2018.08.30
共働き夫婦が始めるべきダブル投資のススメ│夫婦の「投資担当大臣」はどちらか決めよう
夫婦が納得のうえで資産形成を考えていくことが大切(写真:xiangtao / PIXTA)
共働き夫婦の家計には、当然ながら「1つの生活」に対して「2つの収入口座、2つの支出口座」が存在します。そのため、かつて専業主婦世帯(片働き世帯)が主流であった時代とは異なる家計の流れに対応していく必要があります。
以前、「家計分担が『不公平』な共働き夫婦の打開策」で家計の分担方法について紹介しましたが、今回は共働き正社員夫婦が取るべき投資術「ファミリーアロケーション」を紹介します。
以前の記事:「家計分担が『不公平』な共働き夫婦の打開策」 ※外部サイトに遷移します
アロケーションとは「割合」「配分」という意味の単語です。投資においては資産配分、つまりどんな投資対象にどれくらいの割合を投資するかが重要視されます。
これをアセットアロケーションというのですが、これをもじって「家族の配分」つまりファミリーアロケーションを考えてみようというわけです。
投資に興味がある人もない人も、ファミリーアロケーションを考えておくことで、夫婦が納得のうえで資産形成に取り組めることになります。
夫婦間での投資に関するコンセンサスが必要である
ファミリーアロケーションがなぜ重要かというと、リスクコントロールを夫婦の資産全体で考えるという発想が求められているからです。
たとえば「夫は個別株に夢中で貯蓄額のすべてを日本株につぎ込んでいる。それどころかFXで為替もやっているようだが儲かっているか損をしているのかは妻はまったくわからない」「妻は投資にネガティブで全額を定期預金にしている」というような極端なケースがあったとき、多くの人があまり良くない状況と思うでしょう。
というのも、夫婦の不和の要因にもなりますし、資産管理として効率的ではないためです。これは、ファミリーアロケーションが存在していないために起きる共働き夫婦ならではのお金の問題です。
先ほどの例ほど極端でなくとも、
「夫婦でそれぞれどれくらいのペースでリスク資産を上積みしていくのか」
「夫婦でそれぞれどのくらいのリスクテイクをしていくのか」
といった事柄に関し、夫婦間でコンセンサスを得ることが必要です。
リスク資産に投資することは悪いことばかりではありません。むしろ高い利回りの獲得により資産の成長スピードを速める方法の1つですが、誰もコントロールしていない状態は問題です。
「夫が投資担当、妻が貯蓄担当」というのも1つのファミリーアロケーションですが、夫婦がそれなりのコンセンサスを持って取り組んでいく必要があります。
投資にお得な口座を夫婦でダブル活用する
このとき、カギとなるのは「1人1口座」しか保有できない制度が2つあるということです。
NISA(もしくはつみたてNISA)は、20歳以上の国内在住者が1人1口座しか保有できませんが、運用益非課税メリットがあります。年間投資限度額があるので夫婦で2口座保有しておいたほうが有利ということになります。
iDeCo(個人型確定拠出年金)も、20歳以上60歳未満の国内在住者(年金未納をしていないこと)でなければ加入できません。こちらは運用益の非課税に加え、掛金積立段階での所得税・住民税非課税メリットがあるので、夫婦で2口座保有したいインセンティブがとても強い仕組みです。
できることなら、「iDeCo2口座」「NISA2口座」を夫婦がフル活用するようにしつつ、運用方針を調整していくことを考えたいところです。
ファミリーアロケーションを考えてみると、「夫が独りよがりで株に夢中」ではなく、夫婦でそれぞれが投資に向き合っていくことが求められる時代なのです。
次に考えたいのは、「どちらが投資主担当になるか」です。とはいえ、これは自然と決まってくることになるかと思います。要するに夫婦のどちらかのほうがより投資に興味がある状態は自然に現れるからです。
このとき重要なのは、投資主担当より投資副担当のほうかもしれません。主担当のほうは自ら積極的に学習したり情報収集を行い、楽しみながら投資を行います。
ところが、副担当のほうは投資に興味がないか否定的であることが多いため、「あなたも参加するように」と促されてもなかなか腰が上がりません。iDeCo口座やNISA口座開設を、と言われてもそもそも開設しないわけです。
iDeCoについては定期預金等での資産形成をするだけでも税制優遇の魅力が大きいので、まずは副担当にも開設してもらうことをオススメします。またNISAについては一般NISAが年120万円まで利用枠があるので、まずは主担当の口座だけ開設をして様子を見るという方法もあるでしょう。できればつみたてNISAで月1万円程度でもいいので副担当もインデックス投資をしてみることが理想的です。
それでも「投資は良くないことだから止めて」のように抑止を求められないよう、基本的な投資理解だけは共有しておきたいところです。
「中長期的な経済成長のリターンは、預貯金より高まる(トマ・ピケティも似たようなことを言っているよ)」
「20年の長期にわたった積立投資においては勝率はほぼ100%になると言われており、ディトレードをするわけではないよ」
のような説明をして理解と了承を得ておきましょう。
投資方針をどう共有しどう分担するかを考える
どんなに投資に積極的な主担当であろうとも、投資方針については、副担当の了解を得ておくことが大切です。特にリスクを高く取るほどに元本割れのリスクや程度は高まることが避けられないからです。
国内外の株式にGDP比率で投資をするのと、25倍のレバレッジをかけてビットコインに投資をする(これは投機だが)のとでは、リスクの度合いはまったく異なります。むしろ後者は資産の全損のリスクまで負っていることを説明しなければいけません。
リスクの高い投資方法については投資金額を低く抑えることで了解を得るといいでしょう。FXをやっていてトルコリラのように暴落して全損するリスクがあるのなら、300万円ではなく50万円でやる、のようにOKを得ます。
主担当はおおむね、インデックス(市場平均)を上回るリターンを得ようとするはずですが、配偶者の理解を得られないならハイリスクを取るべきではないですし、理解を得られる金額にとどめておくべきです。
副担当である配偶者を説明、納得できないならそれはリスクを取り過ぎている、と考えるくらいがいいと思います。
主担当は資産の全部を投資するのではなく、家庭の状況に応じて「預貯金○割:投資○割」のように自分の資産に安全部分も確保しておくといいでしょう。
こうした線引きは、実は主担当にとっても助けとなります。リーマンショックレベルの避けようがない最悪のケースが生じたときに、相手の許しを得る力となるからです。
ファミリーアロケーションを意識する時代が始まる
ファミリーアロケーションという考え方を簡単にまとめてみました。私が勝手に作った造語のようなものなので、あまりなじみのない言葉だと思いますが、それほど難しい話ではなかったと思います。
共働きが多数派になった現代で、キーワードとなっていく言葉かもしれません。さらに、ファミリーアロケーションは日々のメンテナンスも欠かせません。
たとえば、夫婦の年収に差があれば、貯蓄ペースも同額ではないはずですから、「夫の貯蓄額は全部投資」とすると投資過剰になる恐れがあります。そこで夫婦の資産全体でどれくらいがリスク資産に回っているか、夫婦で基準値を共有し、定期的に検証していくのが理想的です。
夫婦が納得のうえリスクを取り(リスクを取る担当者と投資金額、やっていいことをはっきりさせ)、長い目でみて預貯金以上の利回りを獲得していくことができれば、マネープランはより好ましい形で実現していくことになるはずです。
お金の話、特に投資の話をもっと夫婦はしてみるべきなのです。
【あわせて読みたい】 ※外部サイトに遷移します
提供元:共働き夫婦が始めるべきダブル投資のススメ│東洋経済オンライン