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2017.12.07

舅や姑の介護で頑張った人はお金がもらえる|義父母の最期を看取った嫁の苦労はどうなる


夫の母を、仕事を休んで一生懸命介護して最期も看取った。そんな人は、相続のときは夫と権利を主張できるかもしれない(写真:KAORU / PIXTA)

夫の母を、仕事を休んで一生懸命介護して最期も看取った。そんな人は、相続のときは夫と権利を主張できるかもしれない(写真:KAORU / PIXTA)

読者の皆さんのなかには、こんな不満を持っている人はいませんか。典型的なのは、50代60代の既婚女性でしょうか。「忙しいダンナに代わって私が、義父母(夫の両親)の亡くなる前の晩年、何から何まで面倒を見てきた。なのに、いざ亡くなったら『夫にも兄弟姉妹がいるから』といって、相続はみな平等。それっておかしい!」。

このように、舅(しゅうと)や姑(しゅうとめ)の世話をしてきたのに、結局は夫(妻)が、兄弟と平等に相続なんて納得できない。そんな悲痛な声を聞くことは少なくありません。

実は、民法では、このように「特別に故人に貢献した人」に相続を手厚くする「寄与分」を認めているのをご存じですか。どんなものなのか、早速みていきましょう。

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介護や看護などの努力に報いる「寄与分」とは?

冒頭では、一生懸命舅や姑の世話をしてきた奥さんの話をしましたが、夫の立場では、こうなりますね。「嫁の力を借りて、われわれ夫婦が父の介護をしてきた。だから、兄弟よりも多めに相続する権利があるのでは?」。そんなふうに思うのも、理解できますよね。

相続では「法定相続人」「法定相続分」として、誰が相続するか(相続する権利があるか)、どんな割合で相続するかという取り決めがあります。

たとえば父、子ども3人の家族(母は他界)で父が亡くなった場合、法定相続人は3人の子どもとなり、法定相続分に則って分けるなら子どもそれぞれ3分の1ずつ相続することになります。

とはいえ、どれだけ親の生活を支えたかは子どもによって異なり、等分に分けたのでは報われない、と思う人もいるでしょう。そこで民法で定められているのが、「寄与分」なのです。具体的には、どういうことでしょうか。

寄与分とは、被相続人(亡くなった人)の商売を手伝うなどして、被相続人の財産の維持・増加に貢献した相続人には法定相続分に加えて財産がもらえる、というものです。

寄与分が認められるには条件がある

被相続人がしていた事業を無償に近い形で手伝い、財産増加に貢献したといったケースで認められるものですが、「療養看護型」といって、看護や介護をした人にも寄与分が認められることがあります。

ただし、認められるのは、付き添い看護を頼まずに済んだ、介護施設に入居せずに自宅で介護できたなど、看護や介護をしたことによって被相続人のおカネを使わずに済んだ場合などです。

私はセミナーなどで受講者の方から、「ストレスを抱えながら、自分の時間を犠牲にして介護した。本当に大変だった」といった話を伺うこともあります。その想いには私も共感しますし、報われたいと感じるのは当然のことだと思います。とはいえ、法的なルールとしては、寄与分が認められるには、条件があるのです。

たとえば、親族間には一般に扶養義務があるため、「介護のために仕事を辞めた、あるいは一定期間休んだ」という場合は、寄与分が比較的認められやすいです。

しかし、通常の扶養の範囲内で行った行為は残念ながら、寄与分とはならないのです。また寄与分を受けられるのは相続人であり、夫の父が亡くなった場合は、夫が対象となります。夫の配偶者が嫁として義父を介護してきた、という場合、嫁は法定相続人ではないので原則は対象外です。とはいえ、配偶者が寄与したとして、夫に寄与分が認められる可能性はあります。

では、具体的に、どのくらいの金額が寄与分として認められるでしょうか。これは、気になるところです。

実際の金額は、日数や日当を考慮して、決められます。あくまで一例ですが、判例では、食事の世話や排せつ介助などを含めて常時見守りを行ったケースで1日当たり8000円が寄与分とされた例や、相続財産の1割強が寄与分とされた例があるようです。
  
もちろん、相続財産が多くなければ、寄与分の額も制限されます。

寄与分がある場合は、相続財産から寄与分を引き、残りを相続人が分けることになります。

たとえば、相続財産が1000万円、相続人が子ども3人の場合、法定相続分で分けえると333万円ずつですが、長男の寄与分が100万円なら、1000万円から100万円を引き、900万円を3人で分け、長男はそこに100万円が加算されます。長男は400万円、次男、三男はそれぞれ300万円ということです。

寄与分をどう主張するか?家庭裁判所での決着も

寄与分を得るには相続人全員の同意が必要で、ここで難しいのは、寄与分をどう主張するかです。

相続では遺産分割協議、平たくいえば相続財産をどう分けるかを、相続人が話し合います。その際、「自分は介護などで寄与したので、寄与分を考慮してほしい」と主張し、皆の同意が得られれば理想的ですが、そのようにスムーズに進むとは限りません。

たとえば義父の介護を、義父の家に同居している長男の嫁がしていたとすると、どうなるでしょうか。

「同居して家賃もかからずに暮らしていたのだから、介護するのは当然のこと」「逆に子どもの面倒をおじいさんに見てもらってたじゃないか」など、相続人の同意が得られないことも考えられます。

実際、話し合いがつかない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。裁判官や調停委員に事情を話すことになりますので、寄与したことについて客観的に説明できるよう、介護日記などをつけておくとよさそうです。調停でも話がつかない場合は裁判となります。

仲のいい家族でも、相続では揉めることが少なくありません。調停、裁判となると時間もかかり、労力も使い、精神的な負担も生じると思います。禍根を残さないためにはどうすればいいでしょうか。

たとえば、介護や看護については、日頃から兄弟同士、家族間で情報を共有し、想いを伝えておくのもいいでしょう。

実は、私は従妹同士などでLINEのグループを作っており、日頃から冠婚葬祭などの情報をやり取りしていますが、とても便利です。家族や兄弟間でLINEグループを作り、小さなことでも報告するのはどうですか?

相手の性格にもよるとは思いますが、大変さが伝わり、共感してもらいやすくなるかもしれません。

遺言書があれば、尽くした人が報われる?

一方、被相続人に「この人には多く相続させたい」という意思がある場合は、遺言書でそれを示し、相続分を多くするという方法もあります。故人の意思を尊重するという意味で、遺言書がある場合は、そこに記載されたとおりに相続するのが原則です。あくまで原則であり、相続人全員が同意しなければそのとおりにはなりませんが、少なくとも、「故人も介護した人に多く相続したいと思っていた」などと示すことはできます。

また、実は、相続人でなくても、「遺贈」という形で遺産を引き継ぐ方法があります。「嫁に財産の一部を分けたい」「離れて住む子どもに代わって何かと世話してくれた姪に財産を分けたい」と思っているなら、遺言書にその旨を記載しておくのです。血のつながりがない人でも可能です。

相続人が相続するより相続税の負担が重くなりますが、これも、故人に尽くした人が報われる方法の1つです。ちなみに、遺言書によって相続財産のほとんどが特定の人に渡ってしまい相続人が著しい不利益を被る、ということがないよう、相続には「遺留分」があります。

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たとえば、相続人が子どもだけなら、子ども全員で相続財産の2分の1が遺留分で、もしも「すべての財産を姪に」という遺言があっても、姪は半分、残り半分を子が分けることになります。

相続でのおカネの話をしてきましたが、故人や関係者からの「ありがとう」の言葉。それも絶対大切ですよね。故人を最期まで一生懸命に、あたたかく看取った人への「お礼」が、納得のいく形で決まればいいですね。

【あわせて読みたい】 ※外部サイトに遷移します

夫が死んだら妻は義父母を養う義務はあるか

親が借金を残して死んだら子供はどうするか

あなたは65歳までにいくら貯めればいいのか

提供元:舅や姑の介護で頑張った人はお金がもらえるー義父母の最期を看取った嫁の苦労はどうなる|東洋経済オンライン

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