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2020.09.24

老後資金を増やす「年金の受け取り方」のコツ|2022年からの年金改正をおトクに活用しよう


老後に備えて「自分年金」をどう増やしていくか。5月に成立した年金改革関連法も、うまく使えば大きな支えになる(写真:siro46/PIXTA)

老後に備えて「自分年金」をどう増やしていくか。5月に成立した年金改革関連法も、うまく使えば大きな支えになる(写真:siro46/PIXTA)

今年の5月末、通常国会で「年金改革関連法」が成立しました。その最大の目玉は「厚生年金の適用拡大」であることは、以前このコラムでもお話ししたとおりですが、実は今回、公的年金だけではなく私的年金に関する制度も改正されており、その中には個人の老後資金に大きな影響を与える項目がいくつもあります。

とくに、確定拠出年金に関する改正は注目です。企業型でも個人型のiDeCoでも年金の受け取り方を工夫すれば、結構なメリットが得られます。具体的なケースを見ながら、ポイントをお話ししましょう。

iDeCoは「65歳まで加入・75歳から受給」が可能に

確定拠出年金の何がどう変わるのでしょうか。「加入年齢」と「受給開始年齢」については以下の3つが改正点で、いずれも2022年4月以降施行される予定です。

(1) 企業型確定拠出年金、個人型確定拠出年金(iDeCo)とも65歳まで加入可能になる

(2) 企業型、iDeCoとも受給開始年齢の選択肢が75歳まで延長される

(3) 公的年金も受給開始年齢の選択肢が75歳まで延長される

「これだけしか変わらないの?」と思われるかもしれませんが、3つの点を組み合わせると公的年金、企業型確定拠出年金、そしてiDeCoの受け取り方についてバリエーションが広がりますし、その中から、よりお得な受け取り方を選べるようにもなります。

念のために、確定拠出年金も公的年金も「受給開始年齢の選択肢が75歳まで延長される」という改正項目は、「75歳になるまで受け取れない」ということではありません。両制度とも、現在は60歳から70歳までの間で自分の好きなときに受け取りを開始することができるのですが、その選択肢の幅を10年から15年に広げるということなのです。これによっても、年金の受け取り方が多様になります。

では、年金の受け取り方を決めるにあたって、何を考慮すべきでしょうか。以下の4つがポイントになります。

(1) 何歳まで働くか?

(2) 厚生年金に加入しているか?

(3) 企業年金や退職金があるか?

(4) iDeCoを利用しているか?

これらの違いによって年金受け取りの戦略はかなり変わってきます。具体的に3つのケースで考えてみましょう。

まず、大企業サラリーマン世帯に多い、比較的恵まれたケースです。

【ケース1】

夫60歳、妻55歳。サラリーマンと専業主婦で、退職金あり。企業年金も確定給付企業年金と確定拠出年金に加入している。

このケースでは、夫が65歳まで働き、会社からの退職金はできるだけ少額にして60歳で受け取り、残りは企業年金で受け取るようにする、という方法がいいでしょう。

そして、確定拠出年金は65歳まで加入し、そこから年金で受け取り始め、公的年金は70歳から受け取り始めるのです。妻の公的年金も70歳、できれば75歳から受け取り始める。

そうすれば、金額にもよりますが、60歳で受け取る退職金は「退職所得控除」、65歳から受け取り始める確定拠出年金については「公的年金等控除」によって無税で受け取れる可能性が高いですし、公的年金も70歳から受け取り始めることで受給額が42%増えます。平均寿命から考えても妻のほうが長生きするでしょうから、将来の給付を手厚くするために妻も年金受給は繰り下げるのが賢明です。

貯蓄がない50代でもiDeCo加入で増やせる

次は、共働き世帯のケースです。

【ケース2】

夫婦とも55歳で、共働き。貯金はほとんどなし。企業年金もなし。iDeCoにも加入していない。退職金はそれぞれ500万円程度の見込み。

こういうケースも多いと思いますが、iDeCoは60歳以降も働いて厚生年金に加入していれば65歳までは加入できますので、55歳の現在から入っても遅くはありません。夫婦ともに加入すれば、積立総額は65歳までの10年間で累計552万円。また年収にもよりますが、仮に所得控除で戻る分が年間1人5万円とすれば、2人で10年間の合計は100万円、運用益なども含めて合計すれば750万~800万円は上回るでしょう。

そして、公的年金は70歳から受け取るようにします。理想は70歳まで働くことですが、それが無理でも2人の退職金も合わせると、2000万円近くはここから増えますから、今貯蓄がほとんどなくても65歳から70歳までの5年間はこの2000万円で生活することができるでしょう。

最後は、サラリーマンではない人のケースです。

【ケース3】

50歳独身男性。フリーランスの編集者。貯金は1000万円。iDeCoには加入しているが、かつて国民年金を払っていない時期が10年ほどあった。

この場合、公的年金の受給額はとても少なくなります。退職金も企業年金もないので、iDeCoや小規模企業共済といった個人でできる資産形成制度をフルに活用すべきです。

フリーランスで仕事をしているので定年はありませんから、頑張って能力が発揮できれば生涯現役も可能です。理想は75歳まで働き、そこから84%割り増しされた国民年金を受け取ること。そのために、iDeCoに65歳まで15年間加入します。

過去に国民年金を払っていない期間が10年あるので、60歳以降も国民年金に任意加入すればiDeCoには入れます。小規模企業共済も加入年齢制限はありませんから、働いているうちは入るべきでしょう。フリーランスの場合、掛け金が大きいのでiDeCoを限度額いっぱい15年間積み立てれば、金額は1224万円となりますし、加えて所得控除でも数百万円戻ってきます。

小規模企業共済もiDeCoとほぼ同じぐらいの金額を掛けることができますから、自分でリタイアメント資金をこしらえるとともに、公的年金の受給開始を遅らせるのがベストな選択肢でしょう。

できるだけ長く働き、公的年金は繰り下げる

いずれのケースも「長く働く」というのが基本ではありますが、繰り下げると支給額が増える公的年金はできるだけ後ろ倒しにし、企業年金やiDeCoなどの私的年金は「働く、働かない」や「いつまで公的年金を遅らせるか」という方針に合わせて、柔軟に受け取り方を検討すればよいと思います。

ポイントをまとめておきましょう。

(1) 働けるのであれば、できるだけ長く働く

(2) 公的年金はできるだけ繰り下げるようにする

(3) 状況に合わせて私的年金は受け取り方を工夫し、場合によっては早く受け取る

それぞれ税制が少しずつ異なりますので、自分でよく考えて、自分にとっての最適な組み合わせを考えることが大切でしょう。

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提供元:老後資金を増やす「年金の受け取り方」のコツ|東洋経済オンライン

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