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2022.02.25

仕事を辞めた人ほど「老け込んでしまう」納得理由|「◯歳を機に仕事を辞める」のは得策ではない


なぜ仕事を辞めると老けるのか(写真:USSIE/PIXTA)

なぜ仕事を辞めると老けるのか(写真:USSIE/PIXTA)

仕事を辞めた途端、急に老け込む人がいます。なぜ人は労働をやめると、老け込むのか? 精神科医の和田秀樹氏による新刊『70歳が老化の分かれ道』より一部抜粋・再構成してお届けします。

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要介護となる時期をなるべく遅らせて、70代以降も元気に過ごすためには、最後の活動期である70代の過ごし方がカギになります。ここでは、70代の人がどのような生活を心がければいいのかをみていきましょう。

定年延長や定年後の再雇用など、高齢になっても働く環境が整備されつつありますが、それでも、70代ともなれば、いままで勤めていた会社を退職している人が多いのではないでしょうか。

70代に一気に老け込む人の典型は、仕事をリタイアしたときから、一切の活動をいっぺんにやめてしまうというケースです。これまで懸命に働いてきたのだから、退職したらもう何もせず家でゴロゴロ過ごしたいと、指折り退職の日を待っている人もいます。

しかし、70歳まで現役で仕事をしていた人が、退職後の生活に何をやるのかを考えることもなくリタイアすると、一気に老け込んでしまうことが多いのです。

なぜ働くと老けないのか?

働いているときは、デスクワークのような仕事であっても、通勤などで思っている以上に身体を使っているものです。それなのに、退職してから家にこもりがちになってしまうと、70代の人なら1ヵ月もすれば、運動機能はずいぶんと落ちてしまいます。

また、脳機能の面でも、働いていれば、日々、それなりの知的活動や他者とのコミュニケーションがあり、さまざまな出来事にも遭遇することになりますが、ただ家で過ごしているだけでは、そういった脳の活動はなくなり、認知症のリスクが高まっていきます。

特に、前頭葉の老化が一気に進んでしまいます。前頭葉とは、創造性や他者への共感、想定外のことに対処するといった機能をもつ部分です。ここが老化していくと、何事にも意欲がなくなり、活動することがおっくうになって、運動機能の低下と脳の老化にさらに拍車がかかります。見た目の印象でも、はつらつとしたところが失われた、元気のない老人に変貌してしまうのです。

そうならないためにも、退職を迎えたら、これまでの仕事の代わりに次に何をやるのか、準備をしておくことが大切です。退職して、しばらくゆっくりしてから次のことは考えようなどと思っていると、いつの間にか、ダラダラと過ごす生活に流されて、それが習慣になってしまうということもあります。

70代は元気とはいえ、前頭葉の老化はすでに40代から進んでいます。歳をとるほど、意欲が低下していくのは自然のことで、そもそも70代になれば意欲が若いころより低下していることが普通です。家にこもるような不活発な生活スタイルを自然にしがちな年齢でもありますので、意識して退職後の活動を決めておくことが大切です。

現在は年金も少ないですから、何か新しい仕事を始めるということも、ひとつの選択肢でしょう。金銭的な面だけでなく、老化を遅らせるという面からみても、退職後に、また新たな職場で働き始めるということはとてもいいことです。

隠居にはリスクがともなう

歳をとったら隠居生活もいいものだ、と考えている人ももちろんいるでしょう。しかし、70歳を過ぎてそのような生活に入ってしまうと、一気に脳機能、運動機能を老化させてしまうリスクがあることを十分に理解しておいてください。

寿命が延びて、90歳、100歳まで生きるようなこれからの時代は、歳をとったので「引退する」という考え方自体が、老後生活のリスクになります。引退などと考えず、いつまでも現役の市民であろうとすることが、老化を遅らせて、長い晩年を元気に過ごす秘訣です。

たとえば、何かの商店主をやっている人、建築士や税理士など資格をもって70代まで仕事をやってきたような人が、「〇歳を機に仕事を辞める」というようなことがありますが、そのような選択はけっして得策ではありません。

農業や漁業、職人のような仕事もそうですが、自分が辞めると決めない限り、続けられるような仕事であるなら、身体がもつ限り、できる範囲で一生続けることが 老化を遅らせるいい方法です。

勤め人であっても、役職からは年齢によって外されることもあるかもしれませんが、「働く」ということからは、引退する必要などありません。アルバイトや契約社員など、どのような形態であっても、「仕事」を通して社会とのかかわりをもち続けることが、活動レベルを落とさず、若々しくいる秘訣だと私は思います。

退職後も社会とかかわっていくという意味では、もちろん「仕事」がすべてではありません。町内会の役員や、マンションの管理組合の役員、趣味の集まりの役職などでもいいのです。ボランティア活動も、退職後の社会参加としてはひとつの選択肢です。

誰かと協働し、誰かの役に立ったり、誰かに必要とされていると感じることは、いつまでも現役意識を維持することに大いに役立つはずです。

70代になったら、ことさら「引退」などということは考えず、現役の意識を維持することが大切です。それが、一気に老け込むことを防いでくれます。

なぜ長野県民は長生きなのか?

働き続けることが、私たちの老化を遅らせ、いつまでも若々しくいさせてくれるとは前述しましたが、そのことはデータでも裏づけられています。

長野県はかつて、都道府県のなかでも平均寿命のデータは下位に位置していましたが、1975年に男性が全国第4位となり、その後上昇しはじめ、1990年以降、全国1位を何度も記録しています。

女性においても、2010年の調査で第1位となり、男女ともに平均寿命の都道府県ナンバーワンになりました。厚生労働省の最新の発表である2015年の調査結果でも、男性が81.75歳で全国第2位、女性が87.67歳で第1位です。

これほどまでになぜ、長野県が長寿県なのか、さまざまな推測がなされました。長野県には、イナゴや蜂の子などの昆虫を食べる習慣があるからだとか、地形的に山間部が多く、山道をよく歩いて足腰が鍛えられているからだといった理由が挙げられたこともあります。

しかし、近年では、昆虫を食べることも減ってきていますし、自動車の普及が進み、山道を歩くことも少なくなってきていますので、この仮説にはあまり説得力がありません。

私は本当の理由は、長野県の高齢者の就業率にあるのではないかと考えています。長野県はこれまで、高齢者就業率において都道府県ナンバーワンを何度も記録しています。

総務省統計局発表の最新のデータでも、2017年10月1日現在、高齢者の有業率は長野県の男性が41.6%で全国第1位。女性も21.6%で第1位です。私は少なくとも男性においては、この就業率の高さが平均寿命の長さに反映していると考えています。

家にこもることなく、働くことが運動機能、脳機能の老化を遅らせ、高齢者の寿命を延ばしているのだと考えます。

このことは、沖縄の平均寿命と就業率の関係からも見て取れます。沖縄県は長寿県のようなイメージがありますが、実際は、女性は長寿ですが、男性の平均寿命は全都道府県中30位以降にあり、全国平均を下回っています。

先ほどの厚生労働省の2015年の調査でも、全国36位という下位に位置しています。一方、女性のほうは全国で7位という好位置にいます。

なぜ、沖縄の男性と女性は、ほぼ同じような遺伝子をもち、同様の気候風土のなかで生活しているにもかかわらず、これほどまで平均寿命が違うのか。私はその理由も、就業率に隠されているのではないかと考えています。

沖縄県の男性高齢者の有業率は、全国最下位なのです。このことが、男性の平均寿命を下げている要因のひとつではないかと見ています。女性の場合は若いときから専業主婦の人もいますし、高齢になっても、家事を一手に担っている場合もあるので、就業率自体が男性ほど寿命に影響を及ぼさないのかもしれません。

しかし、男性においては、働いているかどうかが、平均寿命の長さにかなり影響していると考えられます。

長野県では高齢者1人当たりの医療費が、全国最低レベルという調査結果もあります。つまり、歳をとっても元気な人が多いのです。

働き続けるということが、高齢になっても活動レベルを落とさない手っ取り早い方法なのです。そのことが、身体や脳の老化を遅らせることに役立ち、元気な70代、80代を可能にしてくれます。

ただし、歳をとってからの働き方は、若いときのものとは変えるべきだと私は思います。お金や効率だけを求めるような働き方から、自分の経験や知識を生かして、誰かを助け、社会の役に立つということに価値を置いてもいいのではないでしょうか。

年齢を重ねたからこそやれることがある

失敗学を提唱する東大名誉教授の畑村洋太郎さんは、今後は定年退職した人が就ける本当の意味での「相談役」というポストを企業はつくったらいいと言っていました。現在、相談役というと、取締役を退任した人のポストであり、偉そうにしているだけで、本当の相談相手にはなっていません。そうではなく、本当に相談のできる相談役をつくったらどうかという提案です。

定年退職した人がそのポストに就き、仕事上の悩み事、人間関係の悩み、モラハラ、パワハラ問題などを抱えた社員の相談相手になるのです。定年退職をした人ですから、社内の利害関係もありませんし、自分の経験を踏まえて、若い人たちに有益なアドバイスを送ることもできます。

場合によっては、「部長には私から言っておいてあげるよ」などと、これまでの人間関係を生かして、問題を丸く収めることもできるかもしれません。これは働く人たちのメンタルヘルス的にも、とてもいいアイデアだと私も思いました。

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しかし、どれくらい稼ぐかとか、どれくらいの成果を上げるかといったことは、働くということのある一面にしかすぎません。どれくらい社会の役に立っているのかといった視点があってもいいですし、高齢になればそういった価値観に軸足を移して働いてもいいと私は考えます。

どんなことでもいいから、ほんの少しでも社会にかかわったり、何かの役に立つことは、誰にでもできるはずです。そのことに価値を見いだし、高齢になっても働き続けることが、老化防止の最良の薬になるのではないかと私は考えています。

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提供元:仕事を辞めた人ほど「老け込んでしまう」納得理由|東洋経済オンライン

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