2016.12.23

後からわかった不眠の悪影響・「受診するほどじゃない」と思っている方へ


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こんにちは、睡眠コンサルタントの土井です。連載の第6回目となります。私は幼い頃から、不眠に苦しみ約20年もの間、不眠に悩み苦しんできました。また、病院での治療も10代の頃からはじめ、睡眠薬の服用も5年以上の経験があります。そんな私も紆余曲折あり、連載1回目でご紹介した通り、色んな方法を試しながら、やっと数年前に不眠を克服することができました。

前回、前々回と病院の選び方や診察でのポイントに関してお話してきました。「でも私は、病院に行くほどじゃないから…」。そう思われる方も少なくないと思います。実際私のもとに相談に来られるかたも、「睡眠で悩んでるけど病院に行くほどじゃないと思って、今まで一回も行ったことがなかった」とおっしゃる方が多いのです。

ある調査では、諸外国と比べて日本では不眠の対処法として医療機関を受診する方が少なく、その分「寝酒」をされる方が多いというデータもあります。確かに日本では病院や薬での治療にネガティブな印象があります。私も実際に病院に行くまではそう思っていましたし、治療をはじめてからも家族もあまりよい印象は持っていないようでした。

しかし、怖いのが病院の診察を避け、そのまま不眠を放置しつづけることです。「不眠くらい」と思われるかもしれませんが、不眠を放置しておくと様々な影響があります。今回は、不眠で感じた日常生活への影響を私自身の経験を元に考えていきます。

身体より先に、精神的に…私が感じた不眠の影響

私が不眠を感じたのは幼稚園や小学生の頃からですが、治療を開始したのは19歳の時です。えらそうに言っている私自身も10年以上放置していたわけです。やはりその時私も「自分は病院に行くほどではない」と思っていたのです。日々寝付くのに2時間〜3時間かかり、時には朝までまったく寝付けなかった日が定期的にあったにもかかわらずです。

その時はなかなか気づくことができませんでしたが、今振り返ると不眠によって日常生活に様々な影響があったなと感じます。わかりやすいのは、日中の眠気とそれによる作業能率の低下です。これは皆さんも想像しやすいことだと思います。

不眠だと結果的に睡眠時間が減少するので、日中の眠気が強く出ます。睡眠不足の日はうまく言葉がでてこなかったり、考えがまとまらなかったり、眠気により脳の働きが低下しているような感覚もありました。しかし、それ以上に私自身が悩まされたのは精神的な影響です。

眠気は栄養ドリンクやエナジードリンクなどカフェインでなんとかごまかせないこともありませんでした。若かったこともあり、身体自体はたとえこのまま不眠でも「がんばればなんとかなるかも?」という感覚がありました。ところが、身体より先に精神的な部分で先に大きな影響がでました。不眠により十分に眠れない期間が何ヶ月も続くと、今まで普通にできたことが突然負担に感じるようになりました。憂鬱な気持ちになることが増え、次第にやる気がでなくなってしまうのです。

特に落ち込むようなことや強いストレスを感じることがあったわけではありません。精神的に元気だったころは、気合でなんとか乗り切れた不眠の悪影響に少しずつ踏ん張りがきかなくなってしまいました。すると、今まで気づかないふりをしてきた体調の悪化をはっきりと感じるようになり、日常生活もままならないという状態になりました。

そこからはさすがに限界を感じ、ゆっくり休みをとることになりました。睡眠を十分にとれるようになったことでその状態からは復活することができました。これはあくまで私の経験なので、必ずしも不眠によりこのような影響がでるわけではありません。私の場合はその他の要因も多少影響があったのかもしれません。しかし、知らず知らずのうちに不眠が日常生活に大きな影響を与えているのは間違いないのです。

あとからわかる不眠の悪影響

私自身の体験だけでなく、不眠やそれにともなう睡眠不足によって作業能率の低下や精神的な影響、さらに生活習慣病のリスクの上昇などがいくつかの研究ですでに確認されています。

作業能率の低下は自覚しやすいですが、精神的な影響や生活習慣病のリスクなどはあとになってやっと気づけるものであり、その時はなかなか気づくことができません。精神的な影響という点では睡眠不足により、情動をつかさどる脳の中の扁桃体が過剰に反応することによって不安・抑うつが強まるということが国立精神・神経医療研究センターの研究で明らかにされています。

また、生活習慣病のリスクが上がると聞くと驚かれるかもしれませんが、よく考えると睡眠も大事な生活習慣のひとつです。そう考えると睡眠と生活習慣病のリスクの関連は不思議なことではありません。健康のために運動や食事を気にかけられている方は多いですが、睡眠となるとなぜか軽視されがちです。

しかし、一日でも睡眠不足があれば体感としてすぐ感じれるように、睡眠はあなたの生活にとって大きな影響を与えるものです。本来は食事や運動よりすぐ効果が感じられやすいもののはずですが、睡眠自体が目に見えないゆえ気にかけられることが少ないのかもしれません。知らず知らずのうちに私たちは不眠や睡眠不足による悪影響を受けているのです。

不眠は心と体のSOS、無視せず耳を傾けよう

不眠は心と体のSOSです。「このまま放置すると大きな影響がでるよ!しっかり睡眠を見直さないとだめだよ!」と心と体が警告をしてくれているのです。

不眠や睡眠の悩みを感じたら、無視をせずに睡眠を見直してあげましょう。時には睡眠だけでなく、睡眠の悩みを引き起こしている働き方・生き方を見直すきかっけにもなるかもしれません。

早めの対処が睡眠の悩みを解決するのにとても大切なことです。まずは自分でできる生活習慣を見直すところからでもかまいません。1人では症状が改善しないようであれば、医療機関などをうまく活用しましょう。「睡眠薬が怖いから病院には行かない」という方は、最近では薬を使わない認知行動療法を行っている医療機関もあるので、そちらを利用してみるのもよいでしょう。

【参考:『睡眠薬に頼らない不眠症治療、認知行動療法まとめ』】

photo:Thinkstock / Getty Images

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提供元:後からわかった不眠の悪影響・「受診するほどじゃない」と思っている方へ|Fuminners

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