2020.10.27
40歳以上の20人に1人! 緑内障は自覚症状なく進行します
緑内障は放っておくと失明の危険も
40歳以上の日本人の20人に1人が緑内障と言われています。しかし、なんと9割の人がまだ気づいていないとされています(※1)。日本人の視覚障害の原因疾患の第1位は緑内障です(※2)。治療せずに放っておくと、失明につながるおそれがある病気です。その対策をお伝えします。
※1 Iwase, A. et al.:Ophthalmology 111(9):1641,2004
※2 白神史雄 : 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究平成28年度総括・分担研究報告書
初期にはまったく症状がありません!
緑内障は、視神経が障害され、視野が狭くなったり、部分的に見えなくなったりする病気です。多くの場合、視野は長い時間をかけてジワジワと欠けていくため、初めのうちは気づくことができません。
緑内障では、見えない部分ができたり(視野欠損)、それが広がり、視野が狭くなったり(視野狭窄)するなどの視野障害が起こります。
初期の段階は、中心部のそばに異常がでてきますが(=障害が起こりますが)、見えない範囲は小さいので、自覚症状はほとんどありません。
その小さな異常は徐々に広がり、進行すると中心部分に見えない範囲が広がっていきます。仮に、片方の目に見えない部分があっても、両目で見ているともう一方の目でカバーしてしまうので、かなり広がるまで気づかないことが多いのです。
40歳になったら、定期的な眼科検診が重要
また、目は絶えず動いているうえ、欠けた部分が黒く見えるわけではないことも気づきにくい理由です。
一度、欠けてしまった視野は、元に戻すことができません。定期的な検査で、見えない部分が広がっていないかを確認することが大切。
今どのくらい欠けているのか、どのくらいのスピードで進んでいるのかなどは、眼科の検査でしかわかりません。
40歳を過ぎたら、まずは1回検診をして、リスクがあれば年1回、そうでない場合は3~4年に1回、定期的に眼科の検診を受けることをおすすめします。
緑内障のリスク因子は、眼圧が高い人、両親やきょうだいに緑内障の人がいる人、強い近視の人、低血圧、糖尿病、片頭痛のある人などです。
緑内障は早期に治療すれば、失明には至りません
緑内障は、眼圧の上昇などによって視神経が障害されます。しかし、日本人には緑内障の中でも、眼圧が正常である正常眼圧緑内障が多く、日本人の緑内障全体の約9割を占めます。
ですから、眼圧が正常でも、安心はできないのです。
緑内障は一度、視神経に障害を受けると、元には戻らない病気です。そのため、定期検診で緑内障を早期に発見することが大事。早期に治療を受ければ多くの場合、失明に至ることはありません。早期発見と治療の継続が大切です。
緑内障かどうかを調べるには、眼科で眼圧、眼底、視野検査などが必要になります。緑内障と診断されたら、一般的には点眼薬による治療が基本です。
緑内障の治療では、生活の厳しい制限や注意事項はほとんどありません。点眼薬を使用して定期的に受診すること以外は、普段と変わらない生活を送ることができます。
日常生活で行ってはいけないことは、特にありませんが、眼圧が上がりやすいこととしては、強いストレス、襟のきつすぎる衣服などです。
適度のアルコールや日常で飲む程度のコーヒー、緑茶などのカフェインも問題ありません。
緑内障の治療でもっとも重要なことは?
緑内障の治療でもっとも重要なことは、まず眼圧を下げること。そしてこれ以上、視神経が障害されないようにすること、そして、視野障害が進行しないようにすることです。
緑内障の治療は、まず点眼薬を中心とする薬物治療が行われます。点眼薬1種類で治療をはじめ、効果が十分でなければ、点眼薬を変更したり、作用の違う薬を追加して2〜3種類組み合わせたりします。
その際に、作用の異なるふたつの薬がひとつになった、配合点眼薬を使うこともあります。
点眼薬の種類は、房水の生産量を抑えるもの、房水の排出を促すものなどです。場合によっては、内服薬を追加することもあります。それでも眼圧が十分に下がらない場合や、視野障害が進行する場合は、眼圧を下げるレーザー治療や手術が行われます。
緑内障には2種類! 眼圧が正常なものもある
緑内障には、いくつかの種類があります。おもな種類は下記のふたつです。タイプによって、症状や治療も変わります。
いちばん多いのは、眼圧が正常範囲の正常眼圧緑内障ですので、要注意です。
開放隅角緑内障
房水の出口(隅角)は開いているのに、フィルターが目詰まりを起こしているタイプ。「開放隅角緑内障」には、眼圧が高いものと、眼圧は正常範囲の「正常眼圧緑内障」があり、緑内障の9割を占めます。
閉塞隅角緑内障
出口(隅角)が狭くなっていたり、閉じて塞がったりして(閉塞)いて、防水が流れにくくなる緑内障のこと。ほとんどの場合は無症状ですが、突然発作が起きて眼圧が高くなり、ひと晩で見えなくなることもあります。
40代以降に増えていく目の病気
緑内障以外にも、更年期以降にリスクが高まる目の病気があります。
以下のような症状を感じたら、眼科を受診しましょう。また、特に更年期以降は、定期的な眼科検診が大切です。
白内障
かすんで見える、まぶしくなる、明るいところで見えにくい、眼鏡が合わなくなる、二重三重に見えるなど。
・予防法⇒ 帽子、サングラスなどによる紫外線ケア、ビタミン摂取、バランスのよい食事。
・治療⇒ 早期から点眼や内服薬で進行を遅らせることができます。日常生活に不自由を感じたら眼内レンズの手術もあります。
加齢黄斑変性症
モノがゆがんで見える、視野の中心が暗くなる・欠ける、視力が低下するなど。
・予防⇒ 活性酸素(紫外線、煙草、ストレス)を避けて、抗酸化ビタミン、ルテインや亜鉛を摂る、バランスのよい食事、40歳から年1回の眼科検診。
・治療⇒ 注射。レーザー照射、外科的手術など。
ドライアイ
目が疲れる、不快感がある、乾いた感じがする、眼が重たい、ずっと開けていられないなど。
・予防⇒ パソコン作業や運転時などに、まばたきを心がけ、目が疲れたら休む、湿度を保つ、蒸気で温めるアイマスクなど。
・治療⇒ 点眼、軟膏、涙点プラグの挿入。
目のためにも活性酸素を減らす生活は大事
目のアンチエイジングには、適度な運動、肥満予防、抗酸化生活、あとは、メンタルケアが大事。前向きに生きることです。
緑内障、白内障、加齢黄斑変性、ドライアイなどの目の病気の多くは、更年期以降、加齢とともに増加していきます。
目のためにも、アンチエイジングを考えた生活が大事です。ある程度、カロリー制限をして肥満予防をする、活性酸素を減らすなどの抗酸化の生活は、予防医学では、有効と考えられています。
増田美加・女性医療ジャーナリスト
予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。
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記事提供:ウェブメディア「MYLOHAS」
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提供元:40歳以上の20人に1人! 緑内障は自覚症状なく進行します|MYLOHAS(マイロハス)