2022.01.14
寝台特急サンライズ、出雲へ行く場合の「ウラ技」|岡山まで瀬戸のシングル、「やくも」に乗り換え
サンライズの個室でまったり過ごすのがなによりの楽しみ(画像:筆者作成)
鉄道を知るのは難しい。13年前、私が鉄道好きになったばかりの頃、電車と気動車の違いがわからずに、鉄道マニアの方に呆れられたことがある。
小さい頃から鉄道に慣れ親しんだ者ならともかく、そうでない身にとっては、その違いを明確に言葉にすることができなかったのだ。
もともと周りに鉄道仲間がいたわけではなかったので、それ以来、わからないことにぶつかると、自分で調べて解決していた。年月が過ぎてから、ようやく理解したことも多々ある。
最近刊行した自著『やすこーんの鉄道イロハ』は、もしも13年前にこの本があったら、どれだけ助かったか……といった内容を、当時の自分を思い出しつつ綴った本だ。
そんな中で、特に個人的な想い入れたっぷりで描いた項目が「寝台特急サンライズのイロハ」である。
サンライズに16回乗車
寝台特急サンライズに15回乗車したことについては、2020年8月16日付記事(女子に人気、寝台特急「サンライズ」の魅力とは)でも書いた。そして昨年、ついに16回目の乗車を達成した。ただしこれは今までの15回とは違う、イレギュラーな乗車方法だったので、そのことについてお話したいと思う。
サンライズの車両編成(『やすこーんの鉄道イロハ』より)
まず寝台特急サンライズについて軽く説明しよう。サンライズは現在唯一定期運行される夜行列車で、出雲市行きのサンライズ出雲7両と、高松行きのサンライズ瀬戸7両が連結し、東京—岡山区間を14両で走行する。それらは岡山でそれぞれ分離(または連結)され、終点の駅へと向かう。
例えば旅の目的が出雲大社への参拝だとしたら、東京からサンライズ出雲に乗車して、終点の出雲市駅まで向かうのが普通だろう。はたまた讃岐うどん巡りに行きたいと思ったら、高松が終点のサンライズ瀬戸に乗車すればいい。
もちろん途中での乗り降りもできる。以前友人と乗った時は米子で降りて境線に乗り換え、妖怪ロードに行った。逆に上りだけ停車する大阪駅からは、東京まで寝て帰るために何度となく利用した。
さて、16回目の今回は、ひさしぶりに出雲大社にお参りに行こうという気になり、これもひさしぶりに1カ月前の10時にみどりの窓口へ行ってみた。
シングルデラックスは部屋の中に洗面台やデスクがあり、ホテルとほぼ変わらない (『やすこーんの鉄道イロハ』より)
狙うはA寝台1人用個室の「シングルデラックス」。ただし1編成に6室しかないので、取れなかったら大好きなB寝台1人用個室「シングルツイン」を取ればいい、と気楽に考えていた。
実は乗車する日、私は今年立ち上げたばかりのYouTubeチャンネル「おんな鉄道ひとり旅」で、出発直後の個室から初めての生配信をするつもりだった。せっかくなら広い部屋のサンライズ個室を紹介しつつ、優雅にワインでも飲みながらおしゃべりしよう……と思っていたのだ。
ところがなんと、取れたのはB寝台1人用個室の「ソロ」。びっくりした。1カ月前の10時打ちで「シングル」さえ取れないなんて、つゆほども思わなかった。そうこうしているうちに、ソロもすぐ売り切れてしまった。
どうやら最近は、コロナのこともあり、安全だと思われている個室が大人気だそうだ。しかもタイミング悪く、私が希望した金曜夜の出発は申し込み多数で、なかなかきっぷが取れないらしい。
逆に、以前は真っ先に埋まっていた、寝台料金のいらない「ノビノビ座席」のほうが、まだ余裕があるという。
ならば日にちを変えればいい、と思われそうだが、生配信のお知らせを雑誌でしっかり告知してしまったので、日にちをずらすわけにいかない。
ソロとシングルの価格差は1000円だが…
個室が取れただけいいか……と思おうとしたが、大量の荷物や機材を持っていく私にとって、これはなかなかの試練だ。
ソロとシングルで料金は1000円しか変わらないのだが、トランクが置けるスペースがベッド横にあるかないかは、かなり大きな違いがある。
鍵付きの個室で一番安く移動したいという場合にソロはよいが、今回ばかりは違った。
シングルは最も部屋数の多い個室。2階の海側がおすすめだ (『やすこーんの鉄道イロハ』より)
どうにもあきらめきれない私は、ふとサンライズ瀬戸が空いていないか聞いてみた。シングルデラックスとシングルツインは埋まっていたが、シングルはまだまだ余裕があった。
そこで私はサンライズ瀬戸側のシングルを岡山まで買うことにした。岡山からは、まだ空いているサンライズ出雲のノビノビ座席に乗り換えればいい、と思ったのである。
ここでその乗り換えを疑問に思われた方に説明すると、サンライズ出雲とサンライズ瀬戸は、連結して走るものの、別々の特急列車だということが前提にある。つまり最初にサンライズ瀬戸に乗車して、途中からサンライズ出雲に乗り換え、ということが可能なのである。逆もまた然り。
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ただしそのように乗車する場合、乗車券の料金は同じだが、特急料金はそれぞれ別で支払わなければならない。ノビノビ座席への乗り換えは寝台料金はかからないが、個室1つを終点まで通して使うより、料金がかさむのである。
ところが結局、サンライズは、サンライズ瀬戸のシングルを岡山まで利用するのみとなった。つまりノビノビ座席への乗り換えをやめた。というのも、その後すぐに「JR西日本 どこでもきっぷ」というお得なきっぷが発売されたのだ(2021年12月17日で発売終了)。
このきっぷはJR西日本全線、智頭急行線全線の自由席、JR西日本宮島フェリーが乗り放題なうえ、普通車指定席も6回まで利用できる。出雲市まで行ってから、さらにJRであちこち移動しようと計画していた私にとって、このきっぷは大変使い勝手がよかった。
「やくも」との組み合わせを満喫
なのでサンライズは乗車券含めて東京から岡山までを買い、そこからは「JR西日本どこでもきっぷ」を使って、「特急やくも」に乗り換えることにしたのだ。このきっぷで岡山から先の乗車券・特急券をまかなうわけである。
せっかくなので、普通車指定席の6回指定できるうちの1回分をここで使用した。もちろん特急やくもへの乗り換えは特別なきっぷを使わなくても通常料金を支払えばできることである。
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サンライズ瀬戸、サンライズ出雲が岡山で切り離され、両方を見送ったのも初めてでワクワクした。しかもサンライズ出雲が岡山を6時34分に出発し、出雲市に到着するのが9時58分。後を追う特急やくも1号が岡山を7時5分に発車し、出雲市に到着するのは10時10分と、たった12分しか違わない。
つまりこの差を許容できれば、サンライズ出雲が満席だったからといって、出雲市まで行くのをあきらめなくてよいのである。
サンライズを見送った私は、岡山駅の券売機で悠々と「どこでもきっぷ」を受け取り、余裕で駅弁を選び、空いている車内で宍道湖を見ながらのんびりとそれを食べた。ちなみについ最近発売された「JR西日本 中国エリアどこでもきっぷ」は、寝台特急サンライズには使えないので注意が必要だ。
まだまだ世の中には私の知らない乗車のウラ技があるに違いない。鉄道を知るのは難しい。されど鉄道は楽しい。そう感じつつ、今日も日々勉強中である。
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提供元:寝台特急サンライズ、出雲へ行く場合の「ウラ技」|東洋経済オンライン