2017.09.11

子どもの大事な「敏感期」に親ができること│「モンテッソーリ教育」の本質はここにある


グーで握っていたものを、3本指で持つためには、練習が必要です(写真:Rina / PIXTA)

グーで握っていたものを、3本指で持つためには、練習が必要です(写真:Rina / PIXTA)

ファミリーレストランでの出来事です。1歳くらいの女の子が、床に落ちている小さな米粒をつまんで、母親の顔の前に差し出しました。母親は「汚いから捨てなさい!」と怒って、その子の手をティッシュでゴシゴシと拭いていました。

このようなときに、女の子にかけるべき声かけは、どのようなものだと思いますか? それは、

「小さいものを、よくつまめたね」

です。

子どもにどのように声をかけるべきか

大人になってしまうと気がつかないのですが、私たちは細かい作業を「親指、人差し指、中指」の3本指で行っています。鉛筆、おはし、針、包丁。ペットボトルのキャップをひねるのも、この3本を使います。最初は5本指を使ってグーで持っていたスプーンを、3本指で持つためには、練習が必要です。

この頃の子どもが小さいゴミを拾ったり、ティッシュを次から次へと出したり、引き出しから洋服を全部出してしまったりするのは、3本指の訓練をしているからです。

私たち大人は、そうとは知らず子どもの成長を妨げる働きかけをしています。

モンテッソーリ教育は、この部分に光を当て、私たち大人が子どもにどのように声をかけるべきかを教えてくれます。

モンテッソーリ教育は、マリア・モンテッソーリ(1870~1952)という、女性医学者・科学者によって、イタリアで始められました。日本では藤井聡太四段の活躍によって話題となりましたが、ビジネスパーソンの間では知っている人も多い教育法です。

私は東京・吉祥寺の就学前児童を対象としたモンテッソーリ教育施設「吉祥寺こどもの家」において、日々児童たちにモンテッソーリ教育を行うだけでなく、同時に教員の養成も担当しています。また日本全国で、モンテッソーリ教育を皆に理解し、実践してもらうために、保育・育児に関する研修や講演会を開催し、モンテッソーリ教育の普及に努めています。

子どもをしっかりと観察すれば、その子が今、どのような能力を伸ばしたいのかが、わかります。大人は「科学者のように」子どもをしっかり観察し、その時期に適切な働きかけをすることが大切です。そうすることで、子どもは自らの能力をどんどん伸ばすことができるからです。

「敏感期」に合った働きかけを

今回私は、いくつかの典型的なかかわり方をご紹介していきます。私が日々、園で実践していることばかりです。これは「敏感期」と呼ばれる、子どもの「こだわり」に応えるための声かけとなっています。冒頭の例のように、このこだわりに対してしかったり、とがめたりする親御さんが多いのですが(親御さんにはわがままと映るためです)、このこだわりを認めるか、認めないかで子どもの成長は大きく変わってきます。

敏感期とは、わかりやすい言い方をすれば「何かに強いこだわりを見せる」時期のことです。子どものよくある行動から、そのときにどのような働きかけをすべきかをみていきましょう。

「同じ洋服を毎日着ようとする」→「習慣」にこだわる敏感期

お母さんが困ることの一つに、子どもが選ぶコーディネートがヘンで恥ずかしいということがあります。全身チェック、全身レインボー、全身キャラクターなどなど。子どもは同じことを同じようにするという「習慣」の力を身に付けようとしているだけでなく、この洋服選びにおいて選択する力も磨いています。自分のこだわりにそって、ちゃんと洋服選びができているのですね。そんなわが子にかける言葉は、

「全身レインボーにできたね」

です。間違っても「ヘンな洋服着ないでよ!」と言ってはいけません。園にはみんな、変わったコーティネートで来ていますから、心配しなくても大丈夫ですよ。

朝、急げない→「順序」にこだわる敏感期

子どもは自ら決めた順番を、頑なに守ろうとする時期があります。これは将来、段取りをつける力となるため、ぜひ邪魔をしないで伸ばしてあげたいのですが、忙しい朝に放ってはおけません。そのようなときには、子どもの中にある順序を引き出す問いかけをします。

「次は何をするのかな?」

「どこをお手伝いしようか?」

このように聞くことで、子ども自身が「次は靴下をはくんだった」「帽子をかぶるんだった」と思い出すことができ、準備が進むはずです。少なくとも、無理矢理靴下をはかせた揚げ句、泣かれて脱いでしまう……といったことは、避けられるでしょう。

「席を譲れない」→「場所」にこだわる敏感期

「同じものが同じところにあると安心する」という時期があります。ですから、テーブルの席も「ここはママの席」「こっちはパパの席」などと、人とセットで覚えています。そのため、お客さんがくると困ったことに。「ここはママの席なの!!」と真っ赤になって怒ったりします。このようなときには、あらかじめ断っておくことが大切です。

「今日はお客さんに、ママの席をどうぞするからね」

このように伝えておくだけで、子どもは納得するものです。

子どもに「わがまま」というレッテルを貼らない

最後に、お母さんからよく相談される、「独り占め」に関しての声かけについてお伝えします。子どもは独り占めという行為を通して「所有」という概念を学んでいます。ですから、子どもが何かを独り占めしていたら、まずはその子の気持ちを認めてあげましょう。

「まだ、使いたいんだね」

そのうえで、どうしてもお友達に貸さなければならないときは、子どもに決めさせるようにします。

「○○ちゃんも遊びたいみたいだから、どれなら貸せるかな?」

「3つあるから、1つ貸してあげようか?」

ブランコの交代ができない、というのも典型的なお悩みです。

「10数えたら交代しようか?」

「10回押したら交代できるかな」

などもいいですね。

大切なのは、子どもに「わがまま」というレッテルを貼らないこと。これだけは注意してください。

敏感期は本能ともいわれます。子どもはそういうふうにプログラムされているのです。何かに特にこだわるという成長に不可欠な行動を、大人は勝手に「イヤイヤ期」と呼んでいます。子どもは必死に、将来の才能、人間関係、社会性などにかかわる基礎をつくっているのですから、それをしかったり、やめさせたり、とめたりしないようにしたいものです。

(構成:黒坂真由子)

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提供元:子どもの大事な「敏感期」に親ができること│東洋経済オンライン

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