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2021.02.19

結局「自動運転」はいつどのように実現するのか|6Gの時代をリアルに想像することの重要性


自動運転技術がさらに進めば、その技術を応用してさまざまな分野でも活用できる未来が待っている(写真:metamorworks/iStock)

自動運転技術がさらに進めば、その技術を応用してさまざまな分野でも活用できる未来が待っている(写真:metamorworks/iStock)

あなたは2040年に何歳だろうか? その頃の日本はどうなっているのだろうか?

元日本マイクロソフト社長であり、起業家であり、投資家でもある成毛眞氏は「今あるものを見れば、未来は読める」という。高齢化が進み、経済成長も見込めない日本の未来は、残念ながらそう明るくない。ただ、未来を知り、何をするべきか考えれば、豊かな人生になる。本稿では、『2040年の未来予測』より、一部抜粋、編集し紹介する。

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6Gで自動運転が可能になる

前回記事では、未来を様変わりさせるテクノロジーの要となる6Gについて説明した。新しい技術は突然現れない。すでにある技術の改良や組み合わせで登場することがほとんどだ。

6Gで、どういう世界が実現するか。まず、自動運転だ。

未来では、自動運転は現在のスマホと同じくらい普通になっているだろう。そこから何かに利用したり、投資しようかなどと考えても、もう遅い。何が言いたいかというと、現代を見渡せば、未来は見えるということだ。そして、荒唐無稽と思われていたものの大半がすでに実用化されている。未来では、公共のバスや電車などは、ネットワークに接続された自動運転になり、輸送や物流なども効率的になるはずだ。

車両ごとにカメラやレーダーなどを含んだ膨大なセンサーが働き、走行中に周囲の地図が自動的に生成されたり、衝突する可能性がある通行人や車両などの動きなども常時把握されたりしているだろう。

自動運転どころか、上空はドローンが行き交い、どこにでも欲しいものを配達してくれるはずだ。これらは、高速で大容量のデータが通信できることと、通信が途切れなくなり、タイムラグもなくなることで可能になるというわけだ。

「自動運転技術」は、産業界のみならず多くの人が関心を寄せる。自動運転も、もちろん低遅延で可能になる。トヨタ自動車やホンダなどの既存の自動車メーカーだけでなく、アメリカのグーグルなどIT企業も公道でのテストを重ねているのをニュースで目にした人も少なくないはずだ。

自動運転は、レベル0から5の6段階に分かれている。レベル0とは、ドライバーがすべての運転操作を実施する状態だ。最高のレベル5は、条件なしに、場所を問わず、システムがすべての運転作業を担う。そして、現在、多くの自動車メーカーの実用段階はレベル2からレベル3にある。

前回記事 ※外部サイトに遷移します

レベル2とは、前後・左右の運転操作の一部をシステムが行う段階だ。すでに、自動ブレーキ(衝突軽減ブレーキ)や、前の車の速度に合わせて車間距離を維持してくれるアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)、車線の中央付近を走るようにする車線維持支援システムなどが搭載された車に乗り、その便利さを感じている人も多いだろう。

これが、レベル3になると緊急時に運転操作をする必要はあるものの、高速道路など特定の場所ではシステムがすべての運転作業をしてくれるようになる。逆にいえば、不測の事態が起きなければ、ドライバーは何もしなくてもいいことになる。

法規制などの問題はあるが、すでにもう技術的には、例えば高速道路での運転を車に任せ、ディスプレーで映画を見るのも可能だし、仕事のメールを返しながらでも車は走行できることになる。

つまり、レベル2とレベル3が、運転するのが人間か、システムかの境目になる。まさに「自動運転」への過渡期にいま、われわれはいるのだ。

ちなみに、レベル4は緊急時も含めて、高速道路など一定の場所でシステムが問題なく運転する状態、そしてレベル5は最初に述べたように場所の限定なく、システムがすべてを操作する段階だ。

2040年に、新車でのレベル3以上の自動運転システム車は、4112万台になり、世界の新車の29.4%を占める。2030年以降、レベル4が普及し、2040年には完全自動運転の「レベル5」も実用化しているとみられる。

すでに未来を変える技術はチラホラ実用化されている

こうした自動運転の実現に向けて、欠かせないのがセンサー類だ。自動運転に大切なのは、もちろん周辺の構造物、周りを走行するほかの車両や歩行者などを正確に認識することだ。車にはカメラや、レーダーなどを含んだ膨大なセンサーが搭載され、それを使って走行中に周囲の地図を自動的に生成する。もちろん、衝突する可能性がある通行人や車両などの動きも常時把握する。

センサーの1つにミリ波レーダーがある。これは、マイクロ波である電波が、周りにあるものに反射して戻ってくるまでの時間を計測することで、対象物までの距離を計測できる技術だ。正確な物体の把握は得意ではないが、雨や雪など悪天候でも影響を受けにくい特性がある。

ミリ波レーダーは、実は現在でも自動車に搭載されている。大衆車1台当たりに3個、高級車には6個といわれている。自動運転になると、これが15個は搭載されるといわれている。センサーにはさまざまな種類があり、それぞれ一長一短があるので、こういったセンサーをいくつか組み合わせ、安全な自動運転を実現する。これだけみても、いかにセンサーの塊になるかがわかるだろう。

その肝となりそうなのが、レーザーの反射で距離を測定する「LiDAR(ライダー)」だ。これは「Light Detection and Ranging」の略語だ。

仕組みは先ほどのミリ波レーダーと似ており、レーザー光線をセンサーから発して、モノに当たってからセンサーに戻ってくるまでの時間で距離を計測する。ミリ波との違いは、波長の短い赤外線のレーザーを使っている点だ。ミリ波レーダーに比べて、小さな物体も検知できるのが特徴といわれている。

このライダーはコストが高いのがネックだ。構造が複雑なものは数百万円する。なので、今のところは、実験車両や地図データを取得するための作業車両などにしか搭載できない。ただ、最近になり参入企業が増え、ライダー専業のスタートアップだけでも世界に100社程度生まれている。つまり、それだけ有望なテクノロジーだということで、今後、小型化・低価格化は急ピッチで進むだろう。

こう書くと、あまり実感が湧かないかもしれないが、このライダーはあなたにとって実は身近な存在だ。ライダーは2020年10月に発売された「iPhone12」のProシリーズに搭載されている。「12」のカメラ性能の高さに驚いた人もいるだろうが、その一因はライダーだ。

「12」の特徴は、人物と背景の境界の鮮明さだ。これは、空間の3Dオブジェクト(立体物)を個別に識別することができるようになっているからだ。床、壁、天井、窓、ドア、いす、机などを、それぞれ個別のオブジェクトとして認識しているのだ。

すでに身近にある自動運転の要素技術

この、人物や物体の位置を正確に判断できるライダーの技術があれば、これから、写真やCGの合成も違和感なくできるようになるし、ARもより身近になるだろう。ライダーは、一部メーカーの業務用掃除ロボットにも搭載されている。

『2040年の未来予測』

『2040年の未来予測』

『2040年の未来予測』 ※外部サイトに遷移します

スマホに搭載されているライダーと自動車向けではしくみが一部異なるが、基本性能は同じだ。「新しいテクノロジーは突然現れない」と述べてきたが、ここでも、すでに自動運転の要素技術はわれわれの身近に転がっている。

そして、このようなセンサーを搭載した自動運転車が走るのは地球だけではなくなっているだろう。トヨタ自動車はJAXA(宇宙航空研究開発機構)やNASA(アメリカ航空宇宙局)、CNSA(中国国家航天局)、ESA(欧州宇宙機関)などが2040年を目標に検討する月面基地建設プロジェクトに参画している。自動運転技術を使って、月面の移動手段などを提供する方針だ。

自動運転1つとっても、そのテクノロジーはさまざまな広がりがある。本書にはほかのテクノロジーもいろいろと紹介しているので、興味があったらぜひ確認してほしい。

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提供元:結局「自動運転」はいつどのように実現するのか|東洋経済オンライン

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