2020.10.08
「コロナ禍で生活破綻する人」が陥りがちな失敗|ピンチの時こそ「中長期の視点」を持つ
コロナの今こそ安易に借金してはいけない(写真:mits/PIXTA)
コロナによって、勤務先の業績悪化や収入減少、失職など今、苦境に立たされている人は多いかもしれません。そんなとき、まず心配になるのが「お金」のことです。お金の不安を解消するためには、まず何をするべきなのでしょうか? 公認会計士の林總さんの書籍『不安な時代の家計管理』では、「現状に向き合い、しっかり家計管理することで、収入減のピンチを脱出できる」という考えのもと、今日からすぐに始められる家計管理法が紹介されています。生活破綻を招かないために、どのような心構えでこの難局を乗り切ればよいのでしょうか。
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新型コロナウイルスのパンデミックによって、これまでの生活や将来設計が、ガラガラと音を立てて崩れてしまった人は多いはずです。勤務先の倒産、事業の経営悪化、大幅な収入減や失職で、いま絶望の淵に立たされている人もいるかもしれません。
絶望しているとき、もっとも愚かなのは「自暴自棄になること」です。やけくそになって自分を粗末に扱ったり、投げやりな行動をとったりするのは、絶対にやめましょう。
やってはいけない「3つのこと」
人生、たいていのことはリカバリーできます。だいたい3カ月で状況は変わり、なんらかの答えが出ます。ですから次のような、自分の価値を貶める、取り返しのつかないことだけはしないでください。
・社会的信用を失う(犯罪などを犯す)
・人からの信用を失う(嘘をついたり人をだましたりする)
・みずから命を絶つ
そもそも、人生がずっと順風満帆で100%計画通りにいくことなどありません。病気になる、リストラにあう、離婚する、仕事がうまくいかなくなる、大きな損失を出すといったピンチは、だれの人生にも一度や二度はあるものです。
自暴自棄になりそうになったとき、目の前の「3カ月をとにかく乗り切る」ということを考えてください。3カ月間の収入予算と支出予算を立てて見通しを立てることで、不安な気持ちも消えていくはずです。
今度ばかりはもうダメだと思っても、かならず乗り越えられます。それがお金のことであるならば、落ち着いて取り組みさえすれば光が見えてくると断言できます。傷を負っても、いつか回復します。同じように、人生もリカバリーできるのです。
最悪の事態を具体的に予想する
災害や疫病といった非常事態においては、どう努力してもお金のやりくりができず、不安を募らせてしまいます。
不安になるのは、先が見えないからです。ならば、知性を使っていまの現実を直視し、先のことを考えましょう。「どうしよう」ではなく「どうするかを考える」のです。間違っていてもいいから、自分の頭で考えることが大切です。
不安を解消するひとつの手段は、最悪の事態を予想しておくことです。ポイントは、数字ベースで考えること。あらかじめ決めたラインを越えてしまったら、多少過激な強硬手段も辞さない覚悟を決めておくのです。
・貯金の取り崩し額が〇〇円になったら、リカバリーするまで習い事や外食をいっさいやめる
・3カ月後も収入が回復しなかったら、転職活動をはじめる
・貯蓄が〇〇円以下になったら、荷物をまとめて実家に帰る
このように、最後の一線を越えたときの行動を決めておくことで、気持ちがラクになります。
急激に売り上げが落ちている自営業者であれば、売り上げゼロが続いた場合の予算表を組んでみましょう。半年間はなんとかもつとわかったら「この状況が半年続いたら廃業して就職活動をはじめよう」などの覚悟ができます。それまでは、少しでも売り上げを伸ばすことを考えたり、次の仕事の準備をしたりすればいいだけです。不安になっている暇はありません。
困ったときには、のどから手が出るほどお金がほしいものです。それでも安易な借金はしてはいけません。すべての借金が悪いわけではありません。きちんとした返済計画があれば、借金は有効なものです。住宅ローンや奨学金などがそれにあたります。
しかし、当座のお金ほしさの、返済の目処が立てられない借金は厳禁です。借金は、いずれ返済しなくてはならない他人のお金です。しかも借りているあいだは利息がかかります。事業資金を借りる場合でも、確固たる事業計画があり、事業拡大(=利益を増やす)のためならいいのですが、焼け石に水のような借金を繰り返せば、やがて資金がまわらなくなってつぶれてしまいます。
家計において打開策がなく、借金しか手段がないようなときは、良質な融資からあたってみましょう。良質な融資とは、公的な融資です。利子や保証人がいらない、返済開始は1年後から、返済期間は10年など、無理のない条件が設定されています。
軽い気持ちで民間の金融機関に借り入れをしてしまうと、すぐに支払いがはじまり、非常に高い利子を支払うという厳しい条件になります。安易に借金をすると、まさに負のスパイラルに陥ってしまうのです。公的な支援を受けるためには、相談・申請といったステップが必要ですが、その手間を惜しんではいけません。
マネジメントの父であるドラッカーは、短期的目標と中長期的目標のバランスの重要性を説いています。本書で示した家計管理法で当面の短期的目標(3カ月)を乗り切ったら、これからの人生を中長期的目標(3年)でとらえる訓練をしましょう。
<3年あればできること>
・事業が軌道に乗るまで、3年
・新入社員が一人前になるまで、3年
・病気が完治するまで、3年
・200万円を貯めるまで、3年
このように、短い時間ではできなかったことも、3年あれば可能です。数カ月では難しくても、3年スパンで考えてみると、乗り越えられる気になるから不思議なものです。
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コロナ禍は、1年から2年は完全終息しないといわれています。では3年たったらどうでしょう。3年先の未来には、光が差しているように思えます。人生を3年単位の中長期でとらえてみましょう。なかにはうまくいく3年間も、平穏な3年間も、どん底の3年間もあるでしょう。
物事を中長期で考えると、自暴自棄な行動をせずにすみます。お金に困った経営者は、質の悪い仕事を受けてしまいます。利が薄いどころか赤字になる案件を、目先のお金ほしさに受けてしまうのです。売り上げ1000万円、経費1500万円かかるような仕事を、です。
3年先どころか数カ月先を予想すれば、「借金が500万円増える」と、小学生でもわかります。でも、受けてしまうのです。
家計の状態や事業の経営状態がよくないときこそ、「長期的に考えたらどうかな」「3年後、どうなっているかな」とみずからに問うて行動してみてください。
収入が10%になっても続ける道を模索する
このたびのコロナ禍や災害などで、かなりの収入減に見舞われる方が多いでしょう。苦しい時勢下でも、なんとか「やめずにまわす」方向で考えることが大切です。 どこまで粘れるかをきちんと見極めて、ギリギリまで粘るのが何より大切なことです。たとえ売り上げが10%になったとしても、その10%でなんとか経営をまわしていく、という意識でできるところまで続けてみましょう。
家計においても、お金の流れを止めないことです。フリーランスであれば、たとえ仕事の依頼がなくなったとしても、アルバイトで数万円でも稼ぐことができれば、収入ゼロという事態を避けることができます。廃業を考える前になんとか細く家計をまわすことを考えていきましょう。
会社員であれば、次の収入のあてもないのにかんたんに会社を辞めないこと。会社を辞めずに副業を探り、次の仕事を見つけるのです。ふだんから、フレキシブルな家計にしておけば、それができるはずです。
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提供元:「コロナ禍で生活破綻する人」が陥りがちな失敗|東洋経済オンライン