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2021.07.01

他人を妬む人がいるのも仕方がない生物学的理由|進化してもイライラや孤独感は捨てられていない


科学的に判明しつつある「社会と心の矛盾」とは?(写真:PanKR/PIXTA)

科学的に判明しつつある「社会と心の矛盾」とは?(写真:PanKR/PIXTA)

イライラしたり、嫉妬してしまったり、なかなか自分の感情と折り合いをつけられないときもあるでしょう。しかし、こうしたマイナスと思われがちな感情を抱くのは、生物学的にしょうがないことなのです。生物学的な視点から、人間が努力してもどうにもならないことと、その理由をまとめた書籍『生物学的に、しょうがない!』から、感情のメカニズムにかかわるパートを抜粋、再構成してお届けします。

イライラしちゃうの、しょうがない!

幼児はイライラするでしょうか? お気に入りのおもちゃが壊れてしまったら、物を投げたり暴れたりしますね。思い通りにならない現実に直面して「だだをこねる」のですが、しばらくすると結構、けろっと元通りになります。

動物も概してこんな感じです。思い通りにならないと、力任せになんとかしようとします。ひと通りやってみて「どうにもならない」と悟ると、諦めて去っていきます。幼児と同様に、イライラとは無縁な感じがしますね。

大人がイライラしがちなのは、幼児のように物を投げたり暴れたりできないからなんです。人間は「動物のように物事を暴力で解決するのはやめよう」と決めたから、子どものような「うっぷん晴らし」はできなくなりました。

しかし、ついこのあいだまで、紛争を解決する主要手段は暴力でした。現代社会のルールでは「暴力なしよ」なのに、私たちの心の備えは「まず暴力をためしてみる」となっているのです。これが、パワハラ横行の理由でもあります。

「暴力なしよ」を実践する私たちは、身体の態勢が暴力向きになってもそれを抑制します。それがイライラの原因です。脳活動が暴力向きに活発化しているのに、身体を動かしてはダメという悩ましい状態なのです。

イライラを止めるには、活発化した脳を沈静化すればよいのです。それには「ため息」が効果大です。息を吐ききると、肺の空気がなくなり、脳への酸素供給が低下するので、活発化した脳細胞に栄養が行きにくくなります。酸素不足の危機を感じた脳が、沈静化に向かうのです。

ただ、部下が思い通りに仕事をしてくれないときのイライラ防止に「ため息」をつくと、これみよがしで嫌な印象を与えかねませんね。そんなときは、長く小さく息を吐くと、周りに知られずにイライラ防止ができます。

さて、現代では新しいタイプのイライラが登場してきました。「紛争解決は暴力ではなく理性で行え」と言われますが、この「理性」を発揮するのにイライラが伴うのです。

理性の発揮には、複雑な物事を論理的に、そしてシステマティックに考えないといけません。そのときに主に使われるのが、額のすぐ裏側にある脳部分「前頭前野」です。この部分は、人類において進化した「もっとも新しい脳」であり、いわば「進化中の脳」なのです。

つまり、現代社会は理性を重視するようになったものの、人間は理性を十分には発揮できないのです。「理性で論理的に考えようとしてもうまくいかない」「感情を理性で抑えようとしてもうまくいかない」などと、イライラが高じます。思ったようにならない生物学的な理由があるので、しょうがないのです。

若者が勉強嫌いになるのもうなずける

にもかかわらず、現代社会では教育によって理性を育てようとしています。若者が勉強嫌いになるのもうなずけます。なにせ、前頭前野は「もっとも新しい脳」であるがゆえに、子ども時代のそれは完成からほど遠いのです。私たちはみな、そして若者はとくに、勉強しようとすればするほど、思い通りにならない自分にイライラするのは仕方のないことです。でも、勉強すると理性が充実していくのも事実です。

この際だから、イライラを楽しんじゃいましょう。イライラするのは、前頭前野に刺激が加わっているということです。理性が発達しているんですから、いいことなんです。新しい趣味や仕事を始めると、思い通りにいかずイライラしますよね。それでも、やがて慣れてうまくこなせるようになります。イライラの先には楽しいことが待っているのです。

「だったら最初からイライラが楽しければよかったのに」と思いませんか。じつは、古い脳が理性を使うのを妨害するからイライラするのです。理性はじっくり考える状態を作るので、身体が無防備になりやすく、警戒すべき状況をもたらします。そこで、過酷な自然環境で進化してきた古い脳は、考える作業は適当に切り上げようと、嫌なイライラを発動するのです。

もはや、危険な状況はほとんどなくなったので、イライラはいいことにしちゃいましょう。

嫉妬がよく見られるのは、弟や妹が生まれた上の子です。母親の愛情や食べ物の分け前が減ると、自分の存在をアピールし始めます。時には甘えを見せたり「幼児返り」を起こしたりします。母親もそれに気づき、上の子の甘えに付き合ってあげたりします。

嫉妬をする目的は、自分に来るはずの資源がほかの人へ行ってしまった状態を回復することです。家族などの血縁関係ならば、たがいに助け合って食料などを共有することも多いので、分け前に不満を抱いて嫉妬する効果は大きいです。嫉妬に気づいた人が、再配分してくれます。

動物にも嫉妬に似た行動が見られますが、基本それらは資源をめぐる戦いです。人間のように嫉妬をアピールして、再配分を促す行為はありません。

嫉妬に効果があるのは協力集団の仲間に対して

人間に嫉妬が生まれたのは、嫉妬が有効に働く生活を送っていたからです。約300万年前から数万年前まで続いた狩猟採集時代の人類は、100人程度の小集団で協力活動をしていました。集団のメンバーは一蓮托生の仲間であり、狩猟も採集もメンバー同士が集まって協力して進めていました。大型動物がとれれば、みんなで公平に分けていたのです。

狩猟採集時代の人類は、こうして公平感や平等感を培いました。嫉妬はその裏返しなのです。嫉妬をアピールすれば「あ、公平ではなかったかな」と配分の是正が生じるのです。つまり、嫉妬に効果があるのは、協力集団の仲間に対してなのです。

ところが、文明社会になって、一蓮托生の協力集団は失われてきました。よくも悪くも個人主義の社会になったのです。だから、自分がもらうはずの賞金を誰かが獲得してしまっても、くやしいけれど「後のまつり」です。

ただ、自分と一緒に活動して、たがいに助け合い、教え合ってきた仲間が賞金を獲得した場合は違います。賞金を獲得した人は、その仲間たちと賞金を分け合ったり、賞金をもとに「これまでの支援に感謝する会」を開いたりする必要があるのです。それをしないで「ひとり占め」をしたならば、嫉妬によって圧力をかけることには意義があります。またそれは、道徳的にも妥当な行為です。

ところが今日では、仲間ではない誰かが「一発当てた」といった成功談がSNSなどを通じてわかる時代です。ふだんからその人のSNSを見て「いいね」などと応援をしていると、仲間意識が生まれますが、自分だけの勝手な仲間意識です。そして、その人が成功したとなると、嫉妬が生まれてしまうのです。

こうした嫉妬は、勘違いです。仲間ではないので、再配分は行われません。文明の時代には、嫉妬の意義がある場面はなくなりつつあるのです。

前項で述べたように、私たちの祖先は100人くらいの小集団で、一生共同生活をしていました。

もちろん夜も一緒に眠っていたにちがいありません。暗闇に乗じて猛獣が襲ってきたら、みんなで一致団結、戦って追い払ったのでしょう。

共同生活には、息苦しい面もあったのかもしれません。集団の掟を守らなければならないし、集団の中で期待される役割を果たす必要もあります。文明社会では、そういった集団のしがらみが嫌われたようで、個人で生活する傾向が強くなりました。

猛獣が襲ってくることもなくなったので、夜ひとりで眠っていても問題がなくなったのも、個人化傾向が強まった理由でしょう。

仲間が一緒にいない夜はとくに寂しく思う

しかし、心の働き方は、文明社会の個人化に順応できていません。依然として夜は危険であると感じるのです。猛獣がいないはずの暗闇に恐怖を感じると、そこに幽霊がいるなどの幻想を抱く人もいます。幽霊は「見知らぬ敵」であり、現代における危険な存在の象徴です。

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『生物学的に、しょうがない!』(サンマーク出版) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

こうして、仲間が一緒にいない夜は、孤独を感じやすく、とくに寂しく思うものなのです。

孤独をやわらげる方策には、幽霊の幻想の代わりに、芸能人の幻想が役立ちます。好きな芸能人のポスターを貼って、夜一緒に寝ているところを想像するのです。すると、孤独感も解消できていきます。

しかし、この想像があまりに強くなると問題です。当の芸能人が結婚するという段になると、自分のパートナーが奪われる気がして、嫉妬を感じたりストーカー行為に及んだりしてしまうのです。適度に想像して、孤独感を防止しましょう。

ただ、夜はよしとしても昼も孤独なのは望ましくありません。私たちの心の働きの多くは、和気あいあいの協力集団向きになっています。これも狩猟採集時代の名残です。1日中人との交流がなければ、心の疾患を抱えやすくなります。

夜孤独なのはしょうがないとしても、昼の活動は仲間と一緒にわいわい楽しくしたいものです。

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提供元:他人を妬む人がいるのも仕方がない生物学的理由|東洋経済オンライン

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