2019.04.10
4月授業参観に「行くだけの親」が見落とす本質 |休み時間や掃除を「最優先」で見ていますか?
「授業参観」を漫然と見ていませんか?(写真:zon/PIXTA)
4月は入学や進学のシーズン。子どもたちを取り巻く環境は大きく変わります。学校が変わる子も多いでしょうし、そうでない子も学年とクラスは変わります。もちろん友だちも変わり、先生も変わります。
そんな新しい環境の中、多くの学校で授業参観が行われます。長年、小学校の教師として子どもたちを見てきた私としては、ぜひ、この初めての授業参観を有効活用してほしいと思います。そして、そのためにはちょっとしたコツがあります。
「授業参観」最優先で見るべきは…
まず、強調したいのは、「授業参観」という名前になってはいますが、実は親が見るべきいちばん大事なものは授業ではないということです。いちばん大事なのはズバリ“休み時間”です。
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子どもが休み時間をどのように過ごしているか、ぜひ見てください。そうすれば、新しい環境に適応できているか否かがよくわかります。授業では、子どもたちはそれぞれの席に座って、先生の指導のもとみんな同じように行動しています。言ってみれば、よそ行きの行動ばかりです。でも、休み時間は違います。子どもたちの本当の姿が見られるのです。
多くの場合、授業参観は5時間目なので、可能な場合はちょっと早めに行って、その前の昼休みの時間から見るようにするといいでしょう。理想を言えば、親が自分を見ているということに、子どもが気づいていない状態で見られればいちばんいいでしょう。子どもが親の目を意識すると、普段と違う行動をする可能性が出てくるからです。
休み時間に楽しく幸せそうなら適応できていると言えます。中でも大事なのは友だち関係です。子どもの悩みでいちばん多いのが友だち関係のことだからです。
もちろん、休み時間には読書をしたり絵を描いたり、1人で過ごしたいという子もいます。そうした姿を見ると、親としては心配になるでしょう。でも、本人がそれでいいならよしとしましょう。過度に心配して「みんなと遊ばなきゃダメでしょ」と強制する必要はありません。
これは私がいつも言っていることなのですが、友だちと遊ばない子には次の4つのタイプがあります。今言った子は3番に当たります。
(1).友だちと遊びたいのになかなか遊べない。とくに避けられてはいないようだ
(2).友だちが遊びたいのになかなか遊べない。どうも避けられているようだ
(3).もともと友だちといるより1人でいるほうが好きなので1人で過ごしている。でも、必要に応じて友だちと遊んだり協力したりすることもできる
(4).そもそも友だちをまったく欲しがらない。一緒に遊んだり協力したりする気もない
休み時間の様子を見て、1、2、4に当てはまる場合は、配慮が必要になります。
1のタイプなら、先生に頼んで休み時間に一緒に遊ぶ子をあっせんしてもらうといいでしょう。学年始めの4月や5月においては、このタイプはけっこう多いと思います。小学校の3年生以下なら、先生がその子と馬が合いそうな子や遊びのリーダー的な子に「○○ちゃんも遊びに入れてあげて」と言ってあっせんしてあげるだけで、あっさり解決することもあります。
2のタイプの場合は、避けられている原因を探して対処する必要があります。
4のタイプの場合、もしかしたら発達障害と診断されるものかもしれませんので、早めに専門家に看てもらうとよいでしょう。もし発達障害だとわかれば、それに応じた対応方法をアドバイスしてもらうことができます。そうでないとわかれば、それはそれで、その子の個性に応じた対応方法をアドバイスしてもらうことができます。
専門家は、日々いろいろな子どもたちを見ていて経験豊富です。専門家に見てもらわないまま、素人の親があれこれ悩み続けても、展望が開けないまま苦しい時間が過ぎるだけです。子どものためにもなりません。
なお、昼休みの後に掃除時間を設けている学校も多いと思います。掃除時間も昼休みと同じく子どもたちの本当の姿が見られる時間帯ですので、見ておくといいでしょう。
授業中に手を挙げるかどうかを重視しすぎない
休み時間の次に見ておきたいのは、授業中の様子です。具体的には、授業の内容が理解できているか、集中できているか、先生や友だちの話を聞いているか、などを見ることになります。
1つ気をつけてほしいのが発表についてです。親としては、わが子が積極的に手を挙げて発表する姿を目にすれば、うれしくもあり誇らしくもあるでしょう。なかなか手を挙げないわが子を見て、家に帰ってつい叱ってしまったことがある人も多いと思います。
でも、発表するしないはその子の性格によるところが大きいので、あまり気にしないほうがいいでしょう。中には、全然わかっていないのに「はい、はい」と手を挙げる調子のいい子もいます。それは、そういう子のよさであり、その調子のいいところを活かしていけばいいと思います。
一方、わかっていても発表しない子は慎重派であり、軽々しく行動しないのです。それもその子のよさであり、それを活かしていけばいいのです。「なんでわかってるのに手を挙げないの」などと叱る材料にしないでほしいと思います。
授業を見るわけですから、当然担任の先生も見ることになります。もちろん、これもとても大事です。多くの親が気にするのは先生の年齢で、ベテランだと少し安心するようです。でも、私の経験ではベテランだから大丈夫とか、若手だから心配などということはありません。指導力も含めて、人間力といいますか、人間性といいますか、そういったものが大事です。
参観日は、子どもの話に出てくる友だちを見ておくいい機会です。前日に友だちの名前をもう一度聞いて、その子たちの席のだいたいの場所も聞いておくといいでしょう。できたら、その子たちとあいさつや会話ができればいいですね。そうすれば、それ以降、子どもが友だちの話をしたときに、より鮮明にイメージしながら聞けるようになります。
さらには、その子たちの親御さんともあいさつや会話をするなど、顔なじみになっておければ最高です。そうすれば、その後いろいろな情報交換をしたりお互いの交流を深めたりすることもできます。
また、万一子ども同士の間でトラブルが起こったときも、フランクな話し合いができるので問題解決につながりやすくなります。顔も見たことのない状態のままトラブルが起こったりすると、「相手の親はどんな人なんだろう」とお互い疑心暗鬼になり、問題解決がしにくくなります。
教室の掲示物もぜひ見ましょう。特にわが子の物は絶対に見てください。参観日の前というのは、けっこう掲示物などの準備が大変です。それぞれの子どもが書いた「めあて」、図工の作品や習字など、かなり気合を入れて準備しますから、ぜひ見てあげて、家に帰ったら褒めてあげてほしいです。
最後に挙げたいのは、学校や教室に危険な箇所がないかチェックすることです。例えば、2階以上の教室や廊下で、窓際にロッカー、机、テーブル、掃除用具入れ、荷物などが置いてあると、子どもが乗って窓から転落する可能性があります。転落事故は大事故になりますので要注意です。天窓に乗って転落する事故も時々起こっています。
また、庇(ひさし)、バルコニー、吹き抜け、階段などから転落する子もいます。運動場に張ってあるコースのロープが浮いていると、そこに足を引っかけて転ぶ可能性があります。また、遊具による事故も多いです。
こういうことを書くと、「そんなのは学校の仕事でしょ」という声が聞こえてきそうですが、そう言わずに、ぜひお願いしたいと思います。というのも、もちろん学校の職員や先生たちも気をつけてはいますが、やはり人間ですから慣れによる見逃しというものがありえるのです。
親たちの新鮮な視点で見ることには大きな意味があります。そして、もし気になることがあったら、学校や教育委員会に伝えてください。学級委員を通して伝えてもらってもいいです。なんといっても、子どもの安全のためです。
参観日を「叱るきっかけ」にしない
最後に改めて強調したいのは、先ほども触れたように、参観日を叱るきっかけにしないでほしいということです。家に帰って、つい「もっとしっかり○○しなきゃダメでしょ」と叱ってしまった経験がある人は多いと思いますが、これは子どもには切ないことです。
子どもは、「自分は親にダメな子だと思われているんだ」と感じてしまいますし、自己肯定感も下がってしまいます。それに、口で叱っても、それで改善することはまずありません。
それよりも、家に帰ったら何でもいいのでとにかく褒めてあげましょう。まずは、「がんばってたね」とか「今日は学校での様子を見られてうれしかった」と言ってあげてほしいです。同時に、より具体的に「□□がよかった」とピンポイントで褒めてあげることも大切です。
そのためには、学校で子どもの様子を見るときに、「褒めるネタはないかな」という意識を持ちながらプラス思考で見るといいでしょう。褒められれば子どもはうれしいですし、さらに頑張るエネルギーも湧いてきます。そして褒めてくれる親のことが、ますます大好きになります。
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提供元:4月授業参観に「行くだけの親」が見落とす本質 |東洋経済オンライン