2021.11.12
超簡単!ビニール傘が「盗まれにくくなる」方法|強制せずに人の行動を変える「仕掛け」を学ぼう
あおじる / PIXTA
「おもちゃで遊んだら出しっぱなし」「ごみ箱にごみをちゃんと捨てない」「玄関でくつをそろえない」など、子どもの生活習慣、整理整頓面での親の悩みは尽きません。
「やらないとおやつ抜きだよ!」などと、ついつい罰を与えるようなやり方で子どもを動かそうとしがちです。
『松村式 子育て仕掛学』では、“親がガミガミ言わなくても、子どもが自分から動きたくなる楽しい仕掛けが紹介されています。
本稿では、同書から一部を抜粋しお届けします。
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ついつい「避けたくなる」仕掛け
仕掛けは、行動の選択肢を魅力的に見せることでそちらを選びたくなるように誘導するのが基本です。反対に、その選択肢を選ばせない、行動させないことを目的にした仕掛けもあります。
防犯対策に仕掛けが活用されている例をご紹介しましょう。「警視庁」と印刷したシールを自作し、傘の持ち手部分に貼っておくと、警察官の所有物に見えるので盗もうという気持ちは起こらなくなりますね。シールのおかげで「他人の傘だけど持っていこう」という行動が抑制されているといえます。
路地の塀に設置されている小さな鳥居も同じ。多くの日本人にとって鳥居は神聖なものというイメージがあり、神様に見られているような気持ちになります。鳥居のある場所を汚したり、ゴミを捨てたりする行動を慎む行動につながるというわけです。直接注意するのは勇気がいるし、通行人を疑うような看板は設置しにくいですが、小さな鳥居ならネガティブな印象を与えずに目的を達することができます。
人は「○○禁止」と言われても素直に聞き入れられないときがあります。
でも仕掛けを活用すれば、強制せずに人の行動を変えることができるのです。
盗もうという気持ちを抑制するアイデアは、「警視庁」シール以外にもたくさんあります。「呪」シールやにらんでいるような目玉シール、般若のキーホルダーをつければ、持ち主から呪われそうな気がして思いとどまりそうです。自転車の防犯には鳥のフンに似せたシールをサドルに貼ったり、「GPS搭載」シールを貼ったりするアイデアも生まれています。
小鳥居は路地の塀だけでなく、河原や森の茂みの不法投棄を防止する仕掛けとして全国で広まっています。長野県茅野市のある地域では、不法投棄に悩んでいた場所に小さなスフィンクス像を設置したらポイ捨てがなくなったそうです。呪いをかけられそうだと感じるのでしょう。「不法投棄禁止」の看板をおくよりも大きな効果が期待できます。
ついつい「並べたくなる」仕掛け
整理整頓は、しなければならないとわかっているけれど行動に移すのに苦労するもののひとつです。仕掛けの考え方を利用して、思わず手が動いてしまういい方法があります。本棚や机の上においているファイルボックスをきれいに並べたいときは、どのボックスをどういう順番で並べるか一目でわかるようにしておくのです。
ファイルボックスをきれいに並べた状態で、右端から左端まで背表紙にビニールテープやマスキングテープを斜めに貼ります。こうすると、順番どおりにボックスがおかれていないとテープのラインが乱れるため、ラインがそろうように並べたくなるというわけです。
整っていない、そろっていない、あるべき場所にないなど不協和を感じると、それを解消したくなります。これは心理的トリガのひとつ。「そろっていないと気持ち悪い」「きちんと並べ直したい」という心理を利用すれば、整理整頓にとりかかりやすくなります。
「整理整頓をしよう」と言われてもなかなかやる気が起きませんが、テープを1本貼るだけで「線に沿って並べたい」という気持ちが湧いてきます。並べるボックスの背表紙の幅に合わせた紙に絵を描き、カットして貼りつけるのも楽しいですね。背表紙の絵をつなげて1枚絵にし、順番どおりに並べる仕掛けは、漫画の単行本でもよく使われています。
駐輪場で、自転車をきれいに並べて止めてもらうためにも同様の仕掛けが利用されています。地面に線が引いてあると、ついその線に沿って止めたくなるものです。
自転車置き場に白線が引かれていると、その線をまたいだり垂直に止めたりすることはなんとなく気が引けます。何もなければ自転車の向きや間隔はバラバラで乱雑になってしまいそうですが、線があるだけで自転車の流れが自然と整います。通路にはみ出すことなく、人も自転車も出入りがスムーズになっていいことずくめです。
仕掛けには「二重の」目的がある
このように、仕掛けは私たちの日常生活においてさまざまなかたちで機能しています。解決したい問題に楽しくアプローチできるのが、仕掛けの大きな魅力。子育てしていくなかで起こる困り事も、仕掛けで解決・改善できることがたくさんあると私は考えています。
子どもは好奇心旺盛で、何もないところから遊びを作り出す天才。仕掛けの持つワクワク感にいち早く反応し、楽しんでくれるはずです。無意識のうちに常識や一般概念にとらわれてしまっている大人よりも、むしろ子どものほうが高い効果を期待できるかもしれません。
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本稿で紹介している仕掛けはほんの一部にすぎません。世界には仕掛けがたくさんあふれており、仕掛けの可能性は無限大。子どもの年齢、行動パターン、性格などによって好きにアレンジすることができます。
ただし仕掛けを効果的に作用させるには、子どもが人の話を理解できることが前提となります。親子で会話ができる年齢、言葉の意味を理解できる年齢になっていれば、子どもは仕掛けを楽しんでくれるはずです。
仕掛けを自分で作り出すのは難しそう、と思っている人もいるでしょう。まずは街にあふれる仕掛けで、仕掛ける側と仕掛けられる側の両方の目的を考えてみてください。仕掛けには両方の目的が異なるという「目的の二重性」があります。子どもに「○○してほしい」「△△しないようにさせたい」という課題があるなら、それは仕掛ける側の目的。
今度は、その行動や問題に対して子どもの気持ちを想像してみてください。自分ならどんな遊びや声かけで誘われれば行動したくなるかな?と考えてみます。これが仕掛けられる側の目的です。両方の目的を達成できる仕組みや遊びが、よい仕掛けになるのです。
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提供元:超簡単!ビニール傘が「盗まれにくくなる」方法|東洋経済オンライン