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2018.07.23

フランス人がバカンスと旅行は別と考える訳|バカンスではあえて不便な生活をする傾向も


フランス人は、バカンスと旅行を区別して考えます(写真:Viktorcvetkovic/iStock)

フランス人は、バカンスと旅行を区別して考えます(写真:Viktorcvetkovic/iStock)

フランスは、夏のバカンスシーズンの真っ盛り。フランス人は海辺へ出かけて寝そべったり、ぼっーと海を眺めたりするなどしてバカンスを過ごすことが多い。私は最近まで、フランス人が好む休暇の過ごし方といえば、「何もせず、のんびりすること」と思っていた。ところが、それだけではないことが次第にわかってきた。

「バカンス」はのんびり、「旅行」はぎっしり

たとえば、フランス人の知人家族は約1週間の日程で日本へ来て、ある日は明治神宮と原宿の辺りを観光し、渋谷のスクランブル交差点を見に行った。次の日から京都と奈良の寺社を見て回り、富士山を見るために河口湖へも日帰りした。毎日、予定がぎっしり詰まっていて、のんびりする暇はないようだった。日本人の観光旅行とあまり変わらない感じである。

休暇中なのに、慌ただしく過ごしていいのだろうか。日本をよく知るフランス人女性に疑問をぶつけてみた。

彼女が言うには、「あなたの知人は日本へ旅行をしに来たから、過密スケジュールだったのです。フランス人は、バカンスと旅行を区別して考える。日本人は、バカンスと旅行は同じだと思っているかもしれないけれど」。

彼女の場合、同じ休暇の過ごし方でも「バカンスに出かける」となれば、海辺や田舎に滞在し、ゆっくり休養する。「旅行に出かける」となれば、頻繁に移動してあちらこちら見て回るというのだ。

「1週間の予定で、フランスから日本を訪ねるならば、私も目いっぱい予定を詰め込むでしょうね」と彼女は話す。

長い休暇がとりにくい日本では、休み中にどこかへ行っても慌ただしい旅になってしまいがちだ。一方、フランスの法定有給休暇は年間5週間。のんびりするバカンスと見聞を広める旅行と、両方を楽しむのに十分な期間がある。

フランス滞在中に日本人の知り合いから、「バカンスはどちらへ行かれるの?」と尋ねられて、「コルシカ島へ2泊3日で行きます」などと答えていたが、お互いに「バカンス」という言葉の使い方を間違えていたことになる。こんな短期間の滞在は、旅行と言うべきだったのだ。

実は、フランス人には「2泊3日でコルシカ島へ行った」というと、けげんな顔をされた。ナポレオンの生まれ故郷でもあるコルシカ島は、自然が豊かでフランス人に人気のバカンス先。フランス人にしてみれば、1週間くらいは滞在して楽しむのが普通なのに、そんなに短い間しか滞在しないのは、もったいないということらしい。

バカンスで大切なのは家族と過ごす時間

フランス人がバカンスに出かけるときは、あえて不便な暮らしをするという傾向もあるようだ。

あるフランス人女性は幼いとき、毎年夏に家族でフランス中部の洞窟を利用した宿に泊まった。電気が通っていないので、父親が薪を燃やして料理を作ってくれた。夕食はろうそくに火をともして家族一緒にとる。学校や仕事のある普段は、家族で一緒にいる時間は限られていたが、バカンス中は、家族で長い時間を一緒に過ごせた。それが、今では良い思い出になっているという。

また、知人のフランス人夫婦のお気に入りのバカンス先は、フランス中部の山中にある村。徒歩圏内には商店がなく、食料品を購入するのにも車で出かけなければならない。しかし、パリのような都会にはない静けさや美しい自然との触れ合いが魅力のようだ。

旅行を存分に楽しむ、フランス人の家庭もある。幼稚園児と小学生の子どもがいる知人のフランス人夫婦は、家族旅行のほかに夫婦で出かける旅行、妻が友人と出かける旅行、夫が友人と出かける旅行をそれぞれ年1回、企画している。

夫婦そろって留守にするときは、祖父母が孫の世話をしたり、妻が留守にするときは夫が子どもの面倒を見たりしているという。知人の女性が一緒に旅行に出かける友人にも子どもがいるが、夫が休暇を取って子どもの面倒を見たりするのだという。

働く母親が多いフランスでは、普段から祖父母が育児のサポートをし、父親が積極的に育児や家事にかかわっている。みんなで協力して子育てをしているから、母親が旅行に出かけるときも快く送り出せるのだろう。

しっかり休もうという意識が社会に浸透

フランスでは、1936年に人民戦線内閣が年間15日の法定有給休暇の制度を導入した。以後、次第に延長され1956年に年間3週間、1969年に4週間、1982年には現在と同じ5週間になった。内閣府によると、フランスの有給休暇制度では、有給休暇を消化しない従業員に対して、雇用主は強制的に有給休暇を消化させる措置を施さなければならない。しっかり休もうという意識は社会全体に浸透している。

バカンスシーズンが終わる9月、フランスに滞在していたとき、顔なじみの商店の人から「ノルマンディー(フランス東部)にバカンスに行ってきたのよ」などと声をかけられることがあった。休養してリフレッシュしたという顔をして、いつもより機嫌が良い。仕事の能率も上がりそうだ。

働き改革が進む日本だが、年間20日の有給休暇を消化できない人も多いのではないだろうか。丸々20日間休めれば、バカンスと旅行の両方を楽しみ、仕事に対する英気を養うこともできる。健康を保って働き続けるために、きちんと休むという意識を共有することが大切だろう。

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【あわせて読みたい】 ※外部サイトに遷移します

「日本人の休み方」はフランス人には不思議だ

なぜドイツ人は平気で長期休暇をとれるのか

なぜシンガポールでは「有休取り放題」なのか

提供元:フランス人がバカンスと旅行は別と考える訳|東洋経済オンライン

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