2020.12.15
夫婦で「性格が一致」しても幸せとは限らない訳|その一方で似たような人との結婚を望む声も
性格が似たような人でも必ずしも結婚がうまくいくとは限らないようです(写真:: producer/PIXTA)
かつてに比べて「何が幸せなのか」、現代社会では基準が曖昧になってきています。結婚に対する価値観も多様化してきています。作家・講演家・起業家プロデューサーとさまざまな肩書を持つ星渉氏と、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の前野隆司氏の共著『99.9%は幸せの素人』を一部抜粋・転載し、幸福度を高めるためのコツを紹介します。
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あなたの結婚相手に求める条件を考えてみてください。もうすでに結婚されている人は、〝今のあなた〞だからこそ思う「結婚する前の自分に教えてあげたい」結婚相手の条件を考えてください(もちろん今の相手が最高のパートナーであることは重々わかっていますが……)。
こうして結婚相手に求める条件を聞くと、多くの人が「性格の一致」を挙げます。 あるいは「優しい人」など、「自分にとって好ましい性格」に関する答えも多く聞かれます。
では、実際に夫婦間の性格はどこまで一致しているのでしょうか? オーストラリアで3618組、アメリカで4815組の夫婦を対象に、夫婦間でどれだけ性格が似通っているかを調査したデータがあります。
いずれの調査でも、「性格が似ていること」を結婚相手の条件に挙げるけれども、実際の結婚相手とは性格が似通っていることはほとんどない、ということがわかっています。
「えっ、そうなの⁇でも、比較的性格が似通っている夫婦のほうが幸福度が高いんじゃないの?」と思う人もいるでしょう。これもまた調査結果があります。ドイツの心理学者であるハンス・アイゼンクらが566組の夫婦を対象に調査したものですが、この調査でも「性格が似ているから幸福度が高い」という結果には至りませんでした。
性格が一致しようがしまいが幸福度には関係ない
要するに、性格が一致しようが、まったく似ていなかろうが、夫婦関係、パートナーシップから得られる幸福度には影響がないということです。
性格の一致は関係ない。……これ、ちょっと驚きですよね。幸福度に性格の一致は影響しないのにそれを求めるのは、怖いことかも。ここにもまた、正しいと信じていたことが実はそうではなかったという事実があります。
にもかかわらず、裁判所の司法統計によると、日本の離婚原因の第1位は、ダントツで「性格の不一致」。本当のところ、それは「幸福度に関係ないのに」です。
実は「性格」よりも重要な「一致しないと離婚の原因になる事柄」があるのです。「性格の不一致」に隠れた、本当の離婚原因とも言うべき「一致していない事柄」 ……それは「価値観」です。 「価値観の一致」こそ、パートナーシップの幸福度にもっとも大切なことなのです。
イギリスのロンドン大学ゴールドスミス校の研究で、結婚生活において「性格」の一致は満足度に影響はなく、「価値観」や「態度」が夫婦間で似ていれば似ているほど、結婚生活への満足度が高く、うまくいく傾向があることが明らかにされています。
2人とも社交的だとか、内向的だとか、おっとりしている、心配性だ……などという性格の問題ではなく、お金の使い方や、子供をどう育てたいかなどの価値観が似ていれば似ているほど幸福度が高く、うまくいきやすいのです。
ではいったい、なぜ日本の離婚原因の第1位が「性格の不一致」なのか? それは単に、「性格」と「価値観」を混同してしまっているからでしょう。 「私がこれだけ心配性なのに、あなたはなんでこんなに楽天家なの」なんて性格的なことを理由に離婚した、という話はあまり聞いたことがないです。
夫婦喧嘩を防ぐ超基本「話し合うべき13項目」
ここであなたはお気づきでしょうか? そう、自分や相手の性格を変えることより、夫婦やパートナー同士でお互いの価値観を一致させることのほうが、圧倒的に簡単なのです。 価値観を一致させる方法、それは単純に夫婦やパートナー同士で、何かあった際に 「どう思う?」「どうしていくのがいいだろうか?」と話せばいいだけですから。
ここでは、夫婦で話す時間を確保した際に「一致させておくといい」いくつかの基本的な価値観を紹介します。 まずは、あなた自身が各項目について「こんな価値観で一致するといいな」と思うことを挙げてみてください。
そして、その項目の1つひとつについて「私はこう思うけど、あなたはどう思っているか聞かせて?」と、相手の考えを聞いてみてください。 相手と討論した末にどちらかの価値観を採用するのかではなく、2人の考えをうまくミックスしたお互いが腑に落ちる価値観を作り出すことがポイントです。
【夫婦間で一致させたい価値観 13 項目】
理想とする人生観や世界観
人生の中でやりたいこと・達成したいこと
今月、来月、今年やりたいこと
スケジュールの共有
お金の使い方
子供の育て方
理想とする夫婦像
両方の親族との付き合い方
休みの日の過ごし方
子供の世話の分担(一方が出かけたい時など、どうするか)
家事の分担
モノの買い替えや買い物について
クーラーや暖房の温度の設定
……この他にも、あなたが「ここの部分の価値観を相手と合わせていきたい」と思うものがあれば、2人の会話の中で意見交換をしてみてください。
そして、もっとも重要なことがあります。 それは「MT(ミーティング)の最後は必ず、お互いに相手に感謝していることを3つ伝えて終わりにする」ということ。 もしかしたらMTをすることで、ちょっと言い合いのようになることもあるかもしれません。
しかし、人間の記憶には〝最後の印象〞がいつまでも残るものです(心理学ではこれを「ピークエンドの法則」と言います)。 MTの最後に感謝していることを伝え合えば、話し合いの時間を持ててよかったなと、来月のMTへのモチベーションになります。
結婚生活は努力が必要
えっ? 忙しくて2人で話し合う時間が持てないから、どうすればいいかって? その答えは、「努力する気がないなら結婚するな」です。 朝起きて、急に幸せになるなんてありえません。「1年間毎月MTをしたら1億円あげます」と言われたらやれますよね?
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温かなパートナーシップは、1億円をもらう以上にあなたの人生の幸福度を上げてくれます。 少し補足をしておくと、もちろんパートナーとは性格も価値観も一致しているに越したことはないと私は思います。性格も価値観も一致する相手だったら最高です。
ですから、性格が一致する人と結婚してはいけないというわけではありません。 ただ、これまでの科学的な調査の結果では、「性格の一致」という要素はパートナーシップの幸福度にそれほど大きくは影響しないよ、という話なのです。
(文:星渉)
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提供元:夫婦で「性格が一致」しても幸せとは限らない訳|東洋経済オンライン