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2022.01.27

「絵が下手な人」と「上手い人」、ただ2つの決定的差|「スマホ」を描けば、その違いが見えてくる


「絵が下手な人と上手い人の決定的な差」とは? (写真:buritora/PIXTA)

「絵が下手な人と上手い人の決定的な差」とは? (写真:buritora/PIXTA)

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世界で最も人気のある著名な絵画講師のひとりで、アメリカの大人気番組『マーク・キスラーのイマジネーション・ステーション』の司会を長年、務めるマーク・キスラー氏。
優れたテレビ番組、テレビ業界の功績に与えられる、最も権威ある文化賞のひとつ「エミー賞」も受賞し、2011年に出版した初の著書『You Can Draw in 30 Days』(未邦訳)は、世界中で大ベストセラーとなるほど人気を博している。
そのキスラー氏がこの度、前著をさらに進化させた「超時短30分バージョン」として、「キスラー式メソッド」をすべて1冊に凝縮した『誰でも30分で絵が描けるようになる本――たった「4つのステップ」で、驚くほど絵が上手くなる!』を上梓した。
「わかりやすく」「親しみやすく」「ユーモアに満ちた」解説が添えられた本書は、キスラー氏にとって待望の初の日本語の訳書で、日本でも発売たちまち大増刷するなど、話題を呼んでいる。
「誰でも30分で絵が描けるようになる!」という「キスラー式メソッド」はどんなものか。本書の内容を再編集しながら、「絵が下手な人と上手い人の決定的な差」について解説する。

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「絵が下手な人」に欠けているもの

「あの人は絵が上手い」「あの人は下手だ」、そんなふうに言ったり、耳にしたりすることがあるでしょう。その差は、いったいどこにあるのでしょうか?

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私はこれまで、数万人の大人や子どもに向けて「絵の描き方」を教えてきました。身近な題材、たとえば「ドーナツ」や「家」を描いてみようと提案したとき、「絵が上手でない人」は、決まって次のような描き方をします。

それは、小さな円の周りに大きな円を描いた「ドーナツ」や、正方形の上に三角形の屋根をのせた「家」の絵です。

なぜそれらが「上手な絵」に見えないのかというと、そこには「あるもの」が欠けているからです。

「上手な絵」を、ここでは「まるで本物のようにリアルな絵」と定義しましょう。では、円が2つ重なった「ドーナツ」や、三角形と四角形で構成された「家」が、「上手な絵」に見えない理由は、どこにあるのでしょうか。具体例を挙げて解説していきます。

「絵が下手な人」と「上手い人」の差、1つめは「立体感」を表現できるかどうかです。「スマートフォン」を描いてみると、よくわかります。

【決定的な差(1)】「立体感」の有無

みなさんは、スマートフォンをお持ちですね? 今まさに手にしている人も多いはずです。

便利ですが、まわりが見えなくなるほど人を夢中にさせる「スマートフォン」。こんな当たり前のように使っている身近なものこそ、「おもしろい絵の題材」になります。

スマートフォンの形は、いうまでもなく長方形です。しかし、ただ長方形を描いても、リアルな絵に見せることができません。なぜなら、そこには「立体感」がないからです。

スマートフォンの形「長方形」をそのまま描いた図。このままでは立体的な絵にはならない(出所:『誰でも30分で絵が描けるようになる本』)

スマートフォンの形「長方形」をそのまま描いた図。このままでは立体的な絵にはならない(出所:『誰でも30分で絵が描けるようになる本』)

では、どのように描くと、「立体的に」見えるのでしょうか。

スマートフォンを「立体的に」見せるワザ

私の「30分方式」の描き方では、対象を身近な「基本図形」に分解して「設計図」を作ることから始めます。

まず、左側に傾けた斜めの「長方形」を描きましょう。その後、最も高い位置にある右上の角を頂点とした「三角形」を取り除きます。

そうすると、右側の辺が左側の辺よりも短くなり、長方形の形は「ゆがみ」ます。この「ゆがみ」がスマートフォンに奥行きを与え、「立体的」に見せることができるのです。

長方形の左端には、スマートフォンの厚みを表す「細長い長方形」を描き込めば、絵がよりリアルに見えます。左下には、スマートフォンが台に反射して見えている「三角形」の像を描き入れましょう。

長方形の上辺から点線で示した三角形を取り除き「ゆがみ」をもたせることで立体的に見える(出所:『誰でも30分で絵が描けるようになる本』)

長方形の上辺から点線で示した三角形を取り除き「ゆがみ」をもたせることで立体的に見える(出所:『誰でも30分で絵が描けるようになる本』)

さらに、角に丸みをつけ、「アイコンボタン」を描き込み、光の方向を意識して「陰影」をつけると、美しい硬質感を表現することができます。

長方形に「ゆがみ」を持たせることで表現した奥行き、しっかりと描き込んだ縁の厚みによって「立体感」が表現され、まるで本物のような「スマートフォンの絵」を描くことができるのです。

陰影にメリハリをつけ、画面は薄く塗ってから指でぼかして仕上げた「スマートフォン」の完成図(出所:『誰でも30分で絵が描けるようになる本』)

陰影にメリハリをつけ、画面は薄く塗ってから指でぼかして仕上げた「スマートフォン」の完成図(出所:『誰でも30分で絵が描けるようになる本』)

「絵が下手な人」と「上手い人」は、「本」の描き方にも差があります。それは「遠近感」の有無です。

【決定的な差(2)】「遠近感」の有無

私は本を読むのが好きで、アートと同じくらい、人生に欠かせない存在です。そんな身近な「本」も、立派な絵の題材になります。

でも、これにはちょっとしたテクニックが必要です。「本」を真正面から見たときは長方形に見えますが、「ただの長方形」を描いても「本」には見えません。なぜなら、そこに「遠近感」が表現されていないからです。

本を真正面から見た形。しかし「ただの長方形」を描いても、リアルな「本」の絵にならない (出所:『誰でも30分で絵が描けるようになる本』)

本を真正面から見た形。しかし「ただの長方形」を描いても、リアルな「本」の絵にならない (出所:『誰でも30分で絵が描けるようになる本』)

近くにある物体は大きく、遠くにある物体は小さく見えます。ひとつの物体においては、手前にあるパーツは奥にあるパーツよりも大きく見えます。また、手前から奥に向かう線は傾いて見えます。

つまり、この「遠近感」を絵の中に表現することで、まるで本物のような、いきいきとした絵が描けるのです。

「本」をリアルに見せる配置

本を、少し離れたところに、斜めに角度をつけて平らに置いてみましょう。この配置が「長方形」という形を変化させ、「本」をリアルに描くことを可能にします。

私の「30分で『本』を描く」レッスンでは、はじめに大きな三角形を描いて、「遠近感」を表現する練習をします。

まず、スケッチブックの幅いっぱいに、大きな下向きの三角形を描きます。下の2辺の上に、1カ所ずつ「しるし」をつけ、それぞれを上辺の両端の遠いほうの点と結びます。

そうすると、大きな三角形の中に、新しい2つの三角形ができますね。2つの三角形が重なってできた四角形の部分に「本の設計図」を配置します。

ここで、上辺の両端の点を「消失点」と呼びます。絵の中のすべての線は、水平線上に並ぶ2個の「消失点」に集約され、正しい「遠近感」を表現することができます。この技法は「二点透視図法」と呼ばれています。

さらに、大きな三角形の下の頂点から、少し下の場所に「しるし」をつけ、両側の「消失点」とつなぐと、「本の厚み」を表現する線になります。

はじめに大きな三角形を描き、その中に本を配置する方法で描いた絵(出所:『誰でも30分で絵が描けるようになる本』)

はじめに大きな三角形を描き、その中に本を配置する方法で描いた絵(出所:『誰でも30分で絵が描けるようになる本』)

つまり、「絵が上手い人」は、「遠近感」を意識して、絵の中で物体の大きさ、距離、形などを表現できているのです。それが「リアルな絵」に見せる秘訣でもあります。

「遠近感」「二点透視図法」という絵画の用語が出てきて、不安になった人もいるかもしれませんが、心配はいりません。『誰でも30分で絵が描けるようになる本』には、「絵を描くコツ」がふんだんに盛り込まれています。

先ほどの、大きな三角形の中に「本」を配置する方法もそのひとつです。身近な題材で練習を重ねていけば、「正しい遠近感」が自然に表現できるようになるでしょう。応用も可能で、視点を変えて描きたいときは、三角形の下の頂点の位置を変えてみるだけでいいのです。

まずは難しく考えず、とにかくやってみることをおすすめします。

三角形で示した補助線の角度に「本」の輪郭線を合わせれば、視点を変えても「遠近感」を正しく表現できる(出所:『誰でも30分で絵が描けるようになる本』)

三角形で示した補助線の角度に「本」の輪郭線を合わせれば、視点を変えても「遠近感」を正しく表現できる(出所:『誰でも30分で絵が描けるようになる本』)

コツをつかめば「差」は埋められる

「立体感」と「遠近感」を表現することで、「スマートフォン」も「本」も、リアルに描くことができます。「絵が上手い人」は、このように「絵の中の形と配置」を考えて、頭の中で「再構築」しているのです。

それを知ったうえで、練習を重ねていけば、生まれもった才能がなくても、誰でも「上手な絵」を簡単に描くことができるようになります。

『誰でも30分で絵が描けるようになる本』では、私のこれまでの講義で人気のあったものなど、25の題材を厳選しています。

身近で学びやすいモチーフで、楽しくレッスンを重ねるうち、まるで「世界とつながっている気分」になれるスマートフォンや、思わず「寝ころがって読みたくなる」本が、描けるようになるでしょう。そして、いつのまにか「絵が上手い人」と言われるようになっているはずです。

これまで「絵が苦手」「絵が下手」と思ってきた人にこそ、「誰でも、どこでも、気軽に、限られた時間で」学べる「キスラー流30分方式」を試していただきたいのです。

「上手に描けた!」という励みがあれば、「もっと絵が描きたい!」「絵を描くのが楽しい!」「これからも絵を描きつづけよう!」と思えます。

「30分方式」を学ぶことで「『絵が描けた!』という達成感」を積み重ねて、たくさんの人に「絵を描く喜び」を感じてほしいと、「キスラー式メソッド」の開発者として、私は強く願っています。

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提供元:「絵が下手な人」と「上手い人」、ただ2つの決定的差|東洋経済オンライン

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