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2019.03.09

花粉飛散量と症状の強さ、実は一致しない理由│花粉症と天気予報との深い関係


花粉症の本格的なシーズンが到来。きめ細やかな花粉症の予報を行う大手気象会社のウェザーニューズに予報のあれこれを聞いてみました(写真:あんみつ姫/PIXTA)

花粉症の本格的なシーズンが到来。きめ細やかな花粉症の予報を行う大手気象会社のウェザーニューズに予報のあれこれを聞いてみました(写真:あんみつ姫/PIXTA)

厳しい冬が終わりに近づき、暖かい日が増えてきました。春の訪れはうれしいものですが、多くの人を悩ますものが花粉症です。

朝のニュースの天気予報や、天気予報アプリに花粉情報が掲載されるくらい、花粉の飛散と天気には密接な関係があります。しかし、意外なことに気象庁では花粉飛散量の予報は行っていません。花粉飛散量の予報を行うのは環境省と民間の気象会社なのです。

どのようにして花粉飛散量の予報をするのでしょうか。「花粉プロジェクト」という名できめ細やかな花粉飛散量および症状の予報を行う、大手気象会社のウェザーニューズに聞いてみました。

花粉症はどう予報する?

なぜ、民間気象会社が花粉症の予報を行うようになったのでしょうか。ウェザーニューズのBtoS事業コンテンツ運営主責任者である森田清輝氏によると、「ウェザーニューズでは、『お客様がほしいのは天気予報ではない。今日は傘が必要なのかどうか、洗濯物を干せるのかどうかが知りたいのだ』という考え方が情報発信のベースにあります」。

もともとウェザーニューズには、航空機向けの天気予報を長年配信してきた実績がありました。航空機には火山灰が大敵です。火山灰の中の鉱物が機内に侵入すると、故障につながるからです。だから、風のシミュレーションを行い、火山灰が飛散する方向を正確に予想しなければいけません。そして、花粉も火山灰と同様に風に乗って運ばれるものです。そこで、航空機向けの天気予報のノウハウを応用させて、花粉症の予報を始めたというわけです。

さて、花粉症の予報は大きく二種類あります。まずは、毎年シーズン前に発表される「今年の花粉の飛散量は多いのか、少ないのか」という長期予報。そして、「今日は花粉がたくさん飛んでいるかどうか」という短期予報です。

長期予報の算出根拠は、大きく2つあります。1つ目の根拠は、前年の夏と秋の天候です。スギの雄花は前年の夏に作られます。そして、前年の夏に晴れの日が多いほど植物の光合成が盛んになり、花粉を出すスギなどの雄花が成長する傾向にあります。

そして2つ目の根拠は、今年が花粉の「当たり年」かどうかです。花粉の多い年と少ない年は、交互にくる傾向にあります。なので、前年の花粉飛散量が少なければ、今年は多い傾向、すなわち「当たり年」であるといえます。

さらに、ウェザーニューズでは長期予報に第3の根拠も取り入れています。それは、一般人による実況です。天気予報アプリ「ウェザーニュースタッチ」のユーザーから、普段から目にするスギやヒノキの雄花が去年より多いか少ないかを送ってもらうのです。

短期予報はどのような根拠に基づいているのか

では、2019年の花粉の飛散量はどのような傾向になるのでしょうか。ウェザーニューズによると、「東日本を中心に6年ぶりの大量飛散のおそれ」があるとのことでした。

その予報の根拠は、まず2018年の夏が記録的な猛暑だったということです。そして、2018年は、ヒノキ花粉は多かったものの、シーズン全体では花粉は少なかったため、2019年は「当たり年」である可能性が高いのです。さらに、実際にユーザーからの雄花リポートも、「例年・昨年よりも多い~同じ」という回答が多かったそうです。

一方、短期予報はどのような根拠で出しているのでしょうか。実は、花粉が飛びやすい気象条件というものがあります。それは、よく晴れていて湿度が低く気温が高い日、雨の日の翌日、そして風の強い日です。

まず、湿度が低く、気温が高いほうが花粉の飛ぶ量が増えます。雨の日は花粉の飛散が抑えられますが、雨の翌日に晴れると、雨の日に飛ばせなかった分と合わせた量の花粉が飛ぶのです。さらに風が強いと遠くまで花粉が運ばれます。

さて、天気予報と同じく、花粉症も、予報のためには観測が欠かせません。花粉の飛散量はどのように測定しているのでしょうか。一般的な方法として挙げられるのは、「ダーラム法」です。

(提供:ウェザーニューズ)

(提供:ウェザーニューズ)

ダーラム法とは、野外にワセリンを薄く塗ったプレパラートを24時間置き、そこに付着した花粉を人が顕微鏡で数えるというもの。これは、病院や自治体などでは現在も行われている花粉の観測方法で、手間がかかることもあり、どんなに早く情報を更新しても1日1回が限度です。また、花粉の量が非常に多い場合は、数え間違えることもあるため、観測の精度もさほどよくはありません。

ウェザーニューズの「ポールンロボ」とは

一方で、環境省には、「はなこさん」という愛称の花粉観測システムがあります。こちらは、花粉飛散データを自動的に収集し、1時間ごとに更新して表示するというものです。花粉自動測定器は、約1m四方の底面積の大きさで、百葉箱内に設置されています。

測定器内に内蔵された吸引ポンプで大気を吸引し、レーザー光を照射することで大気中の花粉の粒子の大きさ(すなわち、花粉の種類)や数を計測する仕組みです。2007年にスギ花粉の少ない沖縄県を除く全国で花粉飛散状況が確認できる体制が確立し、現在では全国約130カ所の観測拠点があります。

ウェザーニューズでは、以前はダーラム法で花粉の飛散量を測定していました。しかし、2005年からは独自に開発した、「ポールンロボ」と呼ばれる自動計測機によって花粉の飛散量を測定し、データを収集しています。

観測方法は、環境省と同様に、大気を吸い込んでレーザーを照射するというもの。しかし、観測拠点は全国で約1000カ所もあります。なぜここまで多くの観測拠点があるのでしょうか。それは、ウェザーニューズが「ポールンロボ」を一般人に貸し出し、観測してもらうという手法をとっているからです。

ポールンロボは、初めて登場した2005年から試行錯誤を繰り返し、高精度かつ使いやすくなるように改良されてきました。各家庭に長期間置いてもらうものなので、愛着を持ってもらえるように、初代機から顔のような形をしているのが特徴です。

ポールンロボの大きさは直径約15cm程度で、「3歳児の頭の大きさ」を意識した形になっています。吸い込む大気の量も毎分60Lと、子どもの肺活量の平均値と同じ。口のように見える、下のほうの割れ目から大気を吸い込み、花粉の飛散量を測定します。

ポールンロボ。大きさは直径約15cm程度で、「3歳児の頭の大きさ」を意識した形になっている(提供:ウェザーニューズ)

ポールンロボ。大きさは直径約15cm程度で、「3歳児の頭の大きさ」を意識した形になっている(提供:ウェザーニューズ)

飛散量によって目の部分の色が変わるため、設置場所でどのくらいの量の花粉が飛んでいるのかが、すぐにわかる仕組みです。測定されたデータはWi-fi経由でウェザーニューズに送られ、ウェザーニューズの天気予報アプリ「ウェザーニュースタッチ」に表示されたり、予報に活用されたりしています。

計測は根強いファンに支えられている

このポールンロボは貸出型。というのも、大気を吸い込んで花粉の飛散量を測定するので、徐々に機械の中に花粉やチリなどがたまってしまうからです。それを取り除くには、専門スタッフの手で分解してきれいにしなければいけません。

ウェザーニュースタッチの「花粉.Ch」と呼ばれる花粉情報のページ。この画像は花粉の実況MAPで、ポールンロボによる観測結果が表示されている(提供:ウェザーニューズ)

ウェザーニュースタッチの「花粉.Ch」と呼ばれる花粉情報のページ。この画像は花粉の実況MAPで、ポールンロボによる観測結果が表示されている(提供:ウェザーニューズ)

ですから、花粉症シーズンが終わったらポールンロボは再びウェザーニューズが回収し、ウェザーニューズ内の専門の部署で分解して掃除します。そして、秋ごろに翌年設置を希望するユーザーを募集します。ユーザーが決まれば、修理したり補充したりして、動作確認を行ったうえで1月中旬ごろに再びユーザーの元に届けるのです。

「ポールンロボを返却していただくときに『今年もありがとう』『またうちに戻ってきてね』などとメッセージを添えて送ってくださる方もいるんですよ」(ウェザーニューズ)。根強いファンに支えられて観測が行われていることがうかがえます。

このように、たくさんの観測地点できめ細やかな観測を行うことで、予報精度も年々高くなってきています。例えば、ポールンロボによるリアルタイムな観測によって、天気予報アプリのウェザーニュースタッチを見れば、花粉飛散量の実況や1時間ごとの花粉飛散量の推移もわかるようになりました。

また、ウェザーニューズでは、花粉飛散量だけでなく、「今日は花粉症の症状がどの程度か」も予測しています。

実は、花粉の飛散量と症状の強さは必ずしも一致しません。例えば、西風が吹いているときは、スギの木の東の地域にはたくさんの花粉が飛んできますが、西側の地域にはあまり飛んできません。単純に考えれば、東の地域にいる人のほうが、症状が出やすくなるというわけです。

飛散量のピークが14時でも、朝につらい人が多いワケ

もちろん、風向きだけでなく、地形の影響など複雑な要素が絡み合いますが、「この地域の人の症状が出やすいのは、この気象条件のとき」という傾向があるのです。

花粉症の症状の予測を行うためには、花粉の飛散量だけでなく、そこにいる人から「症状が出たかどうか」の報告も必要です。ウェザーニュースタッチのユーザーが症状を報告し、そのデータを集約・分析することで、症状の予報も可能になっているのです。

こうして、飛散量と症状の観測データを集めることで、わかってきたことがあります。それは、1日の飛散量のピークと症状がつらい時間のピークは必ずしも一致しないということです。ピークの時間は14時ごろでも、朝に最も症状のつらさを訴える人が多いのです。これは、寝ている間に吸い込んだ花粉が、目覚めとともに強い症状を引き起こしたり、床や布団などに積もったハウスダストが、起床時に巻き上げられたりするからだと考えられています。

花粉症の症状のように、一見天気とは関係のない要素も予報につながるのは意外に感じられるかもしれません。とにかく予報にはたくさんの観測データが必要なんですね。

「気圧が変化すると体がだるい」という気象病だけでなく、花粉症も気象と密接に関係する病気。気象データというものは、本当に日常生活に役に立つものだと実感します。

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提供元:花粉飛散量と症状の強さ、実は一致しない理由│東洋経済オンライン

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