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2019.03.22

統計で見る「小学生の通学路」の危険すぎる実態 |「小1の5月」「下校中」など"特徴"がある


あと1カ月もしないうちに学校は進学・進級の時期を迎えます。親の目が届きづらい通学路で事故を防ぐために確認しておくべきこととは(写真:マハロ/PIXTA)

あと1カ月もしないうちに学校は進学・進級の時期を迎えます。親の目が届きづらい通学路で事故を防ぐために確認しておくべきこととは(写真:マハロ/PIXTA)

小1の歩行中の死傷者数は小6の8倍

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間もなく学校は春休みに入り、その後すぐに進学・進級の時期になります。私は小学校で23年間教壇に立ってきましたが、その経験から声を大にして言いたいことがあります。

それは、春休みの間に子どもたちが登下校で使う通学路の安全について、ぜひ親子で確認しておいてほしいということです。

小学校に入学する新1年生の子どもについては、絶対にやっておくべきです。園児だったときは親の送り迎えがあったので安全でしたが、これからは自分で自分の身を守らなければなりません。

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警察庁交通局の最新の統計によると、2013年から2017年の5年間における小学1年生の歩行中の事故による死傷者数は7461人で6年生の3.5倍です。また、死者数は32人で6年生の8倍にもなります。

最新の統計 ※外部サイトに遷移します

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小学生の歩行中の月別死傷者数でいちばん多いのは5月です。そして、6月、10月、4月と続きます。なぜ、4月ではなく5月がいちばん多いのでしょうか?

月別死傷者数 ※外部サイトに遷移します

長年の経験からの私見ではこうです。4月は子どもたちも緊張していますし、大人たちも春の交通安全運動などによって意識が高まっています。地域のボランティアやPTAなどによる見守りも盛んに行われていますので、その成果も出ていると考えられます。ところが、5月になりますと、子どもたちも慣れてきて緊張がゆるみますし、大人による見守りも4月より少なくなります。こういったことで、5月は要注意なのです。

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また、同統計によると、時間帯別死傷者数では、多い順に15時台、16時台、17時台、7時台となっています。そして、通行目的別死傷者数では、多い順に下校中、登校中、遊戯、訪問、買い物となっています。

時間帯別死傷者数 ※外部サイトに遷移します

通行目的別死傷者数 ※外部サイトに遷移します

この2つの統計から見えるのは、登下校中が危険であり、特に下校中は要注意ということです。そして、これらの2つのいずれにおいても、1年生と2年生が特に多くなっています。

慣れによる慢心がいちばん危険

同統計のいろいろなグラフを見ると、2年生は1年生に劣らず危険だということがわかります。過去小学生たちと接してきた経験から、2年生は注意力や敏捷性において1年生とそれほど変わらないのに、慣れによる緩みがあるのではないかと思います。

また、2年生の親たちにも、1年生の親たちよりはるかに慣れによる緩みがあります。無事に1年生を乗り切った安堵感もあるでしょうし、今まで緊張してきた反動もあるかもしれません。こういったことから、子どもの安全についての配慮や指導においても、緩んでいる可能性があります。

また、以前、2017年に警察庁が発表した別の統計によると、2012年から2016年までに交通事故で死亡した小学生は175人で、その内訳は、女子児童55人に対して男子児童は120人でした。なんと、男子は女子の2.2倍です。警察庁によると、男子児童のほうが活発で飛び出しなどの危険性が高いのではないかということです。これは、テレビや新聞でも大きく報道されたので見た人も多いと思います。

テレビ ※外部サイトに遷移します

うちの子は1年生ではないから大丈夫と高をくくることなく、どの学年においても、一年に一度、この時期にぜひ通学路の再確認をしてほしいと思います。何度も言いますが、慣れによる慢心がいちばん危険だからです。また、通学路の環境も一年経てばいろいろな変化があり、以前は問題なかったところでも新たに危険が発生していることもありえます。

親子での確認は、できるだけ実際の登下校と同じ時間帯に行うといいでしょう。通勤ラッシュの時間帯とそれ以外の時間帯では、同じ道でもまったく様子が違ってくるからです。実際に親子で通学路を歩きながら、危険箇所を確認したり、安全な歩き方や横断の仕方を身体を使って覚えさせたりすることが大事です。

また、その際は子どもの目の高さで安全確認しましょう。大人の目の高さでは見渡せても子どもの目の高さでは不可能ということもあるからです。

ここで別の統計を見てみます。警視庁の「子供の交通人身事故発生状況」という統計によると、子どもの交通事故でいちばん多い原因は飛び出しです。

これは、ほかの各種調査でも明らかになっています。ですから、通学路の中で飛び出しの危険があるところは必ず確認してください。そして、「ここで道路に飛び出すとどうなるかな?」と言って考えさせましょう。また、「止まる」「見る」「待つ」「安全に渡る」などの行動がしっかりできるように、実際に体を使って繰り返し練習しましょう。とにかく、体で覚えることが大事です。

子供の交通人身事故発生状況 ※外部サイトに遷移します

徹底指導しておきたいこと

また以前、私が子どもの交通指導を行う警察官に聞いた話では、子どもは近づいてくる車のスピードを判断できず、渡れると思って飛び出して事故に遭うことも多いそうです。ですから、「車が来たら待つ」「迷ったときは待つ」を徹底指導するようにしてください。

飛び出しについて、意外に要注意なのが横断歩道です。子どもは横断歩道なら安全と思い込んで、確認しないまま飛び出してしまうことがよくあります。実際、先ほどの警察庁の統計を見ると、事故類型別死傷者数で最も多いのは横断中であり、そのうちで「横断歩道」での事故が39.1%と、約4割にもなります。このことは大人も子どももよく覚えておく必要があります。

事故類型別死傷者数 ※外部サイトに遷移します

さらに私の経験で言いますと、交差点での待ち方も教えておく必要があります。子どもたちは交差点で信号待ちしているときなどに、車道ぎりぎりの場所で立っていることがよくあります。これだと、特にバス、トラック、ダンプカーなどの大型車両が曲がるときに非常に危険です。なぜなら、大型車両が曲がるときは、後輪が前輪よりもかなり内側を通るからです。

この前輪と後輪の差を内輪差といいますが、大型になればなるほどこの内輪差が大きくなります。でも、子どもたちは内輪差というものをよくわかっていません。車道ぎりぎりの所に立っていると、前輪は大丈夫でも、その後の後輪に巻き込まれる危険性が高まるのです。ですから、現地で実際の大型車が曲がるところを観察させながら内輪差について教えてください。そして、車道から1メートル下がって待つように教えてください。

通学路自体の安全性についても親の目で見て確認しておくことも大切だと思います。というのも、学校が指定する通学路がある場合も、親の目でよく見てみると別の道のほうが安全と気づくこともあることだからです。

その場合は学校と話し合って変更してください。学校指定といっても、子どもの数は多いわけですから、どの程度まで個々の子どもの通学路の安全性を見極めているか大いに疑問です。本当にわが子の安全を考えたら、学校任せではなく、やはり親が前面に出る必要があります。

小学校3年生以降は自動車での死傷者が増加

ここまで歩行中のことを中心に見てきましたが、実は自転車についても気をつける必要があります。

警察庁の同統計によると、小学3年生以上ですと、歩行中より自転車乗用中の死傷者のほうが多くなっています。しかも、学年が上がれば上がるほど多くなっています。私見では、これは登下校中というより、遊び、友達の家に行く、塾や習い事へ行く、買い物などのときと考えられます。ですから、ヘルメット着用の必要性も含めて、自転車の安全な乗り方についてもしっかり指導しておきましょう。

こうした以上のような交通安全の対策と同時に、不審者対策についても確認しましょう。人通りの少ない道とか周囲から見えないような道など、子どもだけで歩くと危険な箇所があるかもしれません。万が一被害に遭いそうになったとき、どうすればいいかということも、シミュレーションしておきましょう。

「こども110番の家」の場所を確認することも大事です。できるだけ親子でその家や店を訪問して、実際に中に入って挨拶しておくと、いざというとき子どもが入りやすくなります。また、「こども110番の家」がいつもすぐそこにあるわけではありませんので、とにかく近くの家や店に逃げ込んで助けを求めることの大事さも伝えておきましょう。河川、用水路、踏切などの危険箇所についても確認しておきましょう。

学校の通学路だけでなく、遊び、友達の家に行く、塾や習い事へ行く、お菓子を買いに行く、などで通る道でも行いましょう。何といっても、大事なわが子のことです。事故が起こってからでは遅いのです。「後悔先に立たず!」ですから、ぜひ実行してください。

ここまで主に小学生について見てきましたが、警察庁の統計の「中学生・高校生の学年別の状態別死者数・死傷者数」によると、実は交通事故による死傷者数と死者数は、小学生よりも中学生のほうが多く、さらに中学生よりも高校生のほうが多くなっています。

中でも特に目立つのが自転車による事故です。中学生や高校生を持つ親はこのことを頭に入れておいて、必要な指導をしてほしいと思います。

中学生・高校生の学年別の状態別死者数・死傷者数 ※外部サイトに遷移します

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提供元:統計で見る「小学生の通学路」の危険すぎる実態|東洋経済オンライン

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