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2021.06.07

Apple Watchで「心電図」取れる事の重大な意味|アプリ経由で「慶応病院」に診断してもらえる


Apple Watch Series 4、Series 5、Series 6搭載の「心電図計測機能」と連携した慶応義塾大学のアプリでできることとは?(筆者撮影)

Apple Watch Series 4、Series 5、Series 6搭載の「心電図計測機能」と連携した慶応義塾大学のアプリでできることとは?(筆者撮影)

2019年12月、アップルCEOのティム・クック氏が来日した際、慶応義塾大学病院を訪れたときのことは、週刊東洋経済プラス(アップルのティム・クックCEOが慶応病院に行ったワケ)でお伝えした。

アップルのティム・クックCEOが慶応病院に行ったワケ ※外部サイトに遷移します

クック氏は、Apple Watchを心疾患の診断に応用する取り組みを行ってきた慶応義塾大学病院特任講師の木村雄弘氏とApple Watchの医療領域への貢献の可能性について話し合い、このムーブメントを先に進めるためにも、まだ日本では認可されていなかったECG(心電図検査、アメリカでは2018年発売のApple Watch Series 4から利用できた)計測機能を可能な限り速やかに日本でも利用できるようロビー活動を続けると約束した。

その成果が表れるまでに時間がかかったが、今年1月22日にECG計測機能が日本で利用可能になると、2月1日にはECG計測機能と連動する心房細動の診断を研究するためのアプリ「Heart Study AW」が慶応義塾大学からリリースされた。

「Heart Study AW」 ※外部サイトに遷移します

アメリカの臨床試験には42万人が参加

Apple Watchを用いた臨床試験プログラムはアメリカで先行して開始されており、2019年から開始されている心疾患に関する臨床試験には42万人が参加した。

不整脈などをもたらす心房細動などを診断するには、異常を被験者自身が感じているときに心電図を取らねば正確な診断ができない。しかし患者が発作を起こすタイミングは、必ずしも心電図を記録している時間帯と一致しているわけではない。これこそが心疾患についての診断を難しくしている部分だと木村氏は以前、話していた。

Apple Watchを用いた臨床試験は、患者が異常を感じたとき、その場でApple Watchを操作するだけでECGを計測。そのままかかりつけ医などに連絡する機能を利用したものだ。

睡眠時の記録と問診を7回送信することで臨床試験に参加できる(写真:慶応義塾大学)

睡眠時の記録と問診を7回送信することで臨床試験に参加できる(写真:慶応義塾大学)

ただしアメリカで行われた最初の臨床試験では意外なことがあった。心臓に問題を感じたユーザーがECGを計測して送信しても、心疾患が確定するわけではない。アメリカでの臨床試験で、本人が異常を感じてECGを計測、送信したケースでも実際に心房細動だと診断できたのは34%にすぎなかったという。

ではApple Watchによる心電図診断機能は有益ではないのだろうか?

実はそれほど単純な話ではない。そもそも病院での心電図計測においても、確実に病状を診断できるだけの計測結果を集めるには時間がかかる。

「心電図は症状を感じないときに計測しても意味がありません。なぜなら異常が起きていないとき、心臓は正常に動いているからです。いつ起きるかわからない心房細動が起きたそのときに、心電図を計測できる環境が重要なのです。年に一度の健康診断では異常を見つけることはできません」(木村医師)

このため、心疾患が疑われる場合は病院に一定期間入院し、つねに心電図を取り続けるか、あるいは取り外しができない計測器を胸に付けたまま心電図のデータを取り続け、後から分析するといった手法にならざるをえず、診断まで時間がかかり、コストも高かった。

しかし、Apple Watchがあれば、いつでもどこでも、異常を感じたその場で心電図を記録、送信できる。

ヘルスケアアドバイザーのような機能

日本でのECG機能認可に合わせて慶応義塾大学がアプリベンダーのアツラエと共同開発したアプリは、アメリカでの臨床試験アプリをそのまま後追いしたものではない。アップルが用意しているHealthKitと呼ばれるヘルスケアデータを扱うための仕組みを利用してはいるが、コンセプトは特徴的なものだ。

Heart Study AWでは臨床試験参加者に、1クール7回(毎日である必要はない)の睡眠記録を求め、起床時の体調や前日の飲酒の有無など簡単な質問を記録。睡眠記録機能はApple Watch標準の機能を用いるが、そのデータを元に簡単な睡眠へのアドバイスを送る。

すなわち、その日の体調記録と睡眠記録に対してアドバイスを送る簡易的なヘルスケアアドバイザーのような機能が与えられている。

心電図を記録、送信すると、アドバイスが得られる(筆者撮影)

心電図を記録、送信すると、アドバイスが得られる(筆者撮影)

そのうえで、動悸を感じることがあればHeart Study AW内からApple Watch Series 4、Series 5、Series 6が持つECG検出機能を用いて心電図が取られる。

毎日の体調記録と睡眠記録、それに動悸を感じた場合の心電図は、アップルを経由せず、慶応義塾大学病院に送信される。

幅広く誰もが臨床試験への条件に同意するだけで参加できるため、多くの人に参加してもらえるのが利点となるだろう。通常の臨床試験では、同意書類も多く、また心電図の計測器がある場所まで来てもらう必要もあるなど、参加には一定のハードルがある。

しかし、ECG計測が可能なApple Watchを持っている人ならば、iPhoneで同意するだけで簡単に参加できるため、より幅広く多くの参加者が見込めるわけだ。

一方で参加者の幅が広がることで、実際に心疾患であると診断できる心電図データの割合は減る可能性が高い。この点に関して木村医師は「心房細動の疾患があると診断されている患者さんとのデータを比較することで、その相関を見ることができます」と話す。

慶応義塾大学病院は、前出のアプリとは別に、心房細動患者向けの専用アプリを用意し、同大学病院の患者から得られるデータと一般向けアプリから集まるデータの差分を比較。睡眠記録や問診結果などから、生活習慣や時間帯、睡眠状態などと動悸計測の相関性をとる。

一般ユーザーと診断が確定している患者。それぞれの生活習慣と心房細動を検出できる心電図が取れるタイミングが見えてくれば、心疾患の診断手法に新たな常識が加わるかもしれない。

センサーの進化がヘルスケアの世界を広げる

慶応義塾大学病院の事例は、バイタル(生体反応)を検出するデバイスが、必ずしも医療グレードである必要性がないことを示している。Apple Watchに限らず、デバイスの搭載するセンサーの能力や特性が把握できているなら、より幅広く利用されているデバイスから情報を集めるほうがいい。

例えば睡眠記録を取得するためのリストバンドは、学術研究用に均質なデータが取得できるよう、医療グレードの標準デバイスが定義されている。すべての研究者が同じ条件でデータを扱えるようにするためだ。当然ながら、一般利用者が自ら購入するようなものではない。

一方で標準デバイスは高価であり、多くのデータを集めることは難しい。

今回の取り組みは、そうしたジレンマのバランスを上手に取っている。単一の企業が開発するApple Watchというハードウェアは、確かに医療用計測機器と同じではない。例えばApple Watch Series 6から盛り込まれた血中酸素飽和濃度(SPO2)の計測を試みる機能について、日本では「血中酸素ウェルネス」という名称を名乗るにとどめている。

手首に巻くデバイスから得られるバイタル値への限界なども議論されるところだが、木村医師は「同じデバイスから安定した多くのバイタル値が得られるならば、絶対値としての精度は大きな問題ではない」と、臨床試験参加への門戸を広げることができるスマートウォッチ活用の意義について話した。

次期Apple Watchの噂

今後登場するだろう、新しい世代のApple Watchには、新しいバイタル値を計測するセンサーが搭載されるという噂もある。計測できる値は必ずしも医療グレードではなく、あくまでも健康状態を知るための参考値の場合もあるかもしれない。

しかし、その利用者が極めて大きな数になれば、生活習慣や他のバイタルとの組み合わせで有意な情報として活用できる例も出てくるだろう。

2019年12月に来日したアップルCEOのティム・クック氏(右)と慶応義塾大学病院特任講師の木村雄弘氏(筆者撮影)

2019年12月に来日したアップルCEOのティム・クック氏(右)と慶応義塾大学病院特任講師の木村雄弘氏(筆者撮影)

アメリカ時間の6月7日から、アップルはWWDC(世界開発者会議)をオンライン開催する。例年、その年の秋にリリースされる新しい基本ソフトが紹介されるが、各デバイスの新しい活用方法なども広くアナウンスされる見込みだ。かつては臨床試験へのApple Watchの活用やその広がりが訴求された場でもある。

木村医師は「心房細動を検出する医療機器の開発につなげるには大きな壁もある。しかし自動的に診断を下すような装置、アプリの開発は困難であったとしても、日々の生活を見守り、習慣の問題について気づいてもらうことは可能だ。必ずしも医療グレードの製品やサービスが必要なのではなく、ヘルスケアやウェルネスといったより簡素なレベルの数値でも研究には役立つ」と、さらなるアプリ開発や研究への意欲を話した。

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提供元:Apple Watchで「心電図」取れる事の重大な意味|東洋経済オンライン

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