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2021.06.18

路線バスで巡る「レトロな横浜」のんびり日帰り旅|バラ園に氷川丸見学、意外と知らない街の一面


毛利孝夫 / PIXTA

毛利孝夫 / PIXTA

この記事の画像を見る(7枚) ※外部サイトに遷移します

街の店先や集落の軒先をゆっくりと走る路線バスには、その土地のなにげない日常に出合える魅力があります。

しかし、複雑な運行系統、運賃や乗降方法のわかりにくさなどから、自分らしい旅を楽しむシニアでもバスを敬遠する人は多いようです。

新著『シニア バス旅のすすめ』では、観光地をめぐる定番コースから、一日乗車券を活用した日帰り旅、個室完備の高級バスで行くワンランク上の上質旅まで、シニアも満足のさまざまなバス旅を紹介しています。

本稿では同書から一部を抜粋しお届けします。なお、本稿の情報は同書執筆時点のものであり、現在は異なる場合があります。

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あかいくつ(横浜市交通局)で横浜を散策

横浜市民の暮らしを支える市営バスは、観光客にとっても欠かせない存在だ。昔の路面電車をイメージしてつくられたレトロなバスが、桜木町駅を起点に市の中心部の見どころを循環している。春バラが香る季節、フリー切符を片手に港ヨコハマを散策した。

JR桜木町駅南改札を抜け、左手にあるバスターミナルへ。「あかいくつ」は4番乗り場に発着する。ダイヤは、平日が10時08分から17時08分まで60分間隔、土日祝日が10時10分から18時20分まで、大半は20分間隔となっている。

桜木町駅前11時08分発の便に乗車。運転士から直接「みなとぶらりチケット」(大人500円)を購入する。横浜市中心部の市営地下鉄と市営バスが一日乗り放題というお得な切符である。車内を見回すと、レンガ調の内装とワインレッドのシートが、外観にもましてレトロな雰囲気を醸し出している。

バスは馬車道駅前を過ぎて左折。万国橋を渡ってハンマーヘッドへ。車内モニターの映像と案内放送で、バス停周辺の見どころを紹介している。赤レンガ倉庫から新港橋を渡り、横浜税関(クイーン)、神奈川県庁(キング)、横浜市開港記念会館(ジャック)の横浜三塔を見上げたあと、「ローズホテル横浜」の前にある中華街バス停で降りた。

横浜中華街を走るあかいくつ

横浜中華街を走るあかいくつ

バス停後方すぐのところにある「重慶飯店本館」で早めの昼食をとる。平日限定で8種類用意された週替わりランチから「豚肉の角煮」を選び、オプションの「ミニ麻婆豆腐」もつけてもらう。「みなとぶらりチケット」の提携施設の一つで、提示すると食事代が1割引になるが、ランチメニューは対象外である。超高級店から庶民的な店までが軒を連ねる中華街だが、ビジネスマンの姿も見られる「重慶飯店本館」は、手軽に本格中華が楽しめる店の1軒と言えよう。

重慶飯店本店のランチ

重慶飯店本店のランチ

港の見える丘いっぱいに広がるバラの香り

中華街大通りの活気を少し楽しんだあと、中華街バス停から12時29分のバスに乗車。元町入口から谷戸坂を上りきった港の見える丘公園前で降りる。

1859年の開港以来、外国人居留地だったというこの高台。戦後、接収が解除されると、公園用地として整備され、1962年に「港の見える丘公園」が開園した。その名のとおり、展望スペースからは横浜港が一望でき、純白の主塔の横浜ベイブリッジが美しい。

景観もさることながら、園内いっぱいの甘い香りに魅せられる。ちょうど春バラの季節なのだ。バラが横浜市の花となってから2年後の1991年、およそ110種、1300株が花を咲かせるバラ園が完成。2016年に「イングリッシュローズの庭」としてリニューアルされたそうだ。園内には色鉛筆画を描いているご婦人の姿もあり、この季節はシニアのカルチャースポットとしても人気のようだ。

公園内では「横浜市イギリス館」も公開されていた。1937年に英国総領事公邸として建てられたもので、その大きさと贅沢な建築素材に、当時のイギリス王室の威厳が感じられた。2階の展示室の窓から公園を見下ろすと、咲き乱れるバラが実に彩り豊かである。イギリス館の隣の噴水広場は、ここで折り返す「あかいくつ」の転向場所になっている。ヨーロッパ調の噴水とレトロなバスが、とてもよく似合っていた。

イングリッシュローズの庭

イングリッシュローズの庭

バス停に戻り、13時38分発の「あかいくつ」をつかまえる。バスは元町入口まで戻ると、Uターンするような形で海岸方向へ進む。山下橋を右手に見て左折し、「山下公園」の緑に沿って走る。左手に「マリンタワー」がそびえているが、2022年春までの予定で改修工事中である。そこで「日本郵船氷川丸」を見学するために、一つ先の山下公園前バス停で降車ボタンを押した。

氷川丸は、1930年に日本郵船が建造した貨客船である。シアトル航路に就航し、30年の間に太平洋を254回横断した。「山下公園」に係留保存されたのは1961年というから、先ほどの「港の見える丘公園」の開園とほぼ同じ時期ということになる。

入館料(一般300円/「みなとぶらりチケット」提示で250円)を払い、まずはBデッキに乗船する。一等食堂のテーブルには、ローストビーフや赤ワインなど一等船客のメニューが再現されている。一つ上のAデッキには、一等客室と一等社交室がある。社交室はダンスパーティーの会場だったという。各部屋には優雅なアール・デコの装飾が施され、昭和初期の華やかな客船文化を知ることができる。この船で太平洋を越えたのは、どんな人たちだったのだろう。

氷川丸の一等客室

氷川丸の一等客室

最上階の操舵室と船長室、船底の機関室も見学する。竣工当時のまま残るエンジンは、貴重な産業遺産として評価されているそうだ。

ベイサイドブルーも

山下公園前をブルーメタリックの長い車体の連節バスが通過する。横浜市営バスが2020年の夏に運行を開始した「ベイサイドブルー」だ。横浜駅からみなとみらい地区を経由して山下ふ頭まで30分間隔で往復しており、通勤と観光、双方の足として、次第に利用者が増えつつある。

Ryuji / PIXTA

Ryuji / PIXTA

山下公園前14時45分発の「あかいくつ」で出発。バスは開港広場で右折し、「横浜港大さん橋国際客船ターミナル」に寄り道する。この便の運転士は〝おもてなし〟の精神がいっぱいのようで、既成の案内放送のあとに、タイムリーな耳より情報を聞かせてくれる。大さん橋では入港する豪華客船の予定のあと、「7月のスパークリング花火の日には、プレミア観賞席になりますので、皆様ぜひいらしてください」とつけ加えた。

生まれ変わった赤レンガ倉庫

開港広場に戻り、海岸通りを横浜税関前まで行く。新港橋を渡り、再びやってきた赤レンガ倉庫前で降りる。「横浜赤レンガ倉庫」は明治政府が保税倉庫として建設したもので、1980年代には役割を終えて次第に荒廃していく。しかしそのレトロな雰囲気から、日本テレビのドラマ『あぶない刑事』のロケ地になると、にわかに注目されるようになった。

1990年代には周辺地域とともに再開発が進み、2002年に複合施設「横浜赤レンガ倉庫」へと生まれ変わった。入居しているのは、コスメやアクセサリー、ファッション、輸入雑貨などを扱うおしゃれな店舗である。

gandhi / PIXTA

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そんななか「和カフェ」の文字を見つけ、2号館3階の「chano‐ma」で休息をとる。この店は壁のレンガ、天井の鉄骨や配管をむき出しにして、あえて倉庫らしさを演出していた。壁ぎわの「ベッド席」がユニークで、客たちはクッションにもたれ、足を投げ出してくつろいでいる。「黒蜜ときなこのパフェ」を注文し、ほど良い甘さで街歩きの疲れを癒した。

赤レンガ倉庫前から15時57分発のバスで帰途に就く。「あかいくつ」は、開港以来の歴史と文化のなかで、〝新しいヨコハマ〟にも出合える、楽しい時間が過ごせるバスだった。

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提供元:路線バスで巡る「レトロな横浜」のんびり日帰り旅|東洋経済オンライン

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