2021.09.22
新型コロナの陰で着々と増え続ける「不調」の正体|放置すればあなたも「病気の戸口」に立つことに
終わりの見えないコロナ禍で自律神経に不調を来す人が増加している(写真:elise/PIXTA)
東京都ではすでに4回も発動された緊急事態宣言、次々に出てくる感染力が強い変異株の流行、予約が取りづらいワクチン接種、オリンピックが終わり心にスッと入り込んできた虚無感……。終わりの見えないコロナ禍によるストレスの蓄積で、心身に支障を来している人が少なくありません。
先行きの見えない不安とストレスから、心と体を健康的に保つために、私たちは何を知り、何をするべきなのでしょうか? 『結局、自律神経がすべて解決してくれる』を執筆した順天堂大学医学部教授の小林弘幸医師が解説します。
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終わりの見えないコロナ禍で増大する不安とストレス
昨年1月に日本国内初の感染例が発表され始まった、私たちと新型コロナウイルス(COVID-19)感染症との戦い。今年の9月で早くも1年8カ月となりました。
ウイルス感染症は、感染したことによって身に降りかかる症状への恐怖だけではなく、目に見えない敵との戦いであるからこそ、「自分も感染してしまうのではないか」「知らない間に感染し、誰かにうつしてしまうのではないか」という、不安との戦いでもあります。
そして誰にも予想のできなかった長期戦となったことで、不安がストレスを増大させ、また、自粛を基本とした感染症対策も相まって、実際に外来診療で呼吸の苦しさを訴える患者さんが残念なことにとても増えています。
しかし、念のため熱を測ると平熱で、酸素飽和度も正常値。感染症への恐怖、仕事や経済的な不安、人と交流できない孤独などで体が異変を来しているのです。
この異変を来している原因が、「自律神経」と呼ばれる、私たちにとって非常に大切な神経の不調なのです。
自律神経とは、端的に言えば、あなたの体を自動でちょうどいい感じにしてくれる神経です。自動ですから、普段私たちは意識することはありません。だからこそ自律神経に不具合が生じた場合、気づきにくいとも言えるでしょう。
また、自律神経は変化にとても敏感です。本当にちょっとしたことで簡単にそのバランスは乱れます。
さらに、加齢によって自律神経の力が落ちることもわかっており、男性は30代、女性は40代がそのタイミングです。まさに私も30代で自律神経の不調に悩まされています。
ですが近年、自律神経の力が発展途上の小中学生、高校生などの若い世代で自律神経のバランスを崩す症例が増えています。
起立性調節障害(OD)と呼ばれるものです。
代表的な症状としては、朝起きられない、ひどくめまいがする、頭痛や腹痛がする、心拍数があがる、などが挙げられます。
これらは実は、周囲から誤解を受けやすい状況です。
学校に行きたくないから「仮病」を使っているのではないか、いわゆる「サボり癖」がつき始めているのではないか……などなど。そう思うと、つい「教育的に」強く当たってしまい、さらに本人を追い込んでしまいかねません。
まず、起きられない、急なめまいに襲われることがある、血圧や心拍数が安定しないというのは、典型的な自律神経の不調のサインです。
とくに中高生くらいの年代は、心身が大人へと変化していく過程にあるわけですから、さまざまな理由で自律神経が不安定になりがちです。
そこにきて、この新型コロナウイルス感染症の蔓延。子どもたちが楽しみにしていた運動会や修学旅行、部活動の大会などの相次ぐ延期や中止。もっと身近なところでいうと、友達になかなか直接会いづらくなったり、マスクやパーティション越しに会話しなければいけなくなった“新しい日常”。
こんな劇的な変化が盛りだくさんの状況で、子どもたちが自律神経を乱さないはずがありません。
それを、生ぬるいとか、気合が足りないなどという考え方で無理に「解決」しようとすればするほど、かえって子どもは追い込まれてしまうのです。
ただし、子どもは親の顔色の変化にとても敏感です。親を心配させたくなくて、無理をしてどうにか家を出ても、学校に向かう途中で座り込んでしまうケースも報告されています。頭ごなしに叱ったりせず、自律神経の乱れを疑うことから始めてみてください。
すべては自律神経から始まる
すべては自律神経から始まる。だからこそ自律神経を知り、整える術を手に入れれば、いま皆さんが感じている不調や病も、きっと遠ざけることができるはず。
私は約20年にわたり自律神経を研究してきた結果として、そう考えています。
自律神経の乱れは、先に述べた起立性障害のような症状だけでなく、とても多くの不調や病気の入り口です。
例えば、疲れやすさ、めまい、不眠、不安、冷え、頭痛、耳鳴り、動悸、関節痛、便秘、下痢、口や喉の渇き、発汗、気分の落ち込み、イライラ、集中力の低下、そして免疫力の低下など多岐にわたります。
そして近年の研究では更年期障害やがんの発症にも、自律神経が関係していることがわかってきています。
とくに更年期障害では、日常生活に支障を来し、私のところにつらい症状を訴えられて、受診をされる方が後を絶ちません。
東京オリンピックという世界的な行事が終わり、私たちに残ったのは、終わりの見えない新型コロナウイルス感染症との戦い。
慣れないリモートワークや、ストレスのたまる外出自粛要請、人との接触機会の制限、不安が積もり続ける経済状況など、自律神経を乱す要因がいま山積しています。
そんな状況下でもしあなたが、強い不安感を覚えたときに実践してほしい、不安や緊張を解消する呼吸法と、ストレスや怒りをマネジメントする方法を最後にご紹介します。
自律神経を整えるおすすめの生活習慣
不安や緊張を解消する呼吸法
【姿勢】
(1)椅子に座る
(2)背筋を伸ばす
(3)両手で体を包むように腕組みをする(目は閉じても、開いていてもよい)
【呼吸】
(1)両腕で体を抱きしめながら、3秒、鼻から息を吸う
(2)続いて6秒、口からゆっくりと息を吐く
この動作を10回程度繰り返してみてください。緊張や不安が解消され、リラックス効果も得られるでしょう。
心をデトックスする「3行日記」
これは、かつて私がアイルランドに留学していたときに、同僚に教えてもらったアイデアを自分でアレンジし「3行日記」という習慣にしたものです。
次のテーマを毎日の終わりに手書きで書いてみましょう。
・1行目に「今日失敗したこと」
・2行目に「今日いちばん感動したこと」
・3行目に「明日の目標」
以上の3つです。
こういったメモをスマホに入力している方も多いと思いますが、私はあえて手書きをおすすめします。文字を書くこと自体に、1日で揺れ動いた心を落ち着かせ、自律神経を整えてくれる効果があるからです。
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このほかにも本書『結局、自律神経がすべて解決してくれる』は、患者さんと接する中で得た知見、これまで私が研究してきた成果、そして、今や世界中で研究対象となった自律神経の最新研究や情報を集約し、症状の緩和や改善の仕方を紹介しています。
自律神経は簡単に乱れます。だからこそたとえ乱しても、整えられる方法を知っておくことがとても大切です。
病気の戸口に立たないためにも、世代を問わず本書を活用いただき、自律神経が喜ぶ生活を送っていってほしいと願っています。
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提供元:新型コロナの陰で着々と増え続ける「不調」の正体|東洋経済オンライン