すると、T細胞のうち、細菌やウイルスが侵入した時はTh1細胞(1型ヘルパーT細胞)が、アレルゲンが侵入した時はTh2細胞(2型ヘルパーT細胞)が、リンパ球の一種であるB細胞に対して武器(抗体)をつくるように指令を出し、それが異物にくっついて撃退します。

アレルギーを発症しやすいかどうかは、このTh1細胞とTh2細胞のバランスが関係しているといわれています。

最近は衛生環境が整い、世の中が清潔になりすぎて感染症が激減したことなどからTh1細胞の出番が減り、代わってTh2細胞の働きが優位になり、本来攻撃する必要のない食物の成分や花粉にまで過剰に作用するようになったという考え方があります。

このようなメカニズムが、アレルギーの患者さん一人ひとりのメカニズムとしてどの程度重要かは十分明らかになっていません。しかし、世の中全体としてアレルギーの人が増えてきているのは、このようなメカニズムがあるからではないかと考えられています。

乳幼児の食物アレルギーは秋冬生まれが多い理由

(5)ビタミンDが不足している

生活習慣とも関係していますが、乳幼児の場合、食物アレルギーを発症する数は、季節によって異なることが報告されています。

2歳以下を対象に行った疫学調査(あいち小児保健医療総合センターアレルギー科)で、食物アレルギーと診断された乳幼児は秋冬(10〜12月)生まれが多く、春夏(3〜5月)生まれが少ないという報告があり、日本以外の国からも同様の結果が聞かれます。

ここで考えられるのが、日照時間とビタミンDとの関係です。ビタミンDはカルシウムやリンといったミネラルの吸収を増やして骨を強くしたり、血液中のカルシウム濃度を調節したり、過剰な免疫反応を抑制するなどの働きがあります。

食物では、サケ、カツオ、しらす干し、イワシの丸干し、あん肝などほとんどの魚介類、キクラゲや干しシイタケなどのキノコ類、豚や鶏のレバー、鶏やうずらの卵の黄身に多く含まれています。

また、こうした食物からだけでなく、日光を浴びることでも体内につくられます。皮膚の近くにあるプロビタミンD3(7-デヒドロコレステロール)が紫外線に当たることでビタミンD3が合成されます。

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近年、ビタミンD欠乏症と喘息などのアレルギー疾患の発症との関係について研究が盛んに進められています。ビタミンD欠乏状態が食物アレルギー症状を増悪させることが、松井照明氏(あいち小児保健医療総合センターアレルギー科医長)によるマウスを使った研究で直接的に証明されています(Matsui et al. Allergology International 2018 vol.67. (2) p289-291)。

1日に必要なビタミンDの目安量は、成人で8.5㎍(マイクログラム)とされています。しかし、ビタミンDの推奨摂取量に関しては議論も多いようです。

秋冬生まれの乳幼児に食物アレルギーが多いのは、春夏に比べて日照時間が短く、日光を浴びる時間が少ないことによるビタミンDの生成不足も要因の1つと考えられます。

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提供元:大人になって「アレルギー発症」する人の傾向5つ|東洋経済オンライン

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