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2018.06.05

親は無自覚「子どもハラスメント」の深刻実態|パワハラ、セクハラの構図と酷似している


「子どものため」というのは親にとって都合のよい言い訳かもしれません(写真:jackscoldsweat/iStock)

「子どものため」というのは親にとって都合のよい言い訳かもしれません(写真:jackscoldsweat/iStock)

最近、セクシャルハラスメントやパワーハラスメントに関するニュースを見ない日はありません。日本では財務省の福田事務次官が女性記者へのセクハラで辞任し、髙橋狛江市長が女性職員へのセクハラで辞任しました。

アメリカでは、ハリウッドの大物プロデューサー・ワインスタイン容疑者が、女優や女性社員に対するセクハラで逮捕されました。性的被害の告発運動「ミー・トゥー」を世界的に拡大させるきっかけになった人物です。

セクハラを指摘された人の中には、次のような言い訳をする人もいます。

「お尻を触ったって? こんなのセクハラじゃありませんよ。これはあいさつですよ。円滑なコミュニケーションのためなんです。悪気はないんです。昔からみんなやってきたでしょ」

こういうことを言えるのは、被害者がどれくらい嫌な気持ちになって苦しんでいるかわからないからです。また、その人に恋人や夫や妻がいる場合、どんなに嫌な気持ちになることでしょう。その親も非常に不愉快な気持ちになるはずです。もし被害者に子どもがいる場合、その子はどんなに嫌な気持ちになることでしょう。

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身近にあるパワハラ

パワハラに関しては、栄和人・日本レスリング協会強化本部長が伊調馨選手へのパワハラで辞任しました。

パワハラは身近にあります。私もあるファミリーレストランの厨房で、店長らしき人が店員に対して「なんで、お前、こんなこともできないの? 他の人はちゃんとやってるよ。もっとちゃんとやらなきゃダメだろ。お前、給料泥棒って言葉知ってる?」などと言っているのを聞いたことがあります。無関係の私ですら、いや~な気持ちになりました。いくらなんでも、こんな言い方はないでしょう。もっと別の言い方があるはずです。

ハラスメントとは、人権侵害、嫌がらせ、いじめのことであり、セクハラやパワハラのほかにも、世の中にはいろいろな形のハラスメントがあります。

・マリッジ・ハラスメント(マリハラ):「まだ結婚しないの?」など、主に未婚者に対する人権侵害
・マタニティ・ハラスメント(マタハラ):働く女性に対して妊娠・出産・育児を理由に行われる人権侵害
・スモーク・ハラスメント(スモハラ):受動喫煙など喫煙に関する人権侵害
・ジェンダー・ハラスメント:「男のくせに」「女のくせに」や「男なんだから」「女なんだから」など、性別に関する固定観念に基づく人権侵害
・レイシャル・ハラスメント(レイハラ):人種的偏見に基づく人権侵害
・ドクター・ハラスメント(ドクハラ):医師や看護師が患者に行う人権侵害
・ペイシャント・ハラスメント(ペイハラ):患者が医師や看護師に行う人権侵害

これらのハラスメントは、行われる状況によっていろいろなものに分けられます。でも、多くの場合、次のような5つの共通点があると思います。

5つの共通点

1.加害者は、自分の優位な関係性や権力的な立場を利用している
2.加害者は相手がどれだけ苦しんでいるかが理解できていない。相手が心の傷を負って長く苦しむ可能性があることも理解できていない
3.加害者は「この程度のことは昔からあったことだ。人間関係の中で普通にあることだ。この程度のことで何をそんなに騒いでいるのか。みんなやってることじゃないか」などと思っている
4.加害者は「自分に悪気はない」と思っていることが多い。それどころか「相手のため」とか「全体のため・世の中のため」などと思い込んでいることが多い
5.被害者は「自分が悪いのではないか」と思っていることが多い。また、被害を訴えることで、被害者がますます不利な立場に追い込まれることが多い。これらの理由で、被害を訴えられず1人で苦しみ続けることが多い

たしかに、こういったハラスメントは昔から行われてきましたし、ほとんどの場合、問題になりませんでした。部下が上司に叱責されたり罵声を浴びたりするのは仕方がない。女性が体を触られたり性的なことを言われたりするのは魅力があるからだ。ちょっとくらいの受動喫煙でうるさいこと言うな。酒席で上司から飲めと言われたら飲むのが当たり前。このような受け止め方をされていました。

でも、最近は人々の意識が高まってきて、こういうことはすべて許されないことだという認識が広がってきました。職場での上下関係、権力の有無、立場の違いなどはもちろんありますが、お互い1人の人間同士であることには変わりはなく、優位的な立場を笠に着たハラスメントは許されないという認識が広がってきたのです。

そして、実は、「相手のため」とか「全体のため・世の中のため」などというのは、すべて自分に都合のよい言い訳にすぎず、本当は自分のためなのです。つまり、自分のストレス解消、自分の欲望の達成、自分の優位性の確保(マウンティング)のためなのです。人々はそのことに気づいたのです。

これはとても良いことだと思います。もちろん、こういった認識が常識として定着するまでには時間がかかるかもしれませんし、完全になくすというのは難しいかも知れません。でも、「あっても仕方のないこと」から「許されないこと」に変わったのは大きな進歩といえると思います。

親による子どもへのハラスメント

しかしながら、私は大いに不思議に思うことがあります。それは、これらのハラスメント以上に、日々あちらこちらでたくさん行われているハラスメントがあるのに、それが未だに「あっても仕方のないこと」という認識にとどまっていることです。それは、ほかでもない、親による子どもへのハラスメントです。

親はよく次のような言葉を子どもにぶつけます。「また歯磨きしてない。ちゃんとやらなきゃダメでしょ! 何度言ったらできるの? 本当にだらしがないんだから。もっとしっかりしなさい」「なんでこんな問題もできないの? さっきやったばかりでしょ。何度教えたらできるの?」「学校からのお便り、ちゃんと出さなきゃダメでしょ。なんで同じことを毎日言われるの?」「そういうだらしがないとこ、誰に似たの? 妹はちゃんとできてるよ。あんた、それでもお兄ちゃんなの?」

こういうひどい言葉が、毎日あちらこちらの家庭で子どもたちに浴びせられています。これらは、完全な人権侵害であり、嫌がらせであり、いじめです。こんな言葉は一切子どものためになりません。それどころか、子どもに深刻な悪影響を与えます。こんな言葉を浴びている子は「自分はダメな子だ」「どうせぼくなんて何をやってもダメだ」と感じて、自己肯定感が持てなくなります。

すると、チャレンジ精神や向上心も持てなくなり、頑張るエネルギーもなくなってしまいます。親に対する愛情不足感も出てきて、「自分は親に大切にされていない。私なんかいないほうがいいんだ」と自己否定感ばかりが強くなります。親が信じられなくなることで、ひいては他者一般が信じられないという人間不信の状態にまでいたる可能性も高まります。

これほど深刻な悪影響があるにもかかわらず、こういう親によるハラスメントは未だに「あっても仕方のないこと」と思われています。ひと言で言えば、「子どものために言っているのだから仕方がない」というわけです。そして、先ほどあげたハラスメントをする人の5つの共通点が多くの親にも当てはまります。

1.親という権力的な立場を利用している 
2.子どもが今どれだけ苦しんでいるか、そして将来にもわたって苦しむ可能性があることを理解できていない
3.この程度のことは親子なんだから当たり前と思っている
4.親は子どものためだと思い込んでいる 
5.多くの場合、子どもは自分が悪いから叱られるのだと思っている。また、下手なことを言えばますます叱られると思っている。子どもが自分から被害を訴えるのは難しい

「子どものため」は都合のよい言い訳

「子どものため」というのは親にとって都合のよい言い訳にすぎず、本当は自分のためなのです。つまり、自分のストレス解消、自分の攻撃性の発散、子どもを通しての自分の欲望の達成(行儀のよい子なら親は自慢できる、など)、自分の優位性の確保(マウンティング)のためなのです。

そのことに気づいてほしいと思います。親という圧倒的に優位かつ権力的な立場を笠に着たハラスメントは許されないことなのです。

親と子という立場の違いはあるにしても、1人の人間同士であることに変わりはありません。子どもを1人の人間としてリスペクトして、言葉も含めて丁寧な接し方をしましょう。そうすれば、子どもも自分の存在を肯定できるようになり、がんばるエネルギーも湧いてきます。親に対する信頼感も高まり、それが他者一般への信頼感につながります。

私たちは、ニュースを見ながらセクハラやパワハラの加害者に憤りを感じます。でも、実は自分が子どもに同じようなことをしているかもしれない、ということには思い至りません。ここに大きな問題があります。自分が子どもにハラスメントを行っているかもしれないということに、ぜひ気づいてください。

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要注意!職場における「パワハラの典型」6つ

「モラハラ夫」と離婚した38歳専業主婦の決断

子どもへの「パワハラ」に気づかない親の甘え

提供元:親は無自覚「子どもハラスメント」の深刻実態|パワハラ、セクハラの構図と酷似している|東洋経済オンライン

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