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2019.04.24

「自己肯定感の低い子」に親ができる1つのこと| 「できる子」ほど自己肯定感が育ちにくい?


子どもの「自己肯定感」を高めるためには親にはどんなことが必要でしょうか(写真:kikuo/PIXTA)

子どもの「自己肯定感」を高めるためには親にはどんなことが必要でしょうか(写真:kikuo/PIXTA)

難関大学に合格しても、一流企業に就職しても、幸せになれるとは限らないこの時代。
20年後の「子どもの幸せ」に対して、親ができるのは究極的には、ひとつだけ、 「自己肯定感」を育てること。5万人の子どもと向き合ってきた放課後NPOアフタースクール代表の平岩国泰氏が著書『子どもの「やってみたい」をぐいぐい引き出す! 「自己肯定感」育成入門』で提唱する、新しい子育ての基本を一部紹介します。

『子どもの「やってみたい」をぐいぐい引き出す! 「自己肯定感」育成入門』 ※外部サイトに遷移します

教育熱心で一生懸命な親ほど「成果」に注目してしまう

子どもの自己肯定感を上げる親の働きかけとして、多くの大人がまず思い浮かべるのは「子どもをほめる」ということだと思います。

子どもが何かに頑張って取り組んでいたら、それをほめて励ますのは基本的にはいいことでしょう。

しかし、「ほめる」という行為には、多くの親が陥る落とし穴があります。それは、私たち親は、ついつい、わかりやすい「能力」や「成果」に熱く注目してほめてしまうということです。 例えば、子どもがテストでいい点を取った。サッカーの試合でゴールを決めた。

そのとき、その点数の高さ、得点できたことを、ただ、ひたすら「すごいね!」「よくやったな!」とほめてはいないでしょうか。あるいは、「よくない結果」だった場合に、「もっと頑張りなさい」と、よりよい成果を出すことだけを求めてはいないでしょうか。

「○点取れた」「勝った」「成功した」というのは、あくまで「成果」であり「結果」です。

結果だけを評価され続けることで、子どもには「価値があるのは自分ではなく、あくまで○○ができる自分であり、ただの自分には価値がないのでは」という気持ちが生まれてしまいます。

もちろん、そうしたことを子ども自身がはっきりと自覚するケースはまれでしょう。

しかし、そうした価値観が無意識に刷り込まれ、「何となく不安な気持ち」や「焦り」となって子どもの心に根を張ります。あるいは、結果が出なくなり始めたときに投げ出すこともあります。結果の出ない自分を受け入れられず、「何もしないからできないだけ」という逃げ道を作るわけです。

子ども自身がどんな努力をした結果なのか。子ども自身が何を得て、どのように成長したのか、ということは、成果に注目すればするほど、見えづらくなってしまいます。「成果を挙げられなければ、自分の存在は認めてもらえない」といった不安や焦りは、子どものその後の成長にとっては、むしろマイナスになります。

子どもの自己肯定感を支えるのは、無条件で自分の存在を受け入れてくれる「安全基地」の存在です。その「安全基地」を堅牢なものにしておくためには、子どもが何かを達成したとき、結果そのものではなく、子ども自身がどのように努力したのか、ということを評価することが重要になります。

子どもが「最初の一歩」を踏み出すために必要な条件

「成果」に対しては、「どんな結果であっても受け入れる」という、一見大雑把に見える方法がおすすめです。

自分自身に当てはめて、考えてみてください。 私たちが、好きな人、パートナーや家族に「愛されている」「認められている」と感じるのは、どんなときでしょうか。

それは、必ずしも、わかりやすい成果をほめられた瞬間ではないのではないでしょうか。むしろ、誰も気づかないような、地道な努力や、小さな成長に気づいてくれたときに、うれしさを感じます。また、「本当は弱い自分」「自分のダメなところも含めて受け止めてくれる」、そんな人に本当の愛を感じます。

子どもが自己肯定感を持つ大事な条件とは、子どもが「自分が成長したら喜んでくれる人がいる」ことを知っていることです。これは、私がオランダの教育を視察しに行ったときに教わった考え方です。

実際、「お父さんやお母さんが喜んでくれる」という思いで努力する子は少なくありません。挑戦しようか迷ったときにも「大変そうだけど、頑張ってチャレンジしたらパパやママが喜ぶだろうなぁ」と思えば、一歩を踏み出せます。

できたらほめる、ということも大事なことですが、そこでは「挑戦したことそのもの」つまりプロセスを認める、ということが自己肯定感を育むことになります。子どもの自己肯定感を高めてくれる言葉とは、「できた」「できない」といった事実にフォーカスした言葉ではなく、もっと小さな、自分でも気づいていなかった、成長や努力に気づかせてくれる言葉だと私は考えます。

子どもの自己肯定感を下げる要因のひとつに、「高すぎる目標設定」があります。 目標を立てることは大切です。どこに向かっているかを見失わずに、努力し続けることができるからです。

一方で、私たちの多くが「高い目標を立てすぎている」と私は考えています。最終的に高いゴールを目指すのは悪いことではないのですが、「親子で無理な目標を立てたものの、達成できなかった」といった経験ばかりが積み重なると、ただただ子どもの自己肯定感が下がってしまう原因にもなります。 そうしたとき、経験の少ない子どものほうが、より失望感を味わうこともあるでしょう。   

さらによくないことに「うまくいかなかった」「努力したのに報われなかった」という経験が続くと「目標」はしょせん「達成できないレベルに設定する絵空事」である、というマインドセットになってしまいます。では、どうすればいいのか。何かに挑戦するとき、私たちはつい大きな目標を立てないといけないような気持ちになりますが、じつは、すぐに達成できそうな目標を立てるほうがいいのです。

小学生くらいの年代で最も必要なのは「学び続ける姿勢」を身につけることだと、私は考えています。それはすなわち「挑戦する」→「成長する」→「承認される」という成長循環プロセスを体に覚え込ませる、ということにほかなりません。

そのためにも、あまりに遠い目標ではなく、身近で短期間の目標を立てるほうがいいと私は考えています。

子どもが挑戦をし続けることに意義があるので、目標のハードルを上げすぎて、達成感がなかなか感じられなかったり、取り組むこと自体に嫌気がさしてしまっては、元も子もありません。

ですから、本当にはじめのうちは「最初からできるとわかっていることを目標にして、できたら認める」のが最善の方法です。

私は野球が好きなのですが、ヤンキースや広島カープで活躍した黒田博樹投手は、以前目標を達成するための秘訣として「目標を低く設定する。それをクリアする。またすぐ立てる」と言っていました。

高い山を登るときに、一気に頂上を目指す人はいませんよね。どんなに体力や才能があっても、必ずどこかで息切れしてしまいます。「1合目ごとに到着時間を決める」というふうに、必ず、目標をブレイクダウンさせることが必要です。 

そうやって自分の体力を踏まえてペースを保ち、登り続けられた人だけが頂上にたどりつくのです。

100%できるとわかっていることをあえて目標にする

「サッカー選手になること」を目標にするのではなく「明日の試合では最後までしっかりと走ること」を目標にする。

レベルが上がってきたら、「リフティングの回数を増やすこと」や「次の試合で誰よりもボールに触ること」を目標にしてもいい。大きすぎたり、遠すぎたりする目標を「では、今は何をしたらいいのか?」という視点で組み直すのです。

あくまでも「今の自分に適切な目標」を決めてクリアすることを繰り返す。その繰り返しが身につき、自分でごく自然にできるようになれば、しめたものです。親のアドバイスを受けなくても、「今、何をすべきか?」と、自分の成長プログラムを自分自身で考えていくようになるでしょう。

子育てでは「夢を持つ」ということが多く語られます。小学校でも、子どもが自身の将来の夢を作文に書いたり、語ったりする機会が多くあります。例えば、「サッカー選手」「医者」「宇宙飛行士」「アイドル」「パン屋さん」……近頃は、「YouTuber」 「ゲームクリエイター」などを挙げる子も多くいます。

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子どもの「やってみたい」をぐいぐい引き出す! 「自己肯定感」育成入門(夜間飛行)。 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

夢を持つことは、もちろんすばらしいことです。 しかし、親はそうした子どもの夢を、ただの「夢物語」として聞き流していることも多いのではないでしょうか。 もちろん「サッカー選手になりたい」という夢を実現するためには、想像もつかないほど長い時間にわたって、練習を積み重ねることが必要ですし、プロスポーツというのは非常に厳しい世界ですから、実際に選手になれるのはほんの一部でしょう。

そうした現実を考えると、多くの親が「夢は夢」と思うのも無理のない話ですし、私自身、スポーツに取り組む子ども全員に「頑張れば、誰でもオリンピックに行ける」というつもりはありません。

しかし、そうした夢や目標との“遠すぎる距離”を「もったいないな」と感じます。夢を抱いた結果、どこかで「諦める」ことを学んだだけ、というケースが多いように感じるからです。

目標は小さくてもいい

ですから、子どもが大きな夢を持って何かに取り組もうとしているときは、その夢を今の成長に生かしてほしいのです。親ができる最善のことは、そうした夢に対して「じゃあ、今週は何をすればいいか?」と、夢を「現実的な目標」にブレイクダウンさせてアドバイスすることです。中長期の目標に対して、短期の目標を立てるこうした思考プロセスは一生使っていくものです。

そのプロセスの中で、子どもの心には「成長のエンジン」が形作られます。 たとえサッカー選手になれなくても、そのエンジンは、大人になってから大きな意義を持つでしょう。目標は小さくてもいいので、必ず達成していくようにしたいものです。

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提供元:「自己肯定感の低い子」に親ができる1つのこと|東洋経済オンライン

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