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2021.06.17

「問答無用の転勤」に社員たちが突きつける"NO"|従来通りのやり方では会社は立ちゆかない


近年、転勤を拒否して辞める社員が徐々に増加している(写真:Elnur/PIXTA)

近年、転勤を拒否して辞める社員が徐々に増加している(写真:Elnur/PIXTA)

エン・ジャパンが行った「転勤」についてのアンケートによると、転勤は退職を考えるきっかけになるとの回答が6割超にものぼりました。

「本社から地方の支店に転勤」「支社から別の支社に転勤」などさまざまなケースがありますが、会社から命じられたら社員は拒否できるものではない……というのがこれまでの多くの日本企業における独特の“風習”でした。

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多くの場合、1カ月ほど前に転勤の内示があって、数週間前に正式な辞令が出るのが一般的です。ただ金融機関など、1週間程度で転勤を強いられる慣習がある業界もあります。

ところが近年、転勤を拒否して辞める社員が徐々に増加し、制度としての問題点があらわになってきています。

先ほどの調査では、若手になるほど反発が大きいようです。「転勤なしという触れ込みで入社したにもかかわらず、転勤の辞令が出た」「親の介護で自宅から通えないと厳しいと人事部に伝えていたのに、地方転勤をすることになった」など、退職しても仕方ない状況に追い込まれる人は少なくありません。

近年、各企業の人事部の方から、転勤が原因で退職する社員が増えないように苦慮しているとの話をよく聞きます。ただ、転勤自体はゼロにはなりません。全国に拠点がある会社は人材を配置して運営せねばなりませんし、社員個人の適性と能力を活かす、適材適所を考えるという点でも、転勤自体すべてなくすべきとも言い切れません。

いったい会社と社員はどのように折り合いをつければいいでしょうか。

転勤したくない社員たち

いまの職場に不満があって、環境を変えるため転勤や異動をしたい人も中にはいます。嫌な上司と離れたい、激務の職場に嫌気がさしたなど、理由はさまざまです。しかし、それは多数派ではありません。各種調査を眺めていくと、6~7割の人が転勤したくないと考えているようです。

会社側もある程度はそれをわかっていて、家賃補助が出るとか、昇進・昇給につながるとか、単身赴任手当があるなど、そうしたメリットを示してきました。多くの人はその条件と引き換えに、転勤を承諾してきたのです。

筆者も、かつて上司として転勤の辞令を伝えたときに、転勤したくないと抵抗する部下に何人も遭遇しました。

多くの人は、転勤先での仕事で成長機会があるとか、新しい職場が大いに期待しているなど前向きな状況を説明することで、なんとか承諾してくれました。一方で数名、納得できないと退職してしまったケースも出てしまいました。

転勤が決まっていた社員が退職すると、会社側、人事的には大変なことになります。転勤先で欠員になるので、かわりに誰かが転勤する必要がありますが、すでに人事が確定していますから、新たに候補者を探すのは簡単ではありません。場合によっては人事異動の大幅な見直しになることさえあります。

そのため、会社として転勤の辞令を伝えてからの退職は極力避けたいと考えます。そこでこれまでに各企業で行われてきたのが「打診」と呼ばれる「もし転勤の内示が出たらどうする?」という質問を何気なくぶつける方法です。

例えば、九州に新しい支社を作る予定で、新年度には3名の若手社員を転勤させる必要があり、その候補者に部下の1名があがっていたとしましょう。転勤の内示を出したあとに退職とならないように「そういえば、地方勤務もいいな?と言っていたけど、いまも同じ考えなの?」とカジュアルな会話を装って本心を聞き出したりするのです。ここで「介護している家族がいるから転勤は無理です」と言われれば、転勤は本人にとって困難な事態で、会社側も避けたほうが安全です。こうした打診により、辞令が出た後の退職を避ける工夫がされてきた会社が相当にあるのではないでしょうか。

しかし、さまざまな調査でわかるように、そもそも転勤をしたくない人が増え、従来のやり方で乗り切るのは難しいでしょう。

今後考えるべきは、転勤したい人、したくない人を、もっとしっかり分けることです。具体的には、転勤希望の社員と転勤は拒否する社員が同じ雇用形態でいいのか、ということです。

刻々と変化する環境

こうした発想が広がり、転勤の可否を雇用形態で「見える化」する会社が増えました。厚生労働省の調査でも約2割の企業が勤務地限定の社員制度を導入。転勤が可能な雇用形態の社員は人事としても転勤が退職につながるリスクがないと考えて辞令を出すことができます。

加えて、各社員のおかれた環境は刻々と変わります。子供の学校の問題から転勤ができず、転勤不可の社員として勤務していたが、子どもが大学を卒業して社会人になったので転勤が可能になった。そこで転勤が可能な社員に転換するなど、雇用形態も自在に転換できるようにすることで転勤可能な人材を確保することができます。

人事部としては転勤が可能な人材をできるだけ多く確保したいと考えるもの。そこで、定期的に働き方に関する意向を社員に確認して、その意向を前提とした柔軟な転換をすすめていくべきでしょう。

ただし、現状は、こうした柔軟な働き方に人事制度が対応していない会社が大半です。そもそも問題は転勤に限りません。勤務地や勤務時間など、制約がある社員も同じ人事制度上でキャリアを設計するのはあまりに無理があります。

広がる雇用形態の「見える化」

転勤もどんどん受ける側からすれば、仕事に人生の大半を捧げながら、制約があり配慮された社員と同じ処遇であったとすれば、それはそれで不公平感を抱くことになりかねません。

その点、雇用形態である程度明確に違いを「見える化」すれば、社員の不満はケアできます。一方で会社側にはなぜ、処遇面でそれだけの差をつけるのか、差をつけないのかといった、説明責任が求められることになります。複数の勤務形態に対応した等級・評価・報酬制度を準備する必要が出てきます。

そうなると会社が長年使ってきた人事制度は大幅に改定する必要が出てきます。新人事制度では、全社員がどの雇用形態で勤務するのか。本人の意向と会社の意向にギャップがあった場合に調整をする必要も出てきます。

転勤可の社員が少なかった場合には、現地で新規採用する必要も出てきます。これまではこうした手間やコストを考えて、働き方の違う社員が暗黙知的に勤務してきたのですが、それが限界を超えつつあり、これからさらに多くの会社が対応を迫られることになるでしょうし、それをしないと採用や人材の定着で苦戦することにもなるかもしれません。

こうした流れの中、金融機関のように転勤が当たり前と考えられてきた業界でも変化に対応する動きが出てきました。転勤だけでなく、勤務時間や勤務場所などでも勤務形態を分けて見える化する動きはこれからも加速していくと思われます。一方、新卒採用の大半は総合職として採用し、こうした細かな面には対応が追いついていません。このあたりの不整合をどのように整えていくのかが、今後の課題として続きそうです。

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人手不足は「労働条件が酷い」会社の泣き言だ

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提供元:「問答無用の転勤」に社員たちが突きつける"NO"|東洋経済オンライン

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