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2021.05.24

「この人、話しにくいなぁ」は相手に伝染している|「雑談はしなくていい」と言える心理学的理由


雑談にプレッシャーや気まずさを感じていませんか? その気持ち、相手にも伝わっているかもしれません(写真:mits/PIXTA)

雑談にプレッシャーや気まずさを感じていませんか? その気持ち、相手にも伝わっているかもしれません(写真:mits/PIXTA)

雑談に苦い思い出がある人は少なくない。接点の少ない人と2人きりになり、話題を出しても会話が続かなくて気まずい……。このような人は「自分は雑談が苦手」と思っている一方で、「雑談をしなければ」とプレッシャーを感じている。この悩みに対して、「雑談は無理にしなくていい」と回答するのは『ストレス0の雑談 「人と話すのが疲れる」がなくなる』を上梓した、精神科医・産業医の井上智介氏である。その理由を同氏に聞いた。

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あなたのストレスは「雑談の誤解」が生みだしている

私は精神科医や産業医の立場で、多くの人の悩みを聞いてきました。その中でも、次のような相談をよくいただきます。

「どこの部署に異動しても、会話が続かないから、うまくなじめず職場に居場所がありません」

「営業の仕事で、盛り上げようと雑談をすると、いつもとんでもない空気になって、仕事がストレスです」

これらの人に共通しているのは、「雑談が苦手」と思っていることです。

あなたも、初対面の人と会話を始めたものの、二言くらいで終了してしまって、そのあとに沈黙が続いたことがあるのではないでしょうか。通勤中に接点が少ない先輩社員と駅で出会ってしまい、会社に到着するまで、気まずい雰囲気だった経験もあるのではないでしょうか。

このような、知り合いと2人きりになる場面に遭遇したとき、あなたは無意識に「雑談をしなければ」と考えていたのだと思います。

実際、よく会社員の方から「エレベーターで、普段あまり接点のない会社の人と会ったとき、どのような話をすればいいですか?」という質問をされます。

私の回答は、「雑談は無理にしなくていい」ということです。

あなたの内側に「なんか口では表現しにくいけど、話しにくいなぁ」という気持ちがあるときは、無理しないほうがいいのです。その理由は、心理学の観点から考えると明らかです。

実は、プレッシャーを感じた中で繰り広げられた雑談は、相手にネガティブな印象を与えてしまうメカニズムがあります。

あなたは、何か不安を感じたとき「やばい、不安がバレてるかも」と思い、余計に不安を増幅させてしまった経験はありませんか。これは、事実かどうかは別として、自分の心の中を読まれていると思い込む、「透明性錯覚」という現象です。

すると、次に起こるのは「情動伝染」という現象です。

赤ちゃんが笑っている姿を見ると、つい頬が緩んでしまいますよね。また、悲しそうな人を見ると、自分まで悲しい気持ちになってしまうことがあります。このように、人の感情は音叉のように共鳴を起こしていきます。

つまり、もともとあなたの不安や緊張が伝わっていなかったとしても、「不安が伝わっているかも」という思い込みで余計に不安が増してしまい、そのせいで本当に相手へ伝わってしまうのです。

このメカニズムから考えると、「話しにくいなぁ」とネガティブな感情を抱いているときに、無理して雑談をすると、そのネガティブな感情を相手に伝えることになります。

よかれと思ったコミュニケーションが、関係を悪化させる可能性があるということです。

雑談に、オチも雑学も必要ない

そもそも、みなさんを悩ませている雑談って何なのでしょうか。雑談といえば、

・他愛のない会話
・盛り上がる会話
・幅広い知識が必要な会話

このようなイメージを持っている人が多いと思います。

結論からお話しすると、その思い込みはすべてストレスの原因です。今まであなたが、雑談に対してこれらのようなイメージを持っていたなら、あらゆる場面でとても苦しんできたことでしょう。

たとえば、「他愛のない会話」というのは、別の表現をすると「目的がない会話」になります。ある意味つかみどころがなく、いつも会話の終着点が行き当たりばったりになるということです。

つまり、相手や状況が変わるごとに、頭をフル回転させて、臨機応変に対応しなければいけません。どのように話を広げたらいいのか、終わらせればいいのか、そんな悩みばかり出てきて、疲弊してしまいます。

また、お笑い芸人のような、完璧なフリとオチがある「盛り上がる会話」をイメージする人もいるようです。テレビで見る芸人のトークは、しゃべりのプロだからこそできる話芸であり“芸術”です。芸術を見様見まねで取り入れてもうまくいかず、そこには違和感しか生まれません。

「幅広い知識が必要な会話」については、たしかに、相手に合わせて話題を振ることができたら、話は広がっていくでしょう。

しかし当然ながら、ありとあらゆるジャンルの知識を持っておくことは容易ではありません。知識量を雑談の切り札にしてしまうと、知らないテーマが話題にのぼったときに、どう対応したらいいのかわからなくなってしまいます。

もしかしたら、これらの雑談のイメージは、あなたの周りにいる「雑談が上手な人」を思い浮かべて出てきたものかもしれませんね。おそらく、そのような人はもともと、臨機応変に対応する力やコミュニケーション力に長けているのだと思います。

「雑談が上手な人」のように自分の長所を伸ばす

もしもあなたが「雑談が苦手」と悩んでいるなら、そのような雑談上手な人を参考にするのは、少し危険です。人の得意分野をまねしようとしても、「あの人はできているのに……」と感じる経験ばかり増えて、余計に苦手意識を助長してしまいかねません。

人間はどんな人であっても、得意不得意があります。それなのに、昔からの教育などによって、「すべて平均点以上を目指すことがいい」と思い込みやすくなっているのです。

ただ、実際に社会に出ると、つねに「すべて平均点」なことが評価されるわけではありませんよね。苦手なことがあっても、得意なことが突出していると評価されたり、過ごしやすい環境を求めやすかったりします。

雑談も同じです。得意な人はその能力を生かせる場所へ行けばいいし、苦手な人は、ほかの得意なことを生かしたほうが生きやすいはず。

「雑談が苦手」はあなたの特徴であり、欠点ではありません。周りの人と比べて「私も得意にならないと……」と焦る必要はないのです。

ここまでお伝えしたように、そもそも雑談は「しなければならないもの」ではないのです。

リラックスしながらする雑談にはガス抜き作用がある

では、日々の中で、雑談の機会をなくすのがいいのかというと、私はそう思いません。なぜなら、プレッシャーを感じないリラックスした雑談であれば、多くのメリットを得られるからです。

雑談は、カタルシスといった「心の浄化作用」を持っています。職場であれば、仕事とは関係のない雑談がガス抜きになって、頭を休ませることができるのです。

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あなたにとってストレスのもとである雑談も、うまく使えば、日々のストレス解消につなげることができます。

これは個人単位の話ではありません。雑談によって、職場全体の活性化度合いや幸福感が高まることもわかっています。最近は、在宅勤務やテレワークに伴うオンライン上でのやり取りが増えたぶん、雑談する機会が一気に減ったという人も少なくありません。

その影響もあり、ストレスをうまく発散することができず、しんどさを抱え込んでいる人が増えています。このことからも、雑談をするメリットがあることは明らかです。

このように、「ストレス0の雑談」は、私たちの日々に大きな効果を与えてくれるのです。

「雑談が苦手」だと感じているあなたも、仲のいい友人や家族とたくさん話をして、幸せを感じたことがあるはずです。誰かと楽しく話をしたことで、その1日に充実感を覚えた人もいるでしょう。

ストレスを感じないコミュニケーションは、本来楽しいものです。雑談を「ストレスを生み出す毒」から「ストレスを解消する薬」にすることで、あなたは今よりも生きやすくなるはずです。

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【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します

雑談が「面白い人」「つまらない人」の決定的な差

話が面白くない人は「ある勘違い」をしている

「雑談で笑いを取れない人」が知らない基本原則

提供元:「この人、話しにくいなぁ」は相手に伝染している|東洋経済オンライン

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