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2018.05.25

「定期預金だけの運用」では幸せになれない|銀行の「超低金利預金」から「卒業」しよう


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「貯金しても利息はたったこれっぽっち……」。銀行に定期預金をするのは悪いとは言わないが、ほとんど増えないのが現実。老後を考え「定期預金から卒業」することも検討したい(写真:xiangtao / PIXTA)

「投資をするなら、絶対に損をしたくない!」これは誰もが思うところです。コツコツ積み立てをしているのに、おカネが減ってしまっては本当に悲しいものです。もちろん、慎重に、そして堅実に人生設計をすることは、日本人の美徳でもありますから、自分の気持ちに反するのなら、「損をする可能性もある投資なんて、そもそもしない!」という選択肢も、尊重されるべきです。

「iDeCoで定期」は安全確実だが、増えにくい

以前のコラム「リスクが嫌いな人こそイデコに入るべき理由」でお伝えしたとおり、老後のために預金をしているのなら、そのおカネをiDeCo(個人型確定拠出年金)に振り向けただけで税金のメリットを受けることができます。投資はみなさんがお考えのように、「確実」に利益が得られるものではありませんが、「節税」は仕組みですから、だれも失敗することなく実利を得ることができます。

コラム「リスクが嫌いな人こそイデコに入るべき理由」はこちら ※外部サイトに遷移します。

iDeCoでは必ずしも投資信託を選ぶ必要がなく、定期預金、保険といった元本確保型商品も選ぶことができます。このことを知って「えっ! そうなの? 一気にiDeCo加入のハードルが低くなった」とびっくりする人も少なくありません。

ところが、「安全確実が一番」と始めた元本確保型でのiDeCoも、しばらくすると「このままいって十分な老後資金を貯められるのだろうか?」という疑問を抱く人が多いのも事実です。iDeCoの掛金には上限がありますから、いくら時間を味方につけたとしても積み立てできる金額はおのずと限界が見えてきます。

たとえば30歳の会社員(会社に企業年金がない方)がiDeCoで積み立てできる金額は月2万3000円が上限です。従って60歳までに積み立てられるおカネは828万円(=2万3000円×12カ月×30年)です。仮に所得税、住民税の節税メリットが合わせて20%だとすると、30年間の節税メリットは165万6000円+利息となり、確かにiDeCoの効果はすばらしいのですが、きっちり節税分もすべて貯蓄に回したとしても、作れるおカネは合計で1000万円を下回ります。

しかも今は超低金利時代です。iDeCoの預金金利も同じです。前回の記事でご紹介しましたが、低コストの運営管理機関が扱う定期預金で最も金利が高かったあおぞら銀行の定期預金(SBI証券と大和証券のiDeCoで取り扱い)でさえ、金利は0.02%ですから、仮に30年間そのままだとすると、受取利息は30年間でわずか2万円足らずです。運用益非課税のメリットを享受したといっても4000円程度ですから、残念ながらワクワク感はありませんね。

よく、「いったい老後資金はいくら必要なのか?」という話題が出ますが、一般論として、国が提示する公的年金の受給額を出しながら議論するのはナンセンスです。なぜなら、国の年金は、公的年金加入中に負担した保険料に見合う額しか受け取れないからです。特に会社員の場合、支払う保険料は給与に比例しますから、現役時代の給与が高ければ老齢厚生年金の額も大きくなり、給与が低ければ、将来の年金も少ないという現実があるからです。

では、自分が将来受け取れる年金はいったいいくらなのか? これを知るために日本年金機構が発行する「ねんきん定期便」があるのですが、残念ながら50歳未満の人に届くねんきん定期便は、「発行時点までの加入実績に応じた年金額の記載」にとどまっており、将来の年金見込額までは書かれていないのです。また、50歳以上の人の場合でも、「現状の給与収入が60歳まで変わらない」という前提で見込額が記載されており、国の情報は不親切です。

そんな中、大和証券のiDeCoサイトでは「LINEでねんきん定期便試算」というユニークなサービスを始めました。これはもらったねんきん定期便をカメラで撮影して、いくつかの簡単な質問に答えるだけで将来の年金額がわかり、さらに老後の備えが実際いくら必要なのかも提示してくれます。お手軽だし無料で使えますから、年齢を問わず試してみると良いでしょう。きっと、iDeCoで月々2万3000円の積み立てをしていても、上記の30歳の会社員の30年積み立ての例でもわかるとおり、定期預金の積み立てだけでは十分に老後資金を確保することが難しいと感じるのではないでしょうか。

短期でなく20年長期投資なら、投資収益率が年2~8%に

「やっぱり定期預金では難しいのか……」というところまではわかったとして、そこでどうするかです。実は金融庁がこんなデータを出しています。国内外の株式・債券に積み立て・分散投資した場合、保有期間5年では収益率がマイナスとなるケースもあったが、20年の長期保有では投資収益率が2~8%(年率)に収れんしたというデータを発表しています。これはとても参考になる情報です。

このデータは、1985年以降の各年に、毎月同額ずつ国内外の株式・債券の買い付けを行い、それぞれの調査期間で保有した収益率を比較しています。保有期間が5年であった場合、投資を始めたタイミングと終了したタイミングの違いで、収益率がマイナスになってしまったケースも少なからずあり、確かに5年という短い期間での運用は成果にバラツキがあるのだと理解することができます。

一方、20年という保有期間であれば、投資開始時期にかかわらずすべて2%から8%の収益率に分布が収まっています。最も多い成果は4%から6%ですから、コツコツ積み立てをして20年保有すれば、人気ドラマの決めぜりふではありませんが「失敗しない」のです。

仮に前述の30歳の会社員がiDeCoで月2万3000円、先ほどの「2~8%」というデータの真ん中の「収益率5%」で運用できたとしたらどうなるでしょうか? 期間は60歳までの30年とします。なんと、1669万円と出ました。0.02%の定期預金では積み立て金の828万プラス「雀の涙の利息」ですが、このおカネの約2倍となるのです。これが、長期・積み立て・分散投資、つまり「投機」ではなく「資産形成」のための資産運用の果実なのです。

「分散投資を上手にできるか」で成否が決まる

紹介した金融庁のデータは、国内外の株や債券に分散し、積み立てで長期保有すれば失敗しない資産形成ができるという証拠です。iDeCoはそもそもが積み立てであり60歳まで、ないしは70歳までの長期保有の仕組みですからあとは、「分散」すればいいだけとなります。

もちろん、ここでもできるだけコストを抑えるのが得策です。投資信託では同じ運用成果でも信託報酬(投資信託の運営コスト)の多寡によって、受益者のメリットが変動します。

NPO(特定非営利活動法人)の確定拠出年金教育協会が運営するiDeCoナビでは、国内外の株式と債券に投資をする投資信託の信託報酬ランキングを発表しているので、参考になります。問題はどこで分散投資をするかです。コスト面に着目し、早速、金融庁のデータにあった、日本国内の株式と債券、外国の株式と債券に投資をする投資信託の中で、最もコストの安い投資信託を提供するiDeCoの運営管理機関(金融機関)が、どこなのか見ていきましょう。

まずは国内株式です。この分野では、「DIAMDC国内株式インデックスファンド」がコスト最安です。信託報酬は0.1674%。前回のコラムでご紹介した運営管理手数料(月々のコスト)がかからない6社の金融機関では、イオン銀行、松井証券、マネックス証券が取り扱っています。

次に国内債券についてです。これは「三菱UFJ国内債券インデックスファンド」が最安で信託報酬は0.1296%、同様に前出の6社の中では、松井証券、マネックス証券、SBI証券が扱っています。

外国株式と外国債券を見てみましょう。外国株式は「eMAXIS Slim先進国インデックス」。信託報酬は0.1183%、6社のうち、取扱いは松井証券とマネックス証券です。

最後に外国債券は「たわらノーロード先進国債券」と「eMAXIS Slim先進国債券インデックス」の2つが信託報酬0.1836%です。6社のうち、前者は楽天証券で扱いがあり、後者は松井証券とマネックス証券で扱っています。

「国内・先進国・新興国」×「株式・債券」=6種類で運用する

以上、4種類でのコスト最安ファンドをお伝えしましたが、金融庁はさらに、国内、先進国、新興国の株式と債券にそれぞれ6分の1ずつ、積み立てを20年継続した年平均利回りは4%であったと発表しています。つまり、上記の4種類に新興国の株式と債券を加えて6分の1ずつ運用すれば、国が推奨する資産形成のスタイルを自分で作ることができます。

たとえば、上記で最もコストの安い投資信託をすべて扱っている松井証券であれば、新興国株式は「eMAXIS Slim新興国インデックス」(信託報酬0.2052%)、債券は「三菱UFJDC新興国債券インデックスファンド」(信託報酬0.5616%)が組み合わせの選択肢です。

またマネックス証券なら、新興国株式は、松井証券同様「eMAXIS Slim新興国インデックス」、新興国債券は「iFree新興国債券インデックス」(信託報酬0.2376%)になります。iDeCoは良くも悪くも運用商品が限られているので、初めて投資信託を選ぶ場合でも、それほど悩まずに投資信託を選ぶことができます。このように、iDeCoにおいては「資産配分」といって、上記6つのカテゴリーの投資信託に、6分の1ずつ投資割合を設定すれば、立派な「金融庁モデルポートフォリオ」が出来上がります。

最初に戻りますが、残念ながら、今は定期預金だけでの資産形成は分がよくありません。これは「経済活動の三角形」(個人・企業・金融機関)を考えるとわかります。銀行は私たちからおカネを集め、企業に貸して運用しています(ほかに国債などでの運用も)。私たちが預金してもらえる金利が仮に1%なら、企業への貸付金利は、それ以上の金利が必要です。仮にそれが2%なら、銀行の利ざやは1%です。

一方、企業は借入の金利2%以上の利益を上げないと儲けられません。それらのモノやサービスを購入するのが私たちです。預金金利は1%なのに、モノやサービスの値段は銀行や企業の利益を加味した金利が乗っているので、定期預金の金利は物価に追いつかないのです。

ごく簡単に説明するとこういう仕組みです。だからこそ、私たちは企業の成長の恩恵を受けるために「投資」が必要なわけです。企業におカネ(資本)を提供するのが「株式投資をする」という行為ですし、企業に資金を貸し付けするのが「債券に投資をする」という行為です。銀行などを通した間接金融から直接金融へというスローガンも、ここからきています。

日本人と欧米の過去20年の金融資産の成長を比較すると、日本人の金融資産が1.5倍にしかなっていないのに、米国は3.3倍、欧州は2.4倍に成長しています(金融庁調べ)。まさに日本人のお財布は預金ばかり。一方、欧米人のお財布は分散投資による世界経済の成長のリターンを得ていたということです。

実際、日本の株式に投資をする投資信託では、トヨタ自動車、NTT、ソフトバンクなど、外国の株式に投資をする投資信託では、アップル、グーグル、マイクロソフト、フェイスブック、アマゾンドットコムといった、皆が知っている有名な会社が主な投資先です。間接的に「世界のリーディングカンパニーの株主」になり、成長の恩恵を受けるということは、資産形成の方法として王道なのです。

「iDeCoで定期預金は確実だけど、本当にこれでいいのだろうか……」、そんな心の声が聞こえてきたら、長期、積み立て、分散投資で本格的に資産形成の扉を開けてみるタイミングかもしれません。

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提供元:「定期預金だけの運用」では幸せになれない|銀行の「超低金利預金」から「卒業」しよう|東洋経済オンライン

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