2021.05.12
「老後の家選び」ストレスなく暮らす3つの条件|マイホームに「住み続ける」のはデメリットも
快適に老後を過ごすための住処、選ぶ際に考慮すべきポイントとは(写真:IYO/PIXTA)
ひと昔前とは違い、老後の時間は格段に長くなっていますが、年を取ってからの過ごし方を綿密に計画している人は多くはないかもしれません。
持ち家に住み続ける? 子ども夫婦と同居する? 地方へ移住する? 「そのときになったら考えよう」ではなく早めの対策が必要だというのは、「老後問題解決コンサルタント」の横手彰太氏です。トラブルを回避するために、今から考えておくべきことを聞きました。
※本稿は『老後の年表 人生後半50年でいつ、何が起きるの…? で、私はどうすればいいの??』より一部抜粋・編集したものです。
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マイホームに住み続けるデメリット
今、空き家は全国で約85万戸。土地にいたっては相続後に登記が行われず、長期間未登記となった場所の総面積は、九州の面積(約368万ヘクタール)を上回る約410万ヘクタールにも上っているのです。昔は子育てに適しているといわれていた郊外型の戸建てやマンションが、今の職住近接のトレンドに合わないことがその原因。空き家や所有権不明の土地が急増しています。
そもそも子育てに適した住居も、子どもが独立して家を出てしまえば、老夫婦には持て余す広さになるのです。とくに郊外で広めの戸建てに住んでいるのであれば、室内の掃除や庭の手入れをするだけでも重労働となります。子育てに適した住宅は、終の住処(最期を迎える時まで住む家)とするには決して適しているとはいえません。
年を取れば取るほど、気力や体力が失われて引っ越しや買い替えは考えられなくなり、決して住みやすいとはいえない自宅を終の住処とする人が多いのです。
また、住宅の種類だけではなく、そもそもどこに住むのか、誰と一緒に住むのかという視点も、老後の生活を充実させるために欠かせない要素となります。
ここでは、「どこに住むのか」「誰と住むのか」そして「どのような家に住むのか」という3つの視点から、老後生活を豊かなものとする終の住処とは何か?を考えていきます。
● Where(どこに住むのか)……都会、田舎、海外
● Who(誰と住むのか)……夫婦、子どもと同居、1人
● How(どのような家に住むのか)……戸建て、マンション、賃貸、介護施設
地方への移住で成功する人、失敗する人
都会暮らしに疲れて、人生の最後は豊かな自然の残る田舎や海外に住みたいと思っている人は多いかもしれません。私は28歳のときに、これまで慣れ親しんできた東京を離れ、北海道のニセコに移住した経験があります。終の住処として都会からニセコに移住してきた人にたくさん出会いました。私の体験を含めて、地方への移住の現実についてお伝えします。
ニセコで出会ったTさんは宅建を取得し、不動産事業を始めて事業は大成功。都会から移住者を誘致すると同時に、地元の人と深く関わって土地や部屋を上手に見つけていました。家族ともうまくやっていて、スキーなどアウトドアを満喫。Tさんをはじめ移住して成功している人に共通するのは間違いなく、コミュニケーション力が高いことです。
田舎にいても、何かしらの人とのコミュニケーションが必ずあります。人が少ないから誰とも関わりがない、ということはありえません。
たとえお金があって広い家に住んだとしても、地元の人との時間を作らず、人とのつながりを避けていると、縁のない田舎に終の住処を構えるのは難しいと思います。幸せを感じることができず、結局は都会に戻るケースが多いのです。
失敗する人のパターンは、本気の移住ではなく、どこかで別荘の感覚があるのかもしれません。
都会に帰る所が別にあるということから、地元と積極的に関係を持とうとしないのでしょう。沖縄に移住した知人もいますが、北でも南でも同じことです。
それで私はというと、飲食店経営でビジネスとして成功はできましたが、自分が未熟で人間関係に失敗し、心の病を持つまでになりました。大自然の中にいても、病んだ心までは完璧に癒やしてはくれないのです。
結論から言えば、子どもと同居せず夫婦2人が望ましいです。実際、2世帯や3世帯の同居は、家族の形として主流ではなく、うまくいかないケースも多発しています。
夫に先立たれた82歳のBさんが、札幌で長男と暮らしていたケースを紹介します。
最初のうちは、問題なく暮らしていたそうです。次第に長男の嫁と、ささいな言葉のやり取り、料理の味の違い、掃除のやり方が気になるようになって、折り合いが悪くなっていったそうです。長男も奥さんの味方をして、Bさんは孤独感を味わうようになりました。結局は東京にいる長女の家に移り、今は長女の自宅の近くで介護施設を探しています。
老後に子どもと同居する選択は、いろいろなリスクが出てきます。子ども側も親の介護と向き合わないといけないので、自分の配偶者の協力や理解が必要となります。
高齢の親のほうも、自分の子どもだけでなく、その配偶者との人間関係に神経を遣わないといけません。親子で同居して一緒に住むことによって、住居費や食費の負担が少なくなるため、金銭的なメリットはあります。一方で、人間関係のストレスというリスクもついてくるのです。
誰と住むかは、夫婦2人だけ、もしくは1人暮らしをしつつ、住む場所は子どもの家の近くが理想です。こうすることで、小さいときは孫の面倒をみたり成長を見守ったりすることで、生きる活力となります。そして介護が必要になったら、子どもに助けてもらうこともできます。
こうした適度な距離感を保つことが、老後生活でストレスを極力減らしつつも、介護対策も見据えられるのです。
老後用のコンパクトな家に移ろう
自宅を所有していると、いろいろな維持費用が発生します。結婚当初に購入したとすると、子どもが独立した頃には築30年以上は経っていることがほとんど。
とくに戸建ての場合、経年劣化により外壁や水回りが傷み、リフォーム費用も想定しなくてはいけません。
マンションであれば、築年数の経過とともに、共用部分の修繕費用として修繕積立金が重く家計にのしかかってきます。築年数が古く、総戸数が少なければ、1世帯当たりの負担額は大きくなります。
老後の自宅は、売却した場合の金額を把握しておくことが重要になってきます。それは、介護施設に入居する際の費用として、自宅の売却資金を充当するケースがあるからです。所有している金融資産が少なければ、自宅の売却を視野に入れざるをえません。
ただし、いざ売却しようとしても、住宅ローンが残っているのであれば要注意。築30年、40年の築年数が経過した郊外型の戸建ての場合は、とくに売却価格が低くなってしまうからです。売却してもローンが完済できないことも珍しいことではありません。自宅の購入時期が遅く、40代・50代のときにほぼフルローンで自宅を購入した場合は、ローンが残っているケースも多いでしょう。
早い段階で自宅の売却価格を、余裕を持って調べておかないと、急に介護施設に入ることになった場合、買い手を焦って見つけようとするあまり、想定外の叩き売りの状態で自宅を手放すことになります。
子育て用の自宅を特売セールにされないために、早めに老後用の家に住み替えることをお勧めします。この思考が今後いっそう重要になります。ヤドカリのように、住み替えるのです。
夫婦「それぞれの自室」があるとベスト
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老後になればフットワークは落ちるので、大きい貝(家)は必要ありません。それよりも利便性重視です。駅チカの50㎡程度のコンパクトマンションは、老後生活にはうってつけ。駅から近ければ、移動はもちろんのこと、買い物や通院にも便利です。
ただしコンパクトであっても、夫婦各自で1部屋ずつ持つことがポイント。質のいい睡眠が老化防止として最高の薬となるからです。パートナーのいびきで睡眠の質を落としてはいけません。夫婦でも1人の時間がほしいときに1人になれることも、ストレス軽減につながります。
以上のことをご参考に、ぜひ快適で豊かな老後をお過ごしください。
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提供元:「老後の家選び」ストレスなく暮らす3つの条件|東洋経済オンライン