2022.03.17
「ダイエット=鶏胸肉」に固執する人が見落とす事|ボディビルダーの叡智を生かした減量法とは
ダイエットだからと最初から無理に鶏胸肉を選ぶ必要はないようです(写真:Digifoodstock/ PIXTA)
○○するだけ、1日○分エクササイズなど、数々のダイエット法が提唱されていますが、やせることができたとしても体型維持は難しいものです。同様にハードなトレーニングや厳しい食事制限による我慢を強いる減量法も、いくら効果的でも継続が困難。そこで、ボディビルダー「バズーカ岡田」としても知られる日本体育大学体育学部准教授の岡田隆氏が、ダイエットのプロであるボディビルダーの叡智を、誰にとってもわかりやすく、始めやすくて、続けやすいかたちとして「9つのカード」を紹介。ここでは、その一部の「カード」を取り上げます。
※本稿は『最高の除脂肪食 「食べる」を増やして、絞る!』より一部抜粋・再構成したものです。
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「PFCバランス」の捉え方をアップデート
「PFCバランス」という言葉がダイエット知識として市民権を得てしばらく経ちますが、その「バランス」の捉え方をアップデートしていきます。
ご存じかもしれませんが、念のため「PFC」の解説から。「P」は「Protein/プロテイン」タンパク質で、「F」は「Fat/ファット」脂質、「C」は「Carbohydrate/カーボハイドレート(カーボ)」炭水化物。つまり三大栄養素のことであり、「PFCバランス」とは摂取カロリーのうち、三大栄養素がそれぞれどれくらいの割合を占めるかを示した比率を指します。ちなみによく耳にしているであろう「糖質」は、炭水化物に含まれます。炭水化物は糖質+食物繊維です。
理解したところで、具体的に何をするのかに話を進めましょう。Fを段階的に減らし、代わりにPを増やしていくのです。
Fを減らすのは、あくまで「段階的」に。例えば、ブロッコリーにつけていたマヨネーズをポン酢や塩に変える。あるいは、サラダのドレッシングを別添えにしてかける量を減らし、次にノンオイルのものに変える。野菜の旨味を感じられる舌に育っていけば、塩こしょうだけで美味しく食べられるようになるので、自然とそうなっていくはずです。まさにノーストレス。
調理法を、揚げるから焼く、焼くから茹でる・蒸すに移行していくことも大切ですし、口当たりをよくしたり風味づけ目的でのバターやごま油の量を控えるのも有効です。
また、同じ焼くという調理法でも、霜降り肉より赤身肉、ブリやサバよりアジやホッケなど、より脂質の少ない食材を選ぶようにするのが最終段階。とはいえ、最初から鶏胸肉を無理して選ぶ必要はありません。鶏モモ肉でも皮をはぎ、余分な脂もカットしたうえで調理法や調味料に気をつければ、それだけFを減らせます。
一つひとつをピックアップすると、こんなことで!? と思うかもしれません。しかし、千里の道も一歩から。続けていけば、いずれは「ゆでた鶏胸肉」という除脂肪食的最終形態にたどり着くわけですし、Fを減らしていく過程で結果的にカロリーコントロールができてしまうのです。
ですから「こんなこと」とバカにせず、段階的かつ継続的に減らしていくこと。それだけで、除脂肪はスルスル進んでいきます。もしも進まないようであれば、摂取と消費のバランスが悪いということ。自分に合わないと思い込みページを閉じる前に、食事量を抑えるか運動量を増やすか、調整してみてください。
なお、厳密にカラダづくりをしたい層の方々は、ここでカロリーを落としすぎるのは得策ではありません。Fを下げるとき、どれだけカロリーオフしたか見ておくことを忘れずに。
タンパク質の摂取量を増やす過程で大事なのは?
一方で、脂質は食事の満足度や腹持ちに関係するため、摂取をセーブすると物足りなさを感じやすくなります。実際に摂取カロリーも減るので、そのぶんPを増やしていきます。Pを増やす過程で気をつけたいのが、3食にわたってまんべんなく十分量を摂取すること。タンパク質は、カラダの主な材料となる栄養素です。カラダはつねに細胞分裂を繰り返し、その材料であるタンパク質を常に必要としています。一日で考えるのではなく、1食ごとにしっかり摂るよう整えることが大切です。
「1食あたり20グラム」との指標はありますが、まずは、3食それぞれで肉、魚、豆類、乳製品(脂質に留意)などをしっかり食べるよう調整していければOKです。夜は比較的摂りやすいので、気を配るのは朝と昼。トーストにゆで卵や無脂肪ヨーグルトを足したり、丼ものを食べるなら納豆や豆腐をプラスしたり、間食としてプロテインバーを持ち歩くのもいいでしょう。
ちなみに、PだけでなくCも増やしたい場合は、トレーニング前後の食事で炭水化物量を多くしてください。
カラダづくりにおけるPFCバランスに対する考え方の多くは、摂取カロリーを定めたなかでPFCの割合を調整する、というものだと思います。かつては私もそのように考えていましたが、あるとき、そのやり方は今ある食生活をガラリと変えることになるため反動が起こりやすく、また数値の計算も大きなハードルとなり、よほどの決意がないと長続きしないことに気がつきました。
どのような取り組みなら続くのか。熟考と実践とを重ねた結果、食生活をちょっとずつ変えていく=カロリー調整という思考の枠組みを一旦外して、ただFをPに置き換えていくという着想を得ました。
当然、ガラリと変えるほうが変化が大きく科学的にも証明しやすい(体重や体脂肪の変動を実証しやすい)ですが、科学的に正しいことが私たちの生活実態ではありません。ならば、実態に即して思考をアップデートするほうがずっと本質的ですよね。
MCTオイルは除脂肪に直結する脂質
ここまでは、Fを段階的に減らしてきました。なぜFを真っ先に減らしたのかというと、PとCと比べてカロリーが倍以上あり、エネルギーとして使い切れずに体脂肪としてカラダに蓄積されやすいためです(F=9キロカロリー/グラム、P、C=4キロカロリー/グラム)。
とはいえ、健やかに生きていくために欠かせない三大栄養素のひとつですから、ゼロにはできません。腹持ちのよさから空腹管理にも役立つため、必要量を効果的に使い切る意識が重要になってきます。ということで、次はFの質に目を向けていきます。
CにはGI値(※)、Pにはアミノ酸スコアや動物性/植物性といった質をコントロールするための選択肢がありますが、Fに関しては「オメガ3を摂ろう」という話で止まっているように思います。
※グリセミック・インデックス(Glycemic Index)の略。食後の血糖値の上昇度合いを食品ごとに数値化したもの。高い食品ほど血糖値が急激に上昇し、逆に低い食品は血糖値の上昇が緩やかで、インスリンが過剰に分泌されることはない。
オメガ3がカラダにいいことは、なんとなく聞いたことがあるでしょう。オメガ3とは魚介類に多く含まれる脂肪酸であり、魚介類を常食しないエリアの人たちは、確かに不足しがちです。ゆえにサプリメントなどで食事に付加し健康を手に入れようとするのは、当然の流れと言えるでしょう。しかし、こと日本に関してはどうでしょうか。海に囲まれた島国で流通も発展しています。自宅で調理しなくとも、外食で食べる機会が豊富にあります。
とはいえ、食の好みによることなので自分の食生活を振り返り、魚をあまり食べないようであれば、サラダのドレッシングなどにオメガ3を活用してみるのもひとつの手。一方で、魚が好きで定期的に食べているという人は、ほかの方法でFの質向上はできないのか? となりますよね。そこで注目したいのが、MCT(Medium-Chain Triglycerides、中鎖脂肪酸)オイルです。
MCTオイルといえば、ケトジェニックダイエットの代名詞のような存在ですが、除脂肪食を進める過程においても、その恩恵は大きいと言えます。なぜなら、体脂肪になりにくいばかりか全身の脂質の代謝が上がるというデータが出ているからです。簡単に言えば、食べるだけで脂肪が燃えるということ。言葉としては矛盾がありますが、事実、除脂肪に直結したFなのです。
脂質の主要な構成要素は「脂肪酸」です。脂肪酸にはエネルギーとして使われやすい「飽和脂肪酸」と、血中の中性脂肪やコレステロール値を調節する働きがあると言われている「不飽和脂肪酸」があります。これらは、炭素を結ぶ鎖の長さによってさらに「長鎖」「中鎖」「短鎖」の3つに分けることができます。
オメガ3は不飽和脂肪酸であり長鎖脂肪酸、MCTオイルは飽和脂肪酸であり中鎖脂肪酸。そして参考までに、1枚目のカードで摂取量を増やした食物繊維が腸内で発酵して生まれるのが短鎖脂肪酸です。短鎖脂肪酸は水の性質に近いため、調理における油の役割を果たしません。だから、日常的に私たちが摂る油は長鎖か中鎖かのどちらかとなります。
MCTオイルで脂質の代謝が上がる
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2つの違いは代謝経路。通常、口に入った食べものは咀嚼を経て胃に入り、小腸から血管に入って門脈を通り、肝臓で代謝されて全身に送られます。しかし、長鎖脂肪酸はサイズが大きく門脈に入れないため、リンパ管へと送られてそのまま全身の体脂肪に貯蔵されます。
その点、中鎖脂肪酸は門脈に入り肝臓で代謝されます。それが体脂肪になりにくいと言われるゆえんですが、それだけでなく、皮下脂肪も同時に燃えるというデータがあるのです(※)。
※Kasai, et al., 2003)
つまり、MCTオイルを摂ると全身の脂質の代謝が上がるということ。理由は明らかにはなっていませんが、肝臓で代謝されてケトン体が生まれることで脂質代謝が上がるのかもしれません。いずれにせよ、美味しい食感と腹持ちを叶えてギルトフリーに油を楽しむアイテムとして、とてもオススメです。
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提供元:「ダイエット=鶏胸肉」に固執する人が見落とす事|東洋経済オンライン