2017.08.25
有名人がこぞって子育てする「ハワイ」の魅力│美しい自然に癒やされるだけではない
有名人が子連れでハワイに移住するメリットとは?(写真:kailua_otoko/PIXTA)
モデルの梨花さんやつんくさんなど、ハワイに子どもと移住したと伝えられる有名人が増えています。実際、私もよく日系スーパーや日本食レストランなどでハワイに住んでいる有名人の方々をお見かけしますし、地元の学校にも有名人のお子さんたちが通っています。どなたも、ローカルに混じって、普通のお父さん、お母さんをしていて、子育てや家族との時間をとても楽しんでいるように見えます。
「芸能人はハワイが好き」とは昔から言われていることですが、なぜ今、子どもを連れてハワイに移り住む人が増えているのでしょうか。ハワイ教育移住コンサルタントとして多くの方にアドバイスをしている私が考えるハワイが選ばれる理由は大きく4つあります。
1. ハワイは日本に一番近いアメリカ
ハワイに旅行で行ったことがあるという読者も少なくないと思いますが、ハワイのメリットの1つは日本からの距離にあります。飛行時間は6~8時間とアメリカ本土に比べるとはるかに近く、最短で1~2泊での帰国も可能なため、日本へ仕事の時だけ帰る、ということが容易にできます。近年は、母と子どもがハワイで暮らし、日本で仕事をする父親が月1回程度訪ねてくるという家族も増えています。
また、アメリカの学校は1年間に休みが3カ月以上あるので、子どもの休みに合わせて、日本で仕事を入れるということもできます。最近はネットの普及で打ち合わせ程度はネットでできますし、仕事相手と直接会わなければいけない機会も減っているので、たとえばライブやドラマの仕事、インタビューなどの時だけ日本に帰れば用が済むというわけです。
日本とハワイを行き来するデュアルライフ
では、有名人はどのようなビザでハワイに滞在しているのでしょうか。
人口140万人のハワイ州には現在、約20万人の日本人が住んでいます。米国籍の人と結婚し、米国永住権(グリーンカード)を持っている人もいますし、学生ビザや就職・海外赴任ビザ、投資家ビザなどで来ている人もいます。観光ビザでも連続で3カ月間滞在できるので、最近では「デュアルライフ(Dual Life)」といって、移住ビザに必要なビザを取得せずに日本とハワイを行き来している人も増えてきています。
一方、子どもと一緒に移住する場合は、最初に子どもをサマースクールに入れたり、親子留学をしたりして長期滞在。そこで問題がなければ、さらなる長期滞在を見据えて、投資家ビザなどに切り替える場合が多いようです。実際、ハワイで人気の店や会社に出資していたり、共同でビジネスを展開していたりする有名人は少なくありません。
2. のんびりとしてダイバーシティ(多様性)に富んだ環境
ハワイを訪れたことがある人なら、青い空の下でTシャツ、短パン、ビーチサンダルで、笑顔で走り回る子どもたちを見て、「ああ、ここで子育てができたら」と、1度くらいは思ったことがあるかもしれません。
自然に恵まれた島であるハワイは、どちらかというと都会的で便利な暮らしを好む人よりも、素朴な人間らしい暮らしを好む人が世界中から集まってきます。特に都会での分刻みの生活に疲れたような人にとっては、自分の生活をリセットするのに適した場所だというのは、私自身が子連れで移住した経験からも言えることです。
子連れで移住する場合は、現地の学校についていけるかという心配がありますが、ハワイは米国の他州に比べて教育水準が決して高いわけではありません。ですので、英語が母国語ではない日本人にとっては、ハードルが高すぎないという利点があります(ちなみに、USニューズ&ワールドレポートが発表した公立校ランキングでは、全米36位となっています)。
人の目を気にせずに子育てができる
また、ハワイは米国の中でも、多民族が混じり合って仲良く暮らしている多様性に富んだ州でもあります。ご存知かもしれませんが、ハワイの人口の40%はアジア人が占めており、その中で最も多いのが日系人です。私たち日本人が、居心地が良いと感じるのも、差別を感じたり、肩身の狭い思いをしたりしにくいことも、こうした環境が関係しているのではないかと思います。
加えて、ハワイには「Ohana(オハナ)」という、米国のほかの地域にはない独特の精神があります。オハナは家族という意味ですが、これには相手を尊敬し、理解しようとする精神や、どんな人でも受け入れるという信頼の意味が込められているのです。多様性に富んだハワイでは、他人の評価を気にするのではなく、自分自身の評価基準を持っています。ゆえに、有名人だからといって、色眼鏡で見られることなく、人の目を気にせずに子育てをできるわけです。
3. 家族との時間を大切にする
ハワイの家庭はほとんどが共働きで、学校環境も親が共働きであることを前提に作られています。たとえば、学校が始まるのは、親の就業開始時間(8時)に合わせて7時半となっていますし、夕方5時半まで預かってくれる延長保育も充実しており、子どもが預けられないので働けない、ということはハワイではありえません。
日本の共働きと違うのは、父親の育児「参加率」でしょう。米国には残業をする習慣があまりないため、父親が子どもを学校に迎えに行くことは普通ですし、授業参観や親子面談でも父親の参加率は90%以上じゃないかと思うほど、子育てに積極的です。子どもの授業参観があれば、会社を堂々と休むことができますし、2週間夏休みを取ることも当たり前。家族との時間を大事にするハワイでは、そんなことでとがめられることなどないのです。
さて、父親が積極的にお迎えに行かざるを得ない理由の一つは、ハワイ州では子どもが12歳になるまで一人にしていはいけないという法律があるためです(この法律は、米国各州にありますが、年齢は州によって異なります)。
つまり、親は子どもが12歳になるまで学校や習い事、友達と遊ぶときまですべて送り迎えをしないといけないのです。子どもが多ければ行事も増えるので、当然、夫婦で協力しあって送り迎えをしなければなりません。
自身のビジネスにもつながる
私も子どもが12歳になるまであらゆる所へ送り迎えをしていて正直「タクシー運転手のようで面倒くさいな」と思うこともありましたが、今思うと、車の中での会話が親子の貴重な時間で、この時間こそが、親子の絆を深めるだけでなく、子どもと対話をする大事な時間だったのです。
「子どもと過ごす時間が短い」という問題は、日本では、有名人に限ったことではないでしょうが、ビジネスマン、有名人に限らず、ハワイに移住してきた男性の多くは、自然と家族と過ごす時間が増えるようです。普段は忙しい有名人にとって、家族とゆっくり過ごす時間ができるというのは、仕事への活力にもつながるのではないでしょうか。
4.「ハワイに住んでいること」がライフスタイル・ブランドになる
そもそも、家族でハワイに移住するとなると、それなりのおカネが必要になりますが(今の日本での生活水準を維持しようと思ったら、1.5倍~2倍の生活費が必要になります)、それでも「ハワイに住みたい」という人が後を絶たない理由の一つに、日本では会えないような人と世界中に人脈が築けるということがあります。「ハワイが好き」という共通点だけで、仲良くなれるというのは、先述のとおり、多民族が仲良く暮らしているという環境があるからこそ、です。
こうした人脈を利用してハワイでビジネスをしている人がいれば、ハワイの製品やハワイで流行していることを国外で展開している人も少なくありません。たとえば、日本で大ブームを巻き起こしたパンケーキは、ハワイの人気パンケーキ屋を日本人が日本で展開しているものですし、毎年のように発売されるガイドブックの「旬ネタ」を提供しているのもハワイに住む日本の有名人です。
また、有名人ともなれば、ハワイに住んでいること自体が自身のブランド価値につながります。多くの日本人はハワイに対していいイメージを持っているので、たとえば、ハワイでの生活をインスタグラムなどSNSにアップすれば、それがイメージアップやメディアでの露出にもつながります。自身でライフスタイル・ブランドなどを展開している場合、ハワイでの生活が商品開発などにつながることもあるでしょう。
ハワイからステップアップする例も
さて、こうしてハワイに家族で移住してきた人たちが、その後どうするのか、疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
前述のとおり、ハワイは語学や生活習慣、民族性の面において、アメリカ進出の最初のステップとして、親にとっても、子どもにとっても解け込みやすい場所です。ただ、たとえばより教育水準の高い学校に進学を望む場合は、アメリカのほかの州や、他国に移住する人もいます。
ハワイが気に入ってそのまま生涯ハワイに住む人も大勢いますが、近年は物価が急速に上昇していることもあって、日本へ戻る人やより物価の安い国へ移っていく人も増えていると感じます。
物価だけで考えると、ハワイ移住は「高嶺の花」になりつつあります。しかし、時間的、そして精神的に余裕のある生活や、日本では得られないような体験や人脈を考えると、おカネには代えられない価値があると思います。また、有名人にとっては、家族と仕事のバランスが取れると同時に、自身のイメージアップやビジネスにもつながることを考えれば、今後移住する人が増えても不思議ではありません。
イゲット千恵子 : ハワイ教育移住コンサルタント
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提供元:有名人がこぞって子育てする「ハワイ」の魅力│東洋経済オンライン