2018.07.19
「学校基準のいい子」でない子をどうすべきか|「ご家庭で指導を」に悩む親は少なくない
「苦手なことでも我慢して継続するように」と言われたが……(写真:imtmphoto/iStock)
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私は、現在小学校2年生の男の子を育てる母です。息子が保育園児の5歳頃から、集団で輪になって遊びましょうと先生に言われても、「自分の大好きな電車遊びがいい」と違う行動をし、先生からお叱りを受けたことがありました。大げさだな、と私は先生の言葉を気にせずにいましたが、小学校1年生になったら授業を静かに受けることがなかなかできず、お友達がおしゃべりしていたら自分もしていいのだと思い同じようにおしゃべりをして叱られるなど、注意されることが増えていきました。
現在の2年生のクラスでは、大分落ち着いてきたように見受けられますが、苦手な問題、苦手な作業になると集中力が低下し、やる気スイッチが入らないようです。連絡帳に苦手なことでも我慢して継続するように……など親に向けたコメントを先生から頂くのですが、家で注意すると学校でも言われているからか、しんどそうな表情になってしまうので可哀想に思いますし、親のほうも精神的に落ち込んでしまいます。
単純に苦手なこと、面倒なことでもまったくやらないわけではないので、クラスの先生の言う”集中して頑張る!”、ただその部分だけが問題視されているだけで、飛び抜けて成績が悪いわけでなく、お友達も沢山いてくれて明るく活発な息子です。その性質を尊重しながら、先生の指摘される部分を改善させていくために、私ができることはどんなことなのか悩んでしまっています。何卒よろしくお願い致します。
(仮名:今泉さん)
「家で指導してください」に悩む親は少なくない
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今泉さんのように学校の先生から、「○○な状態なので家庭で指導してください」という指摘を受ける家庭は、世の中にごまんとあります。学校から指摘される部分というのは、特に子どもが苦手なことであり、どうやって改善させていけばいいのか、思い悩む親御さんも少なくありません。
このような場合、学校側に「うちの子は○○のようなタイプなので、そのようなことを考慮して指導してください」と伝える親もいると思います。
しかし、期待通りの指導がされる可能性は低いと思ったほうがいいでしょう。なぜなら担任の先生は大抵、1クラス30~40人と受け持つ人数が多い中、授業だけでなく生徒指導など多くの仕事に追われ激務の状態です。1人ひとりの子どもに懇切丁寧に個別に対応したり、個別指導することは非常に困難です(もちろん、相談する程度はいいかと思いますが)。
そこで考えるべきは「家庭内での対応」ですが、具体的にはどうすればいいでしょうか。「苦手なことでも我慢して継続するように」と学校から言われた場合の対応は、通常、次の3つに分かれます。
・学校からこう言われたと、同じことを子どもに言う。または書いてあることをそのまま伝える→(×)
・同じことを言ったうえ、追い打ちをかけるように、「だからいつも言っているでしょ!」と声をかける。さらに駄目押しで「ちゃんとやりなさい!」と子どもが絶対に行動を起こせない言葉で終わる→(××)
・書かれたコメントについては、触れない→(○)
先生のコメントを子どもにそのまま伝えたところで、失敗する可能性が非常に高いでしょう。教育のプロや、モチベーションアップの専門家、コーチングやカウンセリングのプロであれば、子どもとの対話を通じて上手に気づきを与えたり、引き出したりしますが、プロでない一般の人ではなかなか難しいと思います。下手なことをして逆効果になるくらいなら、「触れない」が最も無難です。
回り道をしながら、やんわりと伝える
「でもそれだと、いつまでも改善しない」と思われることでしょう。ではどうするか。「こうしなさい」と子どもに直接的に言って改善することは難しいでしょうから、すこし回り道をしながら、やんわりと伝えていく方法をとります。
ここで重要なことがあります。それは、親のスタンスを明確にすることです。多くの場合、親は先生から今泉さんが受けたようなコメントを受け取ると、ショックを受け、落ちこんでしまいます。今泉さんもそのお一人であることが書かれていますね。でも、スタンスがブレると、子どもにも伝わります。それでは子どもも納得しないでしょうから、まずはブレないと決めましょう。
そのうえでですが、親のスタンスは次のまったく異なる2つの考え方に分かれると考えています。どちらが正しいとか、間違っているという問題ではありません。考え方の問題です。ですから自分はこちらのほうだと思われる場合を参考にしてみてください。いずれも筆者が過去に保護者から相談を受け、アドバイスした結果、効果があったと思われる方法を挙げてみました。
1)「別に苦手なことを我慢してまで継続する必要はない」と考える場合
この場合、家庭では子どもが好きなことや、得意なことを追求できる環境を作って自己肯定感を引きあげましょう。学校からのコメントについては、「先生がおっしゃる考え方もあるけども、私はそうは思わない」と決める。そして一度決めたら、「もしかしたら私は間違っているかも」とブレないようにします。
親の働き掛けによって自己肯定感が上がると、先生が指摘していたようなことが自然と改善する場合があります。しかし、その改善は必ずではないので、事前に期待をしないようにしてください。子どもの自己肯定感を高めることに集中すればよいでしょう。
2)「やはり、苦手なことでも我慢して継続するべきだ」と考える場合
精神訓話をしても子どもには通じませんので、しても意味はありません。苦手なことは、よほどのことがない限り得意にはならないため、「我慢強い子にしていく」ことに焦点を合わせます。
そのためには「苦手なことがどれだけ我慢できるかトレーニング」をします。身近な生活の一部で行います。たとえば、一番わかりやすいのは、食事。嫌いな食べ物をどうすれば食べられるか、「時間」ではかってみましょう。どうすれば食べられるか、何分で食べられるか、タイマーをかけるのです。スマホにタイマーがあるので、それを使って、アラームの音を変えたりして楽しみながらやるのです。
こんなことをやっていると、徐々に苦手をゲーム化し、克服することが習慣化できるようになります。間違っても、学校で指摘されたことを繰り返ししつこく言うのではありません。それをやってしまうと、すべて水の泡になりかねません。本人が学校で指摘されているのに、親がさらに追い打ちをかけてしまうと、もし直そうと思っていてもその気持ちがマイナス方向へいってしまう場合があるからです。
学校で指摘されたような「苦手なこと、嫌なこと」をどうすればやり遂げられるか。日常の些細な出来事を通じてトレーニングしてしまうといいでしょう。
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提供元:「学校基準のいい子」でない子をどうすべきか|東洋経済オンライン