2019.01.22
「冬ボーナスが消える」貯まらない人のクセ| 貯まる人と、貯まらない人の「家計簿」の差
家計簿のスタートにどうして1月はふさわしくないでしょうか?(写真:Naoaki/PIXTA)
毎年1月は、「今年こそ貯める!」というフレーズが、時候のあいさつのように出現する時期でもある。そのココロは「ボーナスから貯めるつもりが、年末年始に使いすぎて」という反省もあるし、2019年は一大散財時期になりそうな10連休も控えている。
今年は年初から家計簿をつけて節約しよう、と気合を入れた人もいるかもしれない。しかし、実は1月は家計簿のスタートに最もふさわしくない月なのだ。
1月は何かとイベントが多く支出が増えやすい月
そもそも家計簿とは、使ったお金を記入するものだ。正しいとされる家計簿のつけ方は、最初に費目別に予算を立てること。食費が4万円、レジャー・交際費が2万円、被服費が1万円……というように、お金の配分をするわけだ。
しかし、1月はそれがいきなり崩れてしまう。帰省や旅行で外食は増えるわ、新年会は目白押しだわ、初売りにバーゲンと買い物欲が盛り上がるわと、予算金額を早々に突破、まさに絵に描いた餅となる。
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さらに、そもそも帰省先で親戚と一緒に行った外食は食費なのか? それとも交際費なのか? ガソリン代は交通費だが、旅行に行った分は旅費なのか? 家計簿初心者はいちいち判断に悩んでしまう。
新年早々に家計簿に挫折したという人の声を聞くと、「使途不明金が多くて収支が合わない」や「何の費目に入れていいかわからず、“その他”ばかり増える」という嘆きが多い。「使途不明金」や「何の費目に入れていいかわからない支出」がいちばん発生するのが1月なのだ。
しかも、何かとこの時期は忙しい。そのうちまとめてつけようと後回しにしているうちに、まっさらなままの家計簿が引き出しの中で忘れ去られることになる。なので、挫折しても仕方がないのだ。あなたは悪くない。
1月は割り切って「正月関連支出」の項目を作り、それに該当する支出はまとめて計算したほうが、来年からの目安になるだろう。そのあとは、平常モードの支出を淡々とつけていく。ちなみに正月関連支出は、ボーナスが出る人ならそっちから計上し、出ない人は来年に向けて「特別支出用貯蓄」を作っておくのがいい。「よし、今年こそ家計簿をつけるぞ!」は1月の給料が出てから始めればいいと思う。
貯まらない人の家計簿は「現実逃避型」
とはいえ、家計簿をつけていれば自然にお金が貯まるようになるかと言えば、それはない。筆者が雑誌編集者時代に貯めている人と貯まらない人の家計簿を見てきた経験では、そのつけ方に大きな違いがある。
貯められない人は、
(1)予算を決めていない、あるいは現実の支出と合っていない
(2)「その他支出」に入る金額が多い
(3)支出も収支も集計していない
という傾向があった。
この3つの根っこは同じところにある。(1)は、貯めたい・節約したい意識はあるものの、それが現実から乖離している状態、(2)は、使途をはっきりさせたくない支出、たとえば気晴らしや“自分へのご褒美”に使ったお金を紛れ込ませてある状態、(3)は、今月は赤字か黒字かはっきりさせたくないという意識。まとめて言うと「現実は直視したくない」心理の表れを示しているわけだ。
逆に貯めている人の家計簿の特徴は明快で、
(1)月予算は当然、週ごとの予算も書いている
(2)月の支出合計だけでなく、週ごとの合計や、予算からそれを引いた残金も書いている
(3)月末に振り返りのコメントをつけている
貯めていない人とは逆に、現実から目をそらさない仕組みが満載だ。
家計簿をつけるとなぜお金が貯まるのか。それは、自分が使えるお金の範囲で支出を抑えるブレーキになるからだ。ひと月に使える金額を知り、週に使える金額を知り、そしてあといくら使えるかを知っておく。
そのために大事なことは、使ったお金の明細を細かく書くことよりも、「あといくら使えるのか」を意識することにほかならない。使いすぎていると思えば支出を控えるし、お金を出す前に一歩引いて考えるようにもなる。別にそれはケチではなく、持っている金額内でお金を使うという当たり前の認識だ。だからこそ、(2)のように「あといくら使えるか」を明快に記入するのが肝なのだ。
でも、予算から使ったお金の引き算をやってみると、家計簿上の残金と実際の財布の中身が合わないということがよくある。いわゆる使途不明金だが、それが嫌で残金を書きたくないという人も。だったら簡単で、実際の財布の中身を書くだけでもいい。週末でも、月曜でもいいので、財布にあといくらあるかを週に1度書いておくと、それだけでも十分節約意識が生まれるだろう。
実際の残高が合わないのは、家計簿アプリを使っていても生じるはずだ。いくらキャッシュレス決済が増えても、何かしら漏れる支出はある。1円単位できっちり合わせるのは難しい。使った金額の記録はアプリに任せるとして、手帳の欄外でもスケジュールアプリでもいいので、財布に残っている金額を書いておく。それだけで、うっかり赤字は防げるだろう。
ムリに家計簿をつけなくてもお金は貯まる
そもそも家計簿はつけなくてはいけないのだろうか。いろいろなご意見はあると思うが、筆者は少なくとも家計簿をつけずともお金は貯められるというスタンス。「収入-貯蓄=生活費」というのが貯蓄の公式だからだ。
家計簿とは、生活費の内訳を書くためのもので、貯蓄の記録ではない。貯蓄が先取りで確実に行われているのなら、極端に言えば残りの生活費はどう使ってもいいわけだ。
しかし、貯まらない人の場合は、「収入-生活費=あれば貯蓄」という順序なので、生活費のムダを見つけるために家計簿をつけなくては、と考えがちだ。しかし、生活費のムダを見つける目的でつけるとなると、家計簿はさらにハードルが高い。何を買ったかをいちいち見直し、集計もし、残高も出し、カード払いや特別支出も別の欄に書き分けて……の作業は、貯蓄ベタの人には苦行だろう。
もっと簡単に家計の問題点がわかる方法はないものか。大丈夫、ある。雑誌などが定期的に実施している「家計診断募集」という企画に応募すればいい。別にファイナンシャル・プランナーの診断を受けろというのではない。応募のためには、たいてい家計の収支表を書かされる。
まず収入、月の貯蓄、月払いの保険、そして毎月かかる生活費を記入する一覧表だ。生活費の内訳は、住宅費、公共料金、通信費、食費、日用雑費、レジャー・交際費、被服費、子ども費、こづかいetc.といった、おなじみのもの。かかっている平均の金額を記入し、最後に月収から支出の合計を引いて収支を出す。ひと月のお金の内訳が、これですっきり見える。小学生でも作れる単純な表だ。
もちろん、本当に家計診断特集に応募しなくていい。こうした収支表を書いているうちに、たいていの人は自分の問題点に気づくからだ。どの費目にお金を割いているかがよく見えてくる。
雑誌の企画でも「これを書いて、はじめて家計全体がどうなっているか自分でわかりました」と言われることは多い。集計してみて、わが家はこんなに赤字だったのかと気づくケースもある。月の赤字に「6」を掛け算すると、その数字がきれいに半年ごとのボーナスの中に納まっている赤字家計のなんて多いことか。これではボーナスが残らないはずだとはっきり見えてくる。
とはいえ、月の収支をまとめて俯瞰する収支表がついている家計簿はほとんどない。先にも書いたように役割が違うからだ。ムダを見つけたいと思うなら、まずこうした収支表を書いてみて、使いすぎだと感じる費目だけ取り出して、それだけ集中的に家計簿や家計簿アプリに入れて管理するという手もある。それなら、つけ続けるのもそれほど苦ではないだろう。
家計簿以外でムダな出費を見つける方法
貯めたいけれどやっぱり家計簿が苦手というなら、別の方法をお勧めする。自分がよくお金を使っている店や状況を割り出すやり方だ。できればひと月分のレシートを集め、自分がどこで、よくお金を払っているかを割り出そう。家計簿アプリでレシートを撮影している人や、キャッシュレス決済の履歴が残っている人はそれも使える。
よくあるケースは、なんとなく習慣化しているコンビニやカフェでのちょこちょこ出費だ。無意識な出費も、毎日となると、かなりの金額になる。ネット通販のポイント倍増デーに必ず買い物するのが習慣化している人もいるだろう。計画的に買っているならいいが、何か買わないと損だと思っているならムダ出費だ。
自分がよくお金を使っている場所や日にちがわかれば、そこに近づかない(買い物しない)日を作る。寄り道せずまっすぐ家に帰り、スマホに届く「今日はセール!」の通知を消してしまえば、しなくても特に困らない支出を減らせるだろう。
しかし、今話題のコード決済アプリは難題だ。事前にチャージして支払うものもあれば、クレジットカードにひも付けるものもある。オートチャージの場合はますます複雑だ。さらにはひも付けできるカードの海外ブランドが異なる場合もあるので、1枚に集約できないこともある。
カオス状態の今は、支払い履歴がスマホに残ることを利用して、後払いタイプは決済を利用した日に家計簿に記入し、そのつど現金を取り分けておくのが無難ではないだろうか。ポイント還元は魅力だが、相当の上級者でないと家計管理の混乱のもとになりそうだ。オトクというフレーズには落とし穴がある。今は遠巻きにしておくのも手だろう。
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提供元:「冬ボーナスが消える」貯まらない人のクセ|東洋経済オンライン