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2017.10.26

本のエキスパート・大井実さんが選ぶ、心を動かされた本とは?


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最近、これからの人生に悩んだり迷ったり、はっきりしない自分にもモヤモヤ。もっと視野を広げた方がいいのかなと思うけれど、小難しい自己啓発本を読む気にはなれません。読み物としておもしろく、自分を変えるきっかけにもなる本に出会いたいです! 大井さんにとってのそんな本は何ですか?

Q1 数えきれないほど本を読んできた大井さん。自分のルーツとなった本は何ですか?

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A1 高校時代の自分を作ってくれた本があります。日本を代表する小説家・庄司薫の作品『赤頭巾ちゃん気をつけて』です。これは1969年の芥川賞作品で、村上春樹がデビューする一つ前の時代にヒットしたもの。当時の若者がみんな読むような青春小説のバイブルでした。

主人公は、東大進学率トップクラスの都立日比谷高校3年生・薫くん。1969年のある一日の出来事を、彼のいろんな考えや思いを交えながらひたすら語り続ける独白的な物語です。東大紛争により東大の入学試験が中止になったこと、愛犬の死などにも触れ、若者ながら「いかに生きるか」「強くて優しい男になりたい」という思いが饒舌に語られています。

途中で主人公は「優柔不断ではっきりしないヤツだ」なんて友人たちに突っ込まれるのですが、己の真の思想が固まるまではそれで良いんだと自分自身を肯定するんですよ。借り物の思想を安易に取り入れることも、かっこつけることもしなくていい。当時大学受験生だった私も将来の道が見つけられずにいたので、主人公の潔さに救われましたし、自分の感覚を信じて生きていこうと勇気をもらえました。

当時庄司薫の小説は大ヒットしましたが、1970年代後半から小説家活動をやめているので、若い人にとっては知る機会が少ないかもしれません。今改めて読んでも『赤頭巾ちゃん気をつけて』は非常に面白いですよ、ぜひ読んでみてください。

Q2 大人も共感しそうですね! あぁ、今もちょっとしたことにつまづいてばかり。大井さんが勇気づけられた本はありますか?

A2 夏目漱石の『私の個人主義』ですね。これは小説ではなく、49歳で亡くなる2年ほど前に開かれた講演会の記録で、漱石が若者に向けて自身の体験談や物事の考え方を語ったものです。この本の良いところは、自分の中で何かやるべきことが見つかったなら、途中で投げ出さずに最後まで続けなさいというあたたかい励ましがあるところです。自分のテーマとなるものを坑道を掘るような感覚で掘り続ければ、どこかでシャベルががちりと何かに当たり、必ず発見があるはずだと語られています。

漱石自身、人生の前半で挫折を味わっているけれど、どんなときも一徹したテーマを持ち続け、最後の10年間で次々と名作を生み出し輝いた人。苦労しても安易な道を選ばなかったことが、後に開花する鍵となったのでしょう。私たちにも、何事も実を結ぶまでは大変だけど、努力し続けることが大事なんだと再確認させてくれる本です。

Q3 自分に真摯に向き合ってみます。実は、仕事で少し悩んでいて・・・。働き方について影響された本はありますか?

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A3 レイモンド・マンゴーの『就職しないで生きるには』でしょうか。1979年にアメリカで刊行された本で、簡単に言うと“独立自営の薦め”のような内容。1960年代のアメリカでは、若者が保守的な社会体制に異議申し立てする「カウンターカルチャー(対抗文化)」運動が起こりました。1970年代に入ると、カウンターカルチャーの担い手だった若者たちも理想論だけでは食べていけないと自覚し、どうしたら良いのかを考えるわけです。そんな若者だった著者のマンゴーさんは小さな本屋を開き、また、これまでの体験談と同世代の若者の実情を記したルポルタージュ『就職しないで生きるには』を出版したのです。

ここでは手作りの石鹸を売る人、コミューン形態で缶詰工場で働く人など、今のエコ系の元祖と呼べるような小規模ビジネスを行う人々が登場します。彼らは大きな組織や体制に飲み込まれず、自分たちで仕事を作り出し、身の丈に合った生き方を送っていました。

「嘘にまみれて生きるのはイヤだ。だが生きていくためにはお金がいる。で、自分の生きるリズムにあわせて労働し、人びとが本当に必要とするものを売って暮らすことにした。(中略)頭とからだは自力で生きぬくために使え。失敗してもへこたれるな。」

ブックカバーのそでに書かれたこの言葉は、今の時代も通じることではないでしょうか。ちなみに私はこの本を大学1年生の頃に買っていたんですが、本屋を始める前にもう一度読んでみたら、「あ、これは俺のための本だ」と思いましたよ(笑)。私にとって独立の後押しをしてくれた本です。

Q4 考え方の幅を広げてくれそうな気がします。そういえば、大井さんはご自分の本を上梓されるそうですね。どんな内容ですか?

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A4 実はそうなんです。昨年じっくり制作していて、ようやく1月25日に発売されます。タイトルは『ローカルブックストアである 福岡 ブックスキューブリック』といいまして、本屋を始めた2001年から今までのことを振り返りながら、本屋づくり・街づくり、私のこれまでの体験、思うことなどについて語っています。A1~3で紹介した本についても詳しく触れていますので、よかったら福岡市内の主要な書店さんで手に取ってみてください。

大井さん、出版おめでとうございます! 本屋さんで見かけたら、速攻チェックしますね!! A2で教えてくださった夏目漱石の『私の個人主義』はタイトルは知っていたけれど読んだことなかったし、『赤頭巾ちゃん気をつけて』『就職しないで生きるには』は初めて聞きました。境遇は違っても、私にとってもヒントとなることが書かれていそうな気がします! 考え方の幅を広げて、私も一歩前進したいです。ありがとうございました!

ブックスキューブリック代表 大井 実

ブックスキューブリックけやき通り店・箱崎店のオーナー。カルチャー誌や小説、詩集や画集などを集めた“本のセレクトショップ“の草分け的存在。毎秋開催の「BOOKUOKA」など、ブックイベントの仕掛け人としても有名。2017年1月25日、晶文社から初の著作を出版。

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記事提供:ウェブマガジン「mymo」

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※この記事は、ふくおかフィナンシャルグループのiBankマーケティング(株)が運営するWEBメディア mymo(マイモ)から提供されたものです。

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提供元:本のエキスパート・大井実さんが選ぶ、心を動かされた本とは?│mymo

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