2021.08.02
自分が制御できない事を不安に思ってもムダな訳|ビル・ゲイツの的外れな予言が教える未来の見方
どうしようもない「不安」に襲われたときの処方箋とは?(写真:Kazpon/PIXTA)
「新型コロナウイルスの出現によって急激に変わる世の中において、未来を想像して不安がることは意味がない」と語るのは「プレゼンの神」と呼ばれる元マイクロソフト業務執行役員の澤円さん。その理由とは? そして不安に襲われたときにはどうしたらよいのか? 最新刊『「やめる」という選択』から一部抜粋、再構成して紹介します。
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コロナとともにやってきた「一億総不安社会」
一向に収まることのない新型コロナウイルス感染症は、僕たちの「当たり前」を大きく変えてしまいました。以前には考えられなかったさまざまな、そして劇的な変化には、戸惑いとともに不安を感じている人も多いのではないでしょうか。
ここでは、多くの人が抱えがちな「不安」について、お話しします。
僕は、不安という感情に振りまわされないためには、自分が「コントロールできて、かつ重要な部分」に集中することがなにより大切だと考えています。コントロールできないことに振りまわされてしまうから不安が生まれ、埋没コストとして自分を苦しめてしまうのです。
冒頭にも書きましたが、とくに新型コロナウイルス感染症が拡大したのち、自分の将来や仕事について心配したり不安になったり、あるいはいわゆる景気の動向を気にしたりする人が増えているのも事実です。
ただ僕は、景気を気にすることと自分の人生を気にすることはまったく別物だと考えています。景気はいわば天気のようなもので、強い雨が降っているからといって自分の人生が終わってしまうかというと、そんなことはありません。
要するに、天気は天気として存在しているように、景気も景気として存在しているだけととらえているのです。
僕はチームマネジメントに関して、とくに強調したいのが「コントロールできることに集中しよう」ということです。これはアンガーマネジメント(怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング)の概念でもあり、「コントロール可能で重要なこと」にリソースを集中させるのがマネジメントの本分なのです。
コントロールできないことにリソースを割くのはコストであり、はっきりいえば「無駄」です。その部分に集中することでなにか貴重なものを得られるならいいですが、実際は、それこそ景気を気にしたところで、それをコントロールすることはできません。
人生は景気の影響を受けないという意味ではなく、「その影響を気に病むのはバカらしい」ということです。
繰り返しになりますが、大切なのは自分がコントロールできて、かつ重要な部分に集中すること。もしかしたら、そのコントロールできる部分が景気の影響を受けると考えるのかもしれませんが、そんな状況においても、自分の振る舞いを変えることでコントロールできることはないか? 自分のクオリティー・オブ・ライフを上げるためになにができるか? そんな思考と選択が重要です。
ビル・ゲイツは、1981年にこんなことを予言したといわれます。
「パソコンは未来永劫640キロバイト以上のメモリを必要としない」
約40年前、彼は、パソコンは640キロバイトのメモリがあれば、あらゆることができると断言したのです。しかし現在は、64ギガバイトのメモリが、数回のクリックで手元に届く世の中になっています。でも当時は、64キロバイトのメモリを積んだパソコンですら高価なものだったので、その10倍のメモリがあれば……と考えたのでしょう。
ならば、ビル・ゲイツがパソコンのことをよくわかっていなかったのかというと、そんなはずはありません。そうではなく、誰がやるにせよ未来の予測はそれほどあてにならないということです。
当時パーソナルコンピューターの世界のど真ん中にいた人ですら、そんな将来を見通したわけで、そう考えると景気動向をはじめ、コントロールできないことに不安になることにどれくらい意味があるかといえば、およそ専門職の人が職業上必要な程度ではないでしょうか。
僕自身も、今後の景気のおおまかな見通しはある程度自分なりに持ってはいますが、それが当たるか当たらないかは、どうでもいい話だと思っています。
カリスマ経営営学者にも「未来」は見通せない
また、経営学者のピーター・ドラッカーもまた、「未来の予測は無駄である」と指摘しています。
「未来は予見できない。ある程度予測できるという人がいたならば、今日の新聞を見せ、10年前にどれを予測できたかを聞けばよい」(ピーター・F・ドラッカー著『【エッセンシャル版】マネジメント 基本と原則』ダイヤモンド社)
これが書かれたのは1973年。インターネットすらない時代にもかかわらず、彼は未来の予測は無駄だとする予測を言い当てるという、なんとも皮肉な言葉を記しています。
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なにかを予測すると、次はなんらかの計画に落とし込もうとするものです。でも、かの経営学の巨人が、そんなことには意味がないと断言しているのです。
話が少し大きくなりましたが、結局いいたいことは、大切なのは「自分がコントロールできて、かつ重要なこと」に集中することであって、「未来」はそこには含まれない、ということです。
多くの人が、不安にとらわれ、行動に移せずにいるなかで、なにに価値を置いてこれからの時代を生きるのか?
それを見極め、行動に移していくことが、その人だけのオリジナルの人生につながっています。
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提供元:自分が制御できない事を不安に思ってもムダな訳|東洋経済オンライン