2018.12.25
あなたのマンション、修繕積立金が結構ヤバい| 30・40代が知っておくべき「管理組合の内情」
新築マンションを買うとき、修繕積立金は安く設定されていることが多い。だがはたして、20、30年先も対応できるのだろうか(写真:吉野秀宏 / PIXTA)
シェアリングやミニマリズム(必要最小限の物で暮らすこと)の時代と言われますが、マンションを所有することは、やっぱりサラリーマン家庭の夢の1つでしょう。
国土交通省によると、2013年(平成25年)の持ち家比率は61.8%。人生100年時代を考えると「家賃を出し続けるより、マイホームを手に入れほうがお得」と思っている人がまだまだ多いようです。実際20代、30代でも夫婦共働きなら、憧れのタワーマンションだって、それほど遠い存在ではないでしょう。
マンション管理新聞の調査(2007年調査開始)によると、2018年1〜3月に東京23区内で販売されたマンションの1㎡当たりの価格は80万6000円と、昨年記録した最高値(76万9000円)を更新しました。平均購入価格も5090万円と、アベノミクスの金融緩和による低金利や、建築費・人件費の高騰などの影響で、高値で推移しています。
賃貸にはない知られざる所有のデメリットとは
しかし、結婚が「人生のゴール」ではないように、マンションも購入がゴールではありません。とくに落とし穴なのが、賃貸にはなかった煩わしさや思わぬ出費です。とくに、子どもの教育費がかかる30~40代にとって、所有によるデメリットは甘く見ないほうがよさそうです。購入時にはわからない、問題点がいくつもあるからです。かくいう私も、自宅マンションの管理組合の理事を9年ほど経験しました。
今回はこうした私自身の経験と、ご相談者さんから伺った話を基に、マンション所有の「負の側面」についてしっかりお伝えします。どんなことがマイナスなのでしょうか。
まず、新築の場合、私たちがマンションの販売会社や建設会社とやり取りするのは原則、契約、完成後の内覧までです。入居後の窓口は「管理会社」と「管理組合」に変わります。「販売会社」が大手デベロッパーの場合、「管理会社」はその子会社であることがほとんどです。最も注意が必要といっても過言ではないのは、このケースです。
なぜなら、建物に瑕疵(欠陥)があっても、会社ぐるみで隠蔽されることが少なくないからです。新築後、何年も問題が表面化しなかったケースは枚挙にいとまがありません。記憶に新しいのが“傾きマンション”と言われた、三井不動産レジデンシャル販売の「パークシティLaLa横浜」(2007年竣工、2015年に施工不良発覚)です。この住宅の場合、住民の指摘を受けて発覚しました。こうした瑕疵は発覚した段階で真っ先に「管理会社」が「管理組合」に報告してしかるべきです。しかし、親子関係にある会社同士の場合、なかなかそうはいかないようです。
公正取引委員会が実施したアンケートによると、新築時の「管理会社」から新しい「管理会社」に変更を検討したケースが、全体の半数近くあるそうです。そのうち26.9%は、実際に変更していると言います。
新築1期目の理事にはなったほうがいいワケ
マンションには、「専有部分」と「共有部分」の2つがあります。自宅の居住部分は「専有部分」であり、エントランス、玄関ロビー、庭、駐車場、エレベーターなどは「共有部分」です。家の玄関扉やベランダも、ほとんどが「共有部分」になっていると思います。そのため、マンションによっては、玄関扉にかわいいリースを飾ることや、雨に濡れた傘を玄関の脇に置くことを禁止されているケースもあります。これは消防法と関わってくるのかもしれませんが、「意外と自由度が低い」と感じる人も多いようです。
こうしたマンションのさまざまなローカルルールを管轄するのが、「管理組合」です。所有者の中から選任された理事を中心に運営される管理組合では、基本月に一度の理事会が開催され、マンションの諸問題に取り組みます。
新築1期目の理事は、マンション販売会社が所有者の中から推薦して決まることが多いようです。何事も「初めが肝心」です。もし、皆さんが新築マンションを購入した場合は、1期目の理事に立候補をすることをお勧めします。たとえば、「ペットが飼える」という理由で新築マンションを購入したとします。販売会社主導で作られた「管理規約」には「ペット可」と書かれているものの、理事会で「ペット不可」という議案が通り、賛成多数になってしまった場合、この規約が変更されることがあるからです。
また、大型タワーマンションなどの場合、部屋のタイプが複合型になっているケースがあります。低層階の1LDKもあれば、最上階ペントハウスの4LDKの部屋もあります。すると、間取りによって部屋の価格が随分と違ってくるので、「マンションの価格=生活水準=価値観の相違」という状況が生まれます。
ある管理会社によると、間取りがほぼ同じようなマンションの場合、住民のスタンスはさほど違わないそうです。それが複合型のタワーマンションの場合、同じ棟内で意見がいくつも出てきて、折り合いがつきにくいといいます。そのような場合、理事会の多数決で決めますが、この多数決の票数に関しても、購入前に確認をしたほうがいいでしょう。なぜなら、下記の2パターンがあるからです。
A 1戸1票
B 所有する部屋の㎡数により票数が決まる
Aの場合、30㎡の部屋も、100㎡の部屋も、権利は1票となります。管理費は部屋の大きさに応じて変わるので、当然、広い部屋の所有者からは不満が出ます。このケースでは、数ある部屋タイプの中でも、最も戸数が多い部屋タイプの所有者の意見が、優遇される可能性が高いのです。
一方、Bの場合、広い部屋の所有者の価値観が優遇される傾向にあります。しかし、こればかりは正直、入居してみないとわからないものです。戸数が多いところだと、属性はさまざまだからです。タワーマンションの場合、事前に販売会社に、「AかBか」「どんな方が購入しているのか」を確認してみるといいでしょう。
将来の修繕費はマンションの販売価格に反映されない
実際、今マンションの管理組合で大きな問題を抱えているところがとても多いのです。それは、「修繕積立費問題」です。
販売時は、ほぼすべてのマンションが、「修繕積立費」を低く見積もっています。マンションには「大規模修繕工事」という、建物の安全性を保つために不可欠な施行を10年おきにしなくてはいけません。そのため、「長期修繕計画書」の作成が義務づけられています。販売時はその計画書の数字は少なめに見積もられているので、いざ1回目の大規模修繕工事の時期になると「お金が足りない」と騒ぎになり、修繕費の値上げや追加徴収が浮かび上がります。そのころには、中古で購入した住民もおり、入居後数年で予定外の大きな出費を抱え、大問題になるのです。
マンション管理新聞社が調査した、2018年1〜3月期新築マンション修繕積立費のデータによると、修繕積立費は1㎡当たり177円/月でした。標準的なファミリータイプである70㎡に換算すると、1万2390円/月です。実はこの数字、ここ2年ほど改善傾向にあります。
ところが、問題は中古物件です。5年未満は104円/月(70㎡換算で7280円/月)、5年以上10年未満は143円/月(70㎡換算で1万0010円/月)、10年以上20年未満は166円/月(70㎡換算で1万1620円/月)となっています。
このように、国土交通省の指導で新築マンションは改善傾向にあるものの、この数字でもまだ安心できません。20年未満の中古物件を購入する際は、積立費などに関して特に注意が必要です。
国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(2011年)では、15階未満で5000㎡未満(建築延床面積)の1㎡当たりの平均値は218円/月、20階以上で206円/月となっています。さらに、機械式駐車場や、エレベーターの設置数によっては、理想の修繕をするためにはさらに費用はかさみ、500円/月以上必要なケースもあるようです。実際に、2018年1〜3月期に販売された、築30年以上のマンションの修繕積立費の平均は205円/月とガイドラインを満たしていません。
近年は内廊下、ゲストルーム、ラウンジ、ジムなどのある「ホテルライク」なマンションも多く、こうした設備を維持するにはかなり厳しいものとなるでしょう。しかし、一度決まった規約を変えるのは至難の業です。管理組合の総会での決議には下記の出席・賛成が必要だからです(委任状・議決権行使含む)
・普通決議=過半数以上
・特別決議=4分の3以上
・建て替え=5分の4以上
「非公式な理事会」での話が独り歩きすることも
理事会に出席する人は限られているので、委任状をもらうのもひと苦労です。1つのタスクを終えるのに、膨大な時間がかかります。
また、やっかいなのが「非公式な理事会」です。それは親しい住民同士の井戸端会議の内容が独り歩きすることで、所有者間で勘違いする人が続出しやすいのです。それによって、誹謗中傷を受ける事例もよくあります。ほかにも、煩わしい事例をたくさん見聞きします。管理組合にはさまざまな考え、価値観を持つ人が集まります。このように、理想のマンションライフは簡単ではありません。
最後に、タワマンなど比較的高額なマンション購入、継続して住むとき、あるいは売却の際、心がけたい7つのことを記します。
高級マンションに住むには下記の覚悟をしてください。
高級マンション購入の7カ条
(1)購入前に「修繕積立金」「長期修繕計画」を念入りにチェックし、自身のライフプランニングと比較した資金計画を立てる
(2)新築購入の際は、会合にはまめに出席をし、入居者の雰囲気を確認
(3)中古物件の際には、販売会社に理事会の状況を確認する
(4)新築時・引っ越し時には、面倒くさがらず理事会に参加する
(5)離婚を検討する場合、安易に「マンションさえもらえれば」という判断はしない
(6)強い精神力を持つ
(7)エレベーター内のあいさつはマメにし、情報収集をする
昔と違い、これからは管理状態がマンションの資産価値を大きく左右します。ですので、将来的な資産価値の維持という全住民共通の目的を果たすべく、こうしたマイナス面をプラスにできるよう協力しながら管理組合を運営していきたいものです。
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提供元:あなたのマンション、修繕積立金が結構ヤバい|東洋経済オンライン